弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • その他
    法人
    2026年03月12日更新
    意見照会書が届いたら? 民事・刑事で、誹謗中傷で訴えられる基準

    意見照会書が届いたら? 民事・刑事で、誹謗中傷で訴えられる基準

    インターネット上での発言は、手軽である一方で大きな影響力を持っています。軽い気持ちで書き込んだつもりでも、相手の社会的評価を下げてしまったり、プライバシーを侵害してしまったりすることがあります。その場合、「誹謗中傷」として法的に問題とされ、被害者から訴えられる可能性があるのです。

    インターネット上で誹謗中傷のすべてが違法となるわけではなく、民事および刑事上の責任が生じるのは、一定の基準を満たした場合に限られます。被害者から誹謗中傷で訴えられたときに適切な対応がとれるようにするためにも、誹謗中傷で訴えられる基準を理解しておくことが大切です。

    今回は、ご自身の投稿が誹謗中傷とされてしまった方に向けて、意見照会書が届いたときの具体的な対応方法や民事・刑事で誹謗中傷が訴えられる基準などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、意見照会書が届いたらどうすればいい?

誹謗中傷と言われた投稿に心当たりがあり、意見照会書が届いた場合はどうすればいいのでしょうか。また、そもそも意見照会書とはどのようなものなのでしょうか。以下では、意見照会書の意味や発信者情報開示請求・命令の全体の流れとその後の訴訟の流れを説明します。

  1. (1)意見照会書とは何か?

    意見照会書とは、被害者がプロバイダに対して投稿者の氏名や住所などの情報を開示するよう求めたとき、プロバイダから投稿者本人に送付される確認書類です。記載内容は「この投稿について発信者情報の開示請求がありました。あなたの情報を開示してよいかどうか、意見を回答してください」というものになります。

    届いた時点では、まだあなたの情報が被害者に開示されてはいませんが、これは法的手続きの入口であり、無視や軽視は大きなリスクにつながります。

  2. (2)発信者情報開示請求・命令の全体の流れとその後の訴訟の流れ

    インターネット上の誹謗中傷は、基本的には匿名による投稿ですので、投稿自体からは、投稿者を特定することはできません。そのため、誹謗中傷の被害者は、「発信者情報開示請求」または「発信者情報開示命令」という手続きによって、投稿者の特定をしていきます。
    具体的な流れは、以下のとおりです。

    ① SNS事業者やサイト管理者へ、発信者情報開示の仮処分の申し立て
    被害者は、まずSNS事業者やサイト管理者に対して、投稿時のIPアドレスやタイムスタンプの開示を求める仮処分を申し立てます。これにより「どの回線から書き込まれたか」という情報が得られます。

    ② プロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟の提起
    次に、判明したIPアドレスをもとに、投稿者が契約しているプロバイダを相手取り、契約者情報(氏名・住所など)の開示を求める訴訟を提起します。
    これがいわゆる「2段階方式」であり、従来は投稿者特定までに長期間を要しました。

    ③ 法改正により新設】発信者情報開示命令の利用も可能
    プロバイダ責任制限法改正により、「発信者情報開示命令」という新制度が導入されました。
    これは、従来の2段階手続きを一本化し、SNS事業者とプロバイダをまとめて裁判所に申し立てられる制度です。裁判所が権利侵害の可能性を認めれば、一度の手続きで必要な情報を取得できるため、より迅速に投稿者特定を進められるようになりました。

    ④ 投稿者の特定後は損害賠償請求
    投稿者が特定されると、被害者は、加害者に対し、誹謗中傷による損害賠償請求を行うことができます。示談交渉から始まることが通例ですが、いきなり提訴されることもあります

    ⑤ 交渉が決裂したときは損害賠償請求訴訟の提起
    示談交渉で解決できない場合、被害者は裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。場合によっては刑事告訴と並行して進められることもあります。


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  3. (3)意見照会書が届いたときに早めに弁護士に相談すべき理由

    意見照会書を受け取ったら、すぐに弁護士に相談するようにしてください。その理由は、以下のとおりです。

    ① 期限が短い
    回答期限は2週間前後と非常に短く、放置すれば「開示に同意した」とみなされるリスクがあります

    ② 拒否しても開示されることがある
    「開示を拒否したから安心」とは限りません。裁判所が発信者情報開示命令を出せば、最終的にあなたの情報は、被害者に開示されてしまいます。むしろ拒否により「悪質」と評価されたり弁護士費用が余計にかかったりして、損害賠償額が増額される可能性があるのです。

    ③ 示談や対応の方向性が変わる
    弁護士を通じて冷静に対応すれば、被害者との示談が成立する可能性もあります。反対に、感情的に対応したり無視したりすると不利な立場に追い込まれることがあります。
    弁護士に相談すれば、投稿が本当に違法かどうか、開示請求にどう対応すべきか、訴訟の可能性はあるかなどを専門的に判断してもらえますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

2、誹謗中傷で被害者から訴えられる基準(民事)

そもそも誹謗中傷で訴えられる基準は、民事と刑事に分かれます。以下ではまず、民事で誹謗中傷として責任を問われる基準を説明します。

  1. (1)プライバシー侵害

    プライバシー権とは、私生活をみだりに公開されない権利などのことを指します。
    たとえば、以下のような投稿は、プライバシー侵害と認められる可能性があります。

    • 被害者の自宅住所や電話番号を晒(さら)す
    • 職場や家族構成、病歴などの私生活情報を暴露する
    • 本人が公にしていない交際関係や過去の出来事を拡散する


    こうした投稿は、被害者の生活の平穏を脅かすものです。そのため、民法上の不法行為として損害賠償の対象になりやすいのです。

  2. (2)名誉権の侵害

    名誉権の侵害とは、特定の人や団体に対する社会的評価を低下させることをいいます。名誉権の侵害は、民法上の不法行為に該当しますので、損害賠償請求の対象になります。

    インターネット上での誹謗中傷の多くがこの名誉権侵害です。
    典型的な例は、以下のようなものになります。

    • 「あの人は犯罪者だ」など事実無根の投稿
    • 「〇〇は不倫している」などの誹謗中傷
    • デマを流布して社会的信用を失わせる行為


    インターネット上で事実を摘示したケースであれば、公共性・公益性が認められない場合や当該事実が真実であると信じるについて相当な理由がない場合には、名誉権侵害と判断されることがあります。

  3. (3)その他の権利侵害(著作権侵害・肖像権侵害)

    誹謗中傷に直接関係しなくても、他人の権利を侵害する投稿は、損害賠償請求の対象になります。

    • 著作権侵害:他人の著作物を無断で転載する行為
    • 肖像権侵害:本人の同意なく顔写真や動画を晒(さら)す行為


    これらは、直接的には誹謗中傷とは関係ありませんが、他人の顔写真をさらしながら誹謗中傷をするという事例も少なくないことから、複合的な権利侵害が起きるケースもあります。

3、誹謗中傷で被害者から訴えられる基準(刑事)

誹謗中傷の問題は、民事上の損害賠償請求にとどまらず、刑事事件に発展することもあります。刑事事件になれば、逮捕・起訴される可能性があり、拘禁刑や罰金刑などの刑罰を受けるリスクがあります。以下では、誹謗中傷に関連して成立しやすい代表的な犯罪とその基準を確認していきましょう。

  1. (1)名誉毀損(きそん)罪

    名誉毀損罪とは、公然と人の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪です(刑法230条)。ネット上の誹謗中傷で名誉毀損が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

    • 公然性:不特定または多数が知り得る状態(SNS投稿や掲示板は典型例)
    • 事実の摘示:具体的事実を示す(「不倫している」「横領した」など)
    • 社会的評価の低下:対象者の社会的評価を下げる内容であること


    たとえば、「〇〇会社の店長は横領している」といった投稿は、事実であるか否かにかかわらず名誉毀損罪が成立します。もっとも、公益性・真実性などがあれば違法性阻却される場合もある点に注意が必要です。
    なお、名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となっています。

  2. (2)侮辱罪

    侮辱罪とは、事実を摘示せずに、公然と人を侮辱した場合に成立する犯罪です(刑法231条)。ネット上の誹謗中傷で侮辱罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

    • 公然性:不特定または多数が知り得る状態(SNS投稿や掲示板は典型例)
    • 事実の摘示なし:具体的事実を示さない(「バカ」「ブス」「無能」など)
    • 侮辱行為:人に対する侮辱的価値判断を表示すること


    名誉毀損罪の成立要件と似ていますが、侮辱罪は、事実の摘示がない点で名誉毀損罪とは区別されます。たとえば、「無能」「バカ」「クズ」など抽象的表現でも侮辱罪が成立します。

    なお、侮辱罪の法定刑は、近年の法改正で厳罰化され、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料となっています。

  3. (3)脅迫罪

    脅迫罪とは、他人の生命・身体・事由・名誉・財産に対して、害を加える旨の告知をして脅迫した場合に成立する犯罪です(刑法222条)。ネット上の誹謗中傷で脅迫罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

    • 対象:相手本人またはその親族
    • 害悪の告知:生命・身体・自由・名誉・財産に対する害を告げること
    • 畏怖されたこと:害悪の告知が一般人を畏怖させるに足りる程度のものであること


    「殺す」「殴る」といった直接的脅しだけでなく、「お前の住所を晒(さら)す」「家族に危害を加える」といった表現も脅迫罪に該当します。ネット上での脅迫行為は、投稿が証拠として残りやすいため、軽率な書き込みでも立件されやすい犯罪といえます。
    なお、脅迫罪の法定刑は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金となっています。

  4. (4)偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪

    偽計業務妨害罪とは、偽計(人を欺く、勘違いを利用するなど)を用いて他人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です(刑法233条後段)。また、威力業務妨害罪とは、威力(他人の意思を制圧するに足りる勢力)を用いて他人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です(刑法234条)。

    たとえば、「この飲食店で食中毒が出た」など虚偽の口コミ拡散は、偽計業務妨害に該当します。また、嫌がらせ目的で大量注文を行う、SNSで組織的に低評価を投稿して営業を妨害する行為は、威力業務妨害となります。いずれの法定刑も3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となっています。

4、誹謗中傷をしてしまいトラブルとなっている場合は、弁護士に早めに相談を

インターネット上で誹謗中傷をしてしまい、意見照会書が届いたときは、自分だけで対応するのは危険です。このような状況に直面した場合は、できる限り早期に弁護士に相談することをおすすめします

  1. (1)意見照会書が届いた時点でとるべき行動をアドバイスできる

    意見照会書が届いた場合、放置すれば意見がないものとみなされ、個人情報が相手方に開示されるリスクが高まります。逆に安易に「拒否」すると、相手に悪印象を与え、話し合いでの解決が難しくなるリスクがあります。

    弁護士であれば、投稿の内容や状況を踏まえ、回答の仕方や交渉方針について具体的なアドバイスができます。早期に相談することで、相手方との無用なトラブル拡大を防ぎ、適切な対応を取ることが可能となるでしょう。

  2. (2)代理人として示談交渉や訴訟対応が可能

    被害者から正式に損害賠償請求や刑事告訴がなされた場合、加害者本人が直接対応すると感情的な対立が激化しやすく、和解の機会を逃してしまうことがあります。

    弁護士が代理人として交渉に入れば、相手方と冷静かつ法的根拠に基づいたやり取りが可能です。また、訴訟に至った場合でも、訴状への対応や証拠提出、示談の成立に向けた戦略を一任できます。専門的知見を生かすことで、不当に重い罪を避けることができる可能性も高まります。

5、まとめ

誹謗中傷で訴えられるといっても、民事と刑事では基準や流れが異なり、投稿が直ちに違法かどうかは専門的判断が必要です。安易に対応すれば損害賠償の増額や不当に重い刑事責任を問われる可能性もあります。当事務所では、誹謗中傷したとして訴えられた方からのご相談を付けつけております。
少しでも不安を感じたら、早めに弁護士へ相談することが解決の第一歩です。ぜひご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2026年03月12日)の法律をもとに執筆しています

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