削除依頼・投稿者の特定
5ちゃんねるや2ちゃんねるなどへの
悪質な書き込み削除のご相談は弁護士へ
ネット掲示板や口コミサイト、SNSなどで誹謗中傷の被害を受けたとき「法的手段」による削除依頼が可能です。
法的手段とは裁判所での仮処分や訴訟を利用して投稿内容を削除させたり投稿者を特定したりする方法です。「裁判所」と聞くと構えてしまうかも知れませんが、弁護士に手続きを任せた場合、ご本人にほとんど労力はかかりません。
以下で法的手段による削除依頼の流れやメリット、デメリットなどわかりやすく解説していきます。
たとえば掲示板に、自己に不利益な書き込み(誹謗中傷等)をされたとします。そんなとき、まずはご自身で掲示板のフォームから削除依頼をすると思います。あるいは、掲示板の管理人に当該書き込みのIPアドレスの開示を請求するでしょう。しかし、なかなか掲示板の管理人はその要望には応えてはくれません。そんなときのお話です。
法的手段による削除対応とは、裁判所の力を使って法的に権利侵害の投稿を削除させたり、不当な投稿をした相手方を特定したりする方法です。 誹謗中傷の被害を受けたとき、あなた自身がサイトやプロバイダに削除や発信者情報開示請求をしても、任意に応じてくれる可能性は低いのが実情です。そのままでは権利侵害を受け続けることになり、情報が拡散されて被害が広がるおそれも高まります。そこで裁判手続を利用して不当な投稿を削除させ、あるいは投稿者を特定して損害賠償請求などの対応を進める法的対応が有効となります。
投稿内容の削除を求める法的手続は「削除を求める仮処分」を用いることが通常ですが、本案訴訟により削除請求をすることも可能です。 一方、投稿者を特定するためには、まずはサイト管理者や運営者に対して「発信者情報開示を求める仮処分」を申し立て、その後判明した経由プロバイダに対して「発信者情報開示請求訴訟」を提起する2段階の対応が必要です。
削除依頼フォームを利用したり、一般社団法人テレコムサービス協会のガイドラインにもとづいて削除依頼したりして対応してもらえなかった場合でも、法的手段をとれば裁判所からの命令によって削除を実現できます。 また、自主的な対応では投稿者の特定は不可能ですが、法的手段をとれば投稿者を特定することのできる発信者情報開示請求も可能です。
ただし仮処分も訴訟も非常に専門的な対応を要するので、弁護士に依頼する必要があります。
まずは名誉毀損(きそん)などの権利侵害が含まれる書き込みなどの投稿を削除させます。
法的手段によって削除依頼する方法は「仮処分」です。仮処分とは、権利侵害が起こっていて緊急性がある場合に発令される裁判所からの命令です。
投稿内容の削除を求める仮処分が認められるには、次の2つの要件を満たす必要があります。
ネット誹謗中傷によって何らかの権利侵害が起こっていることが必要です。たとえば名誉権、プライバシー権、著作権、肖像権などの法的権利を主張しなければなりません。
権利侵害が起こっていてすぐにでも保全しないといけない状況にある必要があります。たとえばネットで名誉毀損が行われており、すぐに消去させないと拡散される状況にあることなどを主張しなければなりません。インターネット上で権利侵害に当たる記事が現に公開され侵害が継続している場合には、原則として保全の必要性が認められます。
削除の仮処分申立が認められるには、最低限上記の2つの要件を「疎明(そめい)」する必要があります。疎明とは、証明のレベルには満たなくても簡単に説明し「権利侵害が起こっているらしい」と裁判所に思わせることです。きちんと説明できなければ仮処分が認められず削除命令を出してもらえません。
削除申請の仮処分には裁判所の費用と弁護士費用がかかります。裁判所の費用は1~2万円程度ですが担保金が30~50万円程度、必要です。弁護士費用は20~40万円程度かかるでしょう。
期間は1、2か月程度が標準ですが、相手が海外法人の場合などには半年程度かかるケースもあります。
投稿者を特定するための「発信者情報開示請求」を行います。
発信者情報開示請求とは、法的な手段でプロバイダなどに情報発信者の個人情報を開示させる手続きです。
まずはサイト管理者や運営者に対し、発信者情報開示の仮処分申立を申請します。
裁判所で権利侵害や開示を受けるべき正当理由があると判断されたら、相手に仮処分命令が発令されます。これにより、サイト管理者から「投稿に関するIPアドレス、タイムスタンプ等」が開示されます。
IPアドレスから投稿者が利用しているプロバイダを特定します。
その後の訴訟中に投稿者のアクセスログが消去されないよう、プロバイダに対してログ保存の仮処分を申請します。削除請求を並行して行う場合、削除請求が認められるとログも消えてしまう事があるため、ログ保存の仮処分を先に行う必要があります。
判明したプロバイダに対して「発信者情報開示請求訴訟」を行います。
訴訟でも、権利侵害の明白性や開示を受けるべき正当理由等の存在を立証する必要があります。訴訟では仮処分より厳密な証明を要します。
裁判所で権利を認めてもらえた場合、プロバイダに対して発信者情報開示命令が発令されます。
判決が出たら、通常はプロバイダから発信者についての以下の情報が提供されます。 発信者の氏名、住所、電話番号、登録メールアドレス等です。
裁判所の費用(印紙代と郵便切手)が数万円、担保金が数十万円、弁護士費用は総額で50~70万円が相場です。
期間は仮処分と訴訟を合わせて半年程度はかかります。
仮処分によってプロバイダが判明したとき、任意での情報開示を求められるケースもあります。その場合、発信者情報開示請求訴訟は不要です。
仮処分後、プロバイダに任意開示を申し入れ、相手に関する氏名や住所、登録メールアドレスの開示を受けます。ただし、開示される可能性はあまりないでしょう。
任意で開示を受けられると、訴訟の費用がかからない分、金額は低くなります。実費は仮処分のものだけとなりますし、弁護士費用も20~40万円程度で足りるでしょう。
訴訟にかかる期間が不要となるので、期間も1、2か月で解決できます。
令和3年4月28日に公布された改正プロバイダ責任制限法が、令和4年10月1日に施行されました。
前述の通り、これまで、他人の権利を侵害する投稿などを行った発信者の情報を開示するためには、最低でも以下3つの裁判手続き(訴訟を含む)を行う必要がありました。
これらの裁判手続きを経て、さらに「損害賠償請求訴訟」を行わなければならないケースが多々ありました。
しかし、ログは3~6か月程度で消去されてしまうために特定できないことや、サイト管理者から開示された情報だけでは情報が不足していて、プロバイダが発信者を特定し得ないため、何度もこの手続きを繰り返す必要があったケースもあったのです。何よりも、被害者が何回も裁判手続をとらなければならないという非常に大きな負担があることは言うまでもありません。
また、平成13年に制定されたプロバイダ責任制限法は、当時の「2ちゃんねる」などの電子掲示板サービスを念頭に置いた法律だったため、SNSなどのログイン型サービスへの十分な対応ができないという問題点がありました。
具体的には、これまでの発信者情報開示の対象は、権利を侵害する投稿を行った時点の通信記録であるとされていたため、ログイン時の通信記録については開示請求の対象外であるとして、開示することができず、その結果、発信者を特定できないというケースが生じていたのです。
こうした状況を踏まえ、改正法では、以下2点の改正が行われています。
「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」という非訟手続が新設されました。この手続きでは、1回の裁判所の手続きによって、サイト管理者とプロバイダの双方に対する請求をまとめて行うことができるようにするものです。
具体的には、次の3つの命令を発令することによって、これまで最大3つ行う必要があった裁判手続きを、1回の手続きで終えることができるようになりました。
①サイト管理者・プロバイダに対する発信者情報開示命令
(この審理を行っている間に、ログを保存するため、②-1・2を発令)
②-1サイト管理者に対して、プロバイダへのログ提供命令
②-2サイト管理者・プロバイダに対し、発信者情報の消去禁止(ログの保存)を命令
この新しい手続きが採用されることにより、被害者の負担軽減・泣き寝入り防止、発信者情報開示までの期間短縮が期待されます。
なお、改正後においても、これまでとられてきた発信者情報開示手続(法的手続・任意開示手続)を従来どおり利用することができます。権利を侵害する投稿を発見した場合、ご自身の意向・希望・状況を踏まえた手続を選択することが望ましいものです。
ネット上の誹謗中傷に関係する対応についての知見が豊富な弁護士に相談し、適切な解決を目指すことをおすすめします。
発信者の特定に必要な場合には、ログイン時の通信記録が開示請求の対象となる範囲に含まれるように、開示請求の対象となる範囲が拡大されました。
これによって、新たに、次の情報についての開示請求が可能となります。
投稿者を特定したら、通常は相手に損害賠償請求を行います。名誉権侵害の慰謝料請求や、売り上げ低下などの実損害を払わせることが可能です。また「二度と嫌がらせの投稿をしない」と約束させるのも有効です。
まずは内容証明郵便などで請求書を送り、任意の支払いを促しましょう。相手が任意に支払いをしない場合には損害賠償請求訴訟を提起して賠償金を求めます。
相手が悪質な場合、刑事告訴も検討します。ネット誹謗中傷により、名誉毀損罪や侮辱罪、業務妨害罪や脅迫罪、強要罪などが成立する可能性があります。
刑事告訴をすれば、相手が逮捕されて懲役や罰金などの刑事罰を科される可能性があるので、相手にプレッシャーをかけて賠償金の支払いや反省を促す効果もあります。
削除や投稿者特定の確実性が高まる
任意での削除依頼に応じないサイト管理者でも裁判所で仮処分命令が出たら従うものです。
また発信者情報開示の仮処分が認められると、任意開示に応じるプロバイダも多数あります。削除や仮処分に応じない場合には強制的に権利を実現するための強制執行も可能です。このように法的手続を利用すると、投稿内容の削除や発信者情報の開示をより確実に行わせることができます。
弁護士に任せれば労力がかからない
自分でサイト管理者などと交渉をして削除依頼するのは労力がかかりますが、法的手続きを弁護士に依頼してしまえば、ご本人には労力がかかりません。待っていれば削除や発信者情報の確定ができるので楽です。
発信者情報開示を受けられる
ご本人が直接サイト管理者などに投稿者の情報を求めても、開示を受けるのはほぼ不可能です。
法的手続をとれば、投稿者の情報を入手して損害賠償請求や刑事告訴などの対応が可能となります。削除しただけでは、投稿者にとって何の痛手もありません。再発を防ぐためにも、発信者情報を特定して何らかのペナルティーを与えておく必要があります。
費用と時間がかかる
仮処分をするときには30~50万円程度の担保金が必要ですし、弁護士に仮処分や訴訟を依頼すると弁護士費用も発生します。
また民事訴訟は時間がかかるので、相手の特定までに半年以上かかってしまうのも難点と言えるでしょう。
またプロバイダにログが保存されておらず、法的手続きが無駄になってしまうリスクもあります。
以上のようにデメリットはありますが、サイト管理者が任意で削除に対応しないなら法的手段を利用するしかありません。また発信者を特定し損害賠償請求などをしておかないと、また同じことが繰り返されてしまうおそれが高まります。
削除依頼や投稿者特定の法的手段を実行できるのは弁護士だけです。またすべての弁護士がこうしたITトラブルに積極的に対応しているわけでもないので、弁護士選びも慎重に行うべきです。
当事務所ではネット上の誹謗中傷、風評被害対策に積極的に取り組んでおり、多数の解決実績があります。名誉毀損やプライバシー権侵害、業務妨害などにお困りの企業や個人の方は、被害が広がる前にお早めにご相談ください。