弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • SNSサイト
    個人
    2022年12月07日更新
    SNSで勝手に写真を使われた! 肖像権の侵害を理由に慰謝料請求できる?

    SNSで勝手に写真を使われた! 肖像権の侵害を理由に慰謝料請求できる?

    SNSの利用者が多数を占める時代になり、便利で楽しいツールとしての認知度が高まりました。一方で、本人の許可を得ず写真や動画を掲載されてしまうなど、個人の権利が侵されるケースも増えているようです。

    そこで本コラムでは、「肖像権」という権利にスポットライトをあて、どのような権利なのか具体的に解説します。そのうえで、無断で写真や動画を使用されてしまった際、肖像権侵害にあたるのか、慰謝料は請求できるのかなど、対処法について説明します。
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1、肖像権とは?

肖像権とは、自分の肖像(容姿)を、他人からみだりに撮影、使用、公開されない権利のことです。

法律で明文化された権利ではありませんが、憲法上の幸福追求権や人格権のひとつであると解釈され、判例によっても、こうした権利が法律上保護されるべきものであることが認められています。

なお、肖像権は、「プライバシー権」と「パブリシティ権」のふたつから成り立つと考えられています。

  1. (1)プライバシー権

    プライバシー権とは、私的な事柄をみだりに公表されず、また、自己に関する情報を自らコントロールする権利をいいます。

  2. (2)パブリシティ権

    パブリシティ権とは、芸能人やスポーツ選手のようにその容姿(肖像)に商品の販売等を促進する力があり、そこに財産的価値が存在する場合に、これを利用する権利です。
    たとえば、自分の店に来た著名人を勝手に撮影し、ブログで「有名な〇〇も来店」などと宣伝すればパブリシティ権の侵害にあたる可能性があります。

    このように、一般の方の場合、基本的にパブリシティ権は認められないため、通常問題となるのは、プライバシー権についてです。

2、肖像権の侵害と危険性

肖像権の侵害と危険性

自分の写真や、みんなで遊んでいるときの様子を公開されても、別に構わないと感じる方もいるかもしれません。しかし、近年のネット社会化を考えれば、こうした行為を放置しておくことは、単に不快な思いをするといった程度にとどまらず、犯罪に巻き込まれることにつながるリスクさえあります。
写真や動画の背景やイベント開催地など、ほんのちょっとした情報から個人名や住所、活動地域を特定できてしまうケースがあるからです。

具体的には、以下のような犯罪に巻き込まれる可能性があると考えられます。

  • ストーカー被害
  • 児童愛好家に子どもがつけまわされる
  • 在宅状況を知られ空き巣被害に遭う


肖像権侵害はこうした犯罪の引き金になりやすいだけでなく、公開された写真をもとに、ネットで匿名の者から誹謗中傷を受け、精神的苦痛を与えられる可能性もあります。肖像権侵害は決して軽視できないものだといえるでしょう。

3、肖像権侵害の判断基準

肖像権侵害の判断基準

肖像権は法律で明文化されていないため、明確な判断基準がありません。しかし、過去の判例などから、主に次の4つが基準とされることが多くなっています。
それぞれの基準を、ケースを交えながら見ていきましょう。

  1. (1)個人が特定可能か

    写真や動画の被写体が誰であるかがはっきりとわかり、特定されうる状態で撮影されている場合、肖像権の侵害となる可能性があります。
    これに対し、多数の人物が写り込んでおり、人物の特定が困難である場合には肖像権侵害が問われない可能性が高くなります。

  2. (2)拡散性が高いか

    写真や動画を公開された場所の拡散性も判断基準となります。誰もが閲覧できるSNSでアップすれば、拡散性が非常に高くなりますので肖像権侵害が成立しやすくなります。
    反対に、撮影した写真や動画を自身のスマホに残し、ごく数人の友人に見せた程度であれば、拡散性が低いため肖像権侵害とまでは認められにくくなります。

  3. (3)撮影場所

    大勢が出入りするイベントや公道などで撮影された場合は、多くの人の目につく場所であって、私的な領域ではないため、肖像権の侵害が認められる可能性は比較的低くなります。
    一方、自宅内など、私的な領域にいる様子を撮影、公開された場合には、肖像権の侵害が認められる可能性が比較的高くなります。

  4. (4)撮影・公開許可の有無

    無断で撮影・公開をされていれば肖像権侵害が問題になりますが、当然ながら、事前に本人が許可していた場合は問題となりません。
    なお、撮影と公開は別々の許可が必要です。「撮影は許可したけど公開されるとは思っていなかった」といった場合、肖像権侵害にあたる可能性があります。

4、肖像権侵害の対処法

肖像権侵害の対処法

肖像権侵害があった場合、具体的にはどのように対処すればよいのでしょうか。

  1. (1)差し止め請求

    知人などが投稿者でしたら、画像や動画を削除してほしいとお願いすれば対処してもらえるかもしれません。しかし、一度SNSで広く拡散されてしまった場合は、無数にコピーがばらまかれてしまった状態であるため、投稿を消すだけでは解決しません。

    また、撮影者や投稿者がわからないケースも珍しいことではないでしょう。そのような場合、投稿されているサイトや掲示板の管理者に対して肖像権侵害の事実を伝え、削除要請を行います。

    削除要請の方法はサイトによって異なりますが、メールや削除要請フォームで依頼できるサイトも多いようです。しかし、ここでの注意点としては、削除はあくまでもサイト管理者の判断に委ねられることになるため、削除されないことがあることです。

    任意の削除要請に応じてもらえない場合は、法的手段を用いる必要が出てきます。そのような場合には、弁護士に相談し、法的根拠をもとに削除要請を行うことをおすすめします。

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  2. (2)慰謝料・損害賠償の請求

    肖像権を侵害された場合、民法で規定されている不法行為による損害賠償責任を理由に、慰謝料を請求することができます。

    ただし、違法性が低い肖像権侵害のみで慰謝料を請求する場合、その額の相場はさほど高くないという現実があります。しかし、盗撮をされた場合などであれば精神的苦痛の度合いが高まり、ある程度高額の慰謝料を請求できる可能性もあるでしょう。

    また、写真や動画が拡散された結果、悪質な誹謗中傷などの被害に遭った場合には、誹謗中傷をした人物を特定し、慰謝料を請求することを検討すべきでしょう。もっとも、誹謗中傷者の特定や慰謝料請求を個人で行うことは難しいので、こうした問題については、弁護士に依頼するのが得策です。

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  3. (3)警察に相談する

    肖像権侵害は、プライバシー権の問題であって、犯罪ではありません。したがって、残念ながら基本的に警察を頼ることはできません。
    ただし、脅迫や名誉毀損となりうるメッセージが伴う投稿や、盗撮やストーカー、わいせつ物頒布など、犯罪が関わっている場合には対応してもらえる可能性があります。犯罪が疑われる場合は警察に相談するようにしましょう。

5、まとめ

今回は、肖像権の概要やその侵害があった場合の問題点や、被害に遭った場合の対処法を紹介しました。

肖像権侵害は刑事犯罪ではないとはいっても、犯罪に巻き込まれたり、重大な精神的被害を受けたりすることもあるため、決して軽視することはできません。

肖像権が侵害されていると感じた場合は、速やかに写真や動画の削除を要請しましょう。それでも削除してもらえない場合は、法的手段を用いた削除要請や投稿者の特定、損害賠償請求も検討すべきです。その際には弁護士のサポートがあると、スムーズに手続きが進みますので、お悩みの方はすぐにでもご相談ください。

肖像権についてお困りの方は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にご相談ください。削除などが必要な際は、所内の削除専門チームが全力で対応します。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2022年12月07日)の法律をもとに執筆しています

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