弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • SNSサイト
    個人
    2023年02月09日更新
    インスタのなりすましアカウントを見つけたら|削除依頼と加害者特定

    インスタのなりすましアカウントを見つけたら|削除依頼と加害者特定

    インスタグラムのなりすましアカウントを見つけた場合、そのまま放置してしまうことはよくありません。放置することで、第三者へ被害が出てしまったり、なりすましをされている本人に言われもない悪評が付いてしまったりすることがあるからです。

    インスタグラムのなりすましアカウントは、どうすれば削除できるのでしょうか。また、誰がなりすましをしているのか、特定することはできるのでしょうか。そもそも、どういう目的でアカウントが作られているのかも気になるところでしょう。

    この記事では、なりすましアカウントが発生する理由や注意点、インスタグラムへのアカウント削除依頼の方法や加害者の特定方法などについて、弁護士が解説します。
初回相談60分無料

通話無料/平日9:30〜18:00

1、なりすましアカウントが発生する理由と注意点

インスタグラムなどのSNS上でなりすましアカウントが発生する理由や、なりすましアカウントを見つけたときの注意点について、以下で説明します。

  1. (1)なりすましアカウントを作成する加害者側の心理

    なりすましアカウントを作成する側の目的は多岐にわたりますが、その中でも代表的なものが5つあります。


    ① 詐欺
    個人情報や金融情報をだまし取ったり、リンクをクリックさせてログイン情報を入力させたり、ギフトコードを購入させたりしようとする目的でなりすましアカウントを作成する加害者(なりすましアカウントの作成者)は少なくありません。
    以前は、企業アカウントのなりすましが多発し、プレゼントキャンペーンを装う手口が流行していました。現在では、芸能人や人気YouTuber、インフルエンサーなどの個人にも対象が広がっています。

    ② 嫌がらせ
    恨みや嫉妬などの個人的な感情に基づき、嫌がらせをする目的でなりすましアカウントを作成する方もいます。
    このような目的の場合、本人の評価を落とすような投稿や、むやみに他人とトラブルを起こす攻撃的な投稿などが行われる可能性が高いといえるでしょう。

    ③ 注目を浴びたい
    なりすましアカウントを通して、自分が注目を浴びようとするケースもゼロではありません。
    もともとファンがいる著名人などになりすますことでフォロワーを獲得したり、話題となっている出来事のようなタイムリーな内容の投稿をするなどで世間の注目を集めようとしたり、承認欲求を満たしたい気持ちからなりすましが行われることもあります。

    ④ ネットストーカー
    被害者側(なりすましをされている方)に好意を抱いていて、付きまとったり、自分の気持ちを満足させたりするためにSNSでなりすましを行う方がいます。
    このケースでは、なりすましアカウントを使って利益を得ようとするのではなく「自分しか知らない被害者の姿を知っている」などと感じることで、自分の気持ちを満足させることが大きな目的であるといえるでしょう。

    ⑤ 強い憧れがある
    なりすまし被害者に対する憧れを強く抱いており、巧妙になりすまし、あたかも本人になり切っているかのように演じる場合があります。
    世の中を騒がせたり、なりすましアカウントの存在を知らせて目立とうとしたりするのではなく、なりすましアカウントと気付かれないように本人を演じ続けるのが特徴といえます。
  2. (2)なりすましアカウントを見つけたときに推奨されない行動

    インスタグラムでなりすましアカウントを見つけたときには、状況に応じて適切に対応することが必要ですが、以下で紹介するように、推奨できない行動もあります。


    ① 何もせずに放置する
    なりすましアカウントに対して「どう対応すれば良いか分からない」「対応が面倒くさい」などの理由で放置しないようにしましょう。そのままなりすましアカウントが存在し続けることで、詐欺の被害者が出たり、本来の自分のアカウント評価を落とされたりするなど、思いもしない形で被害が拡大するリスクがあります。

    ② DMなどで直接指摘する
    加害者に向けて、直接指摘や注意などをすると、相手によっては逆上したり、迷惑行為がエスカレートしたりするおそれがあります。
    また、加害者から迷惑をかけられたからといって、こちらから攻撃したり反撃したりしてはいけません。内容や程度によっては、自分が損害賠償を請求されたり、刑事罰に問われたりする可能性も出てきます。

    ③ インスタグラム運営への通報を過剰に繰り返す
    なりすましアカウントは、インスタグラムのヘルプセンターで通報(報告)対象であるということが明示されています。
    だからといって、何度も通報を繰り返すことは、通報機能の濫用とみなされたり、嫌がらせや虚偽の通報と捉えられてしまったりするおそれがあるため、注意しましょう。


    以上で紹介した3点が、なりすましアカウントを見つけた際に避けるべき行動です。
    なりすましアカウントを見つけたときには、以下のような対処を行うようにしましょう。


    • 周囲の人へ注意喚起を行う(ストーリーやフィード投稿で、なりすましアカウントがあることをアナウンスするなど)
    • なりすまし被害の証拠を収集する・記録に残す(スクリーンショットを撮るなど)
    • インスタグラムに適切な削除依頼をして対応してもらう

2、インスタグラムのなりすましアカウントを削除する方法|削除依頼

なりすましアカウントを削除するには、インスタグラムに正しい方法で削除依頼を行わなければなりません。ここからは、インスタグラムへ削除依頼をする方法を紹介します。

  1. (1)なりすましアカウントの作成は禁止行為

    インスタグラムの「コミュニティガイドライン」では、なりすましアカウントの作成自体が禁止されています。また「利用規約」でも、なりすましアカウントの作成を禁止するとともに、なりすましアカウントをインスタグラムが削除したり変更したりすることができる旨が定められています。

    なりすましアカウント以外であっても、コミュニティガイドラインや利用規約に違反するアカウントに該当すれば、インスタグラムによって削除してもらうことが可能です。しかし削除依頼をしても、その対象ではないと判断されれば、いくらアカウント削除を求めても対応してもらうことはできません。

  2. (2)インスタグラムへ削除依頼する方法

    インスタグラムに削除依頼するとき、アプリ上から行う場合とブラウザ上から行う場合とで、方法が若干異なります。


    【アプリ上から削除を依頼する方法】
    • フィード・ストーリーズの投稿でユーザーネームをタップするか、チャットでユーザーネームをタップする
      ※ユーザーネームを検索してプロフィールを開くことも可能
    • プロフィールの右上にある[…]をタップする
    • [報告]をタップする
    • 画面の指示に従う
      ※インスタグラムのアカウントを持っていない場合、自身のユーザーネーム・メールアドレスなどを入力する必要があります

    【ブラウザ上から削除を依頼する方法】
    • フィード・ストーリーズの投稿でユーザーネームをタップするか、チャットでユーザーネームをタップする
      ※ユーザーネームを検索してプロフィールを開くことも可能
    • ユーザーネームの横にある[…]をタップする
    • [報告]を選択してから、報告するアカウントの種類を選択し、画面の指示に従う
      ※インスタグラムのアカウントを持っていない場合、自身のユーザーネーム・メールアドレスなどを入力する必要があります


    このように、インスタグラムへの削除依頼は、簡単に行うことができますが、前述のとおり、何度も通報を繰り返すことは推奨されません。

    なりすましアカウントを見つけたら、まずは本人のアカウントから周りに注意喚起を行い、それからインスタグラムに正しい方法で削除依頼する、という対応をとりましょう。

  3. (3)投稿されたものの削除依頼

    アカウントの削除依頼とは別に、加害者がインスタグラムに投稿した内容が拡散されてしまい、その投稿を削除したい場合には、投稿を削除する手続きをとる必要があります。


    ① インスタグラムへの削除依頼
    まず、アカウント削除の場合と同じく、インスタグラムに報告(通報)して、削除を依頼する方法があります。やり方としては、アカウントを通報する場合とほとんど同様です。
    また、インスタグラムがコミュニティガイドラインや利用規約に違反していると判断しなければ、いくら通報しても削除してもらえないということも、アカウントの削除依頼の場合と同じです。

    ② 削除仮処分の申し立て
    裁判所に削除仮処分の申し立てを行い、強制的に投稿の削除する方法もあります。
    仮処分の申し立てを行えば、最短で申立てから約1か月で裁判所の判断が出るため、迅速に削除を実現することができ、さらなる拡散を防止することが可能です。


    投稿に関する削除依頼の詳しい解説については、以下の記事もご参考にしてください。
    (参考:書き込み削除の方法|ウェブフォームなどからの削除依頼

3、SNSのなりすまし行為は罪に問える? 加害者を特定するには?

被害を受けた側としては、なりすましは犯罪行為なのではないか、誰が自分になりすましたのか、といったことが気になるでしょう。なりすまし行為が罪に問えるかどうかの線引きや、加害者特定方法について説明します。

  1. (1)SNS上のなりすまし行為自体は罪にならない

    インスタグラムであってもTwitterであっても、SNS上のなりすまし行為自体を禁止する法律はなく、犯罪が成立することはありません。

    ただし、なりすましアカウントを利用して金銭をだまし取るなどの被害が出ている場合には、詐欺罪が成立する可能性があります

    また、なりすましアカウントでの投稿内容に名誉毀損行為や信用毀損行為があれば、名誉毀損罪・信用毀損罪が成立する可能性があります。
    このような刑事上の犯罪になり得る他、プライバシー権・肖像権侵害、著作権侵害などがあれば、不法行為に基づいて民事上の損害賠償を請求できる場合もあります。

    なお、なりすましアカウントを作成されたのではなく、アカウントを乗っ取られたというケースでは、加害者は他人のID・パスワードを不正に利用したこととなるため、不正アクセス禁止法違反となる事案です

  2. (2)加害者を特定する方法(発信者情報開示請求)

    なりすましアカウントにより損害が発生している場合には、なりすましアカウントの作成者に対する損害賠償を請求したり、慰謝料の支払いを求めたりすることができるケースもあります。

    損害賠償を請求するためには加害者の身元を特定する必要があり、そのためには、発信者情報開示請求という手続きをとらなければなりません。

    これまでは、加害者の身元を特定する発信者情報開示請求は、2の裁判手続き(IPアドレスの開示仮処分+氏名・住所の開示請求訴訟)をとる必要がありました。
    しかし、令和4年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行され、新たな裁判手続き(非訟手続き)が創設されるとともに、開示請求の対象となる範囲が拡大されています

    これによって、ひとつの裁判手続きで発信者情報開示請求を行えるようになり、新たにログイン・ログアウト時のアカウント情報も開示対象に追加されるなど、発信者情報開示請求の負担が軽減されるようになりました。

    加害者の身元を特定できたあとは、損害賠償を請求する訴訟提起を行うことが可能です。
    損害賠償請求では、実際に発生した損害だけでなく、慰謝料や発信者情報開示請求、損害賠償請求のための弁護士費用も請求することができる可能性があります。

4、なりすまし行為による被害を弁護士に相談する5つのメリット

なりすましアカウントにより、実際に被害を受けている場合は、弁護士への相談・依頼が推奨されます。

弁護士に相談するメリットとしては、以下のとおりです。

  • 加害者の行為や投稿について、違法かどうかの判断をしてもらうことができる
  • 法的手続きをとれる事案かどうかの区別をしてもらえる
  • 発信者情報開示請求・損害賠償請求・慰謝料請求などの手続きを委任できる
    ※ただし、損害賠償請求や慰謝料請求が可能な事案であっても、加害者側の資力が乏しければ、実際の金銭回収が難しいケースもあり得ます。
  • 第三者によって拡散された投稿の削除手続きを委任できる
  • 弁護士名での警告文などを発出することができる


このように、発生した被害やトラブルに対してどうするべきかを判断してもらえるだけでなく、実際にサポートまで受けられるということが、弁護士への相談をおすすめする理由になります。

5、まとめ

インスタグラムなどでなりすましアカウントを作成すること自体は犯罪ではありませんが、名誉毀損があったりプライバシーを侵害されたりする違法な投稿などがあれば、それによって生じた損害の賠償や慰謝料の支払いを請求できることもあります。

損害賠償請求などを行うためには、裁判手続きによって加害者の身元を特定する発信者情報開示請求が必要となり、違法な投稿が拡散されている場合には、削除依頼も行わなければなりません。これらの複雑な手続きは、弁護士に依頼することですべてを委任することが可能です。

なりすましアカウントの対応でお困りの際には、ベリーベスト法律事務所まで一度ご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2023年02月09日)の法律をもとに執筆しています

同じジャンルのコラム【個人】SNSサイト

弁護士Youtuber × 削除請求チーム 誹謗中傷の削除請求について動画で解説! どっちに頼めばいいの 削除代行業者と弁護士の違い 用語集 削除請求の知識を学ぼう