削除依頼・投稿者の特定
5ちゃんねるや2ちゃんねるなどへの
悪質な書き込み削除のご相談は弁護士へ
弁護士コラム
風評被害という言葉について、法律上厳密な定義があるわけではありませんが、一般的には、世間の評判やうわさによって損害を被ることをいいます。
特定の事柄について、ニュース番組やSNSなどで真実とは異なる内容を公表された結果、自分自身に非がないにもかかわらず、飛び火して大きな損害を被る事例が代表的です。
たとえば、A社が製造する冷凍食品のシュウマイを食べた人が、食中毒を起こしてニュースで取り上げられたとします。食中毒の原因が、A社の商品製造過程のみにあったにもかかわらず、同じく冷凍食品のシュウマイを扱うB社の商品製造過程にも問題があるかのようなカキコミがインターネット上で拡散して、B社の冷凍食品のシュウマイもまったく売れなくなるといった事例が考えられます。
そして、インターネット上の掲示板やSNS上に書き込みが拡散された場合、誤った情報が無制限に広まり、さらに損害が拡大してしまう可能性があります。
企業が風評被害を受けた場合、損害賠償請求をすることができます。
この損害賠償請求が認められるためには、風評被害の元となった違法なカキコミによって企業に損害が発生したこと、つまり、違法行為と損害との間の因果関係を証明する必要があります。したがって、容易に多額の賠償金を得られるわけではありません。
しかし、企業がいわれのないカキコミで被ったイメージを回復するためには、その結果が報道されることなどを想定し、損害賠償請求訴訟をして勝訴することが非常に有用な方法になります。また、将来を見据えて、悪質なウソやデマのカキコミなどを未然に防止する手段として、毅然とした企業の姿勢を示すことも重要です。
そのため、企業としては、実際に得られる賠償金のみを考えるのではなく、企業イメージの回復やインターネット上のカキコミによるリスクを未然に防ぐ手段として、風評被害に対する損害賠償請求を行うことに、大きなメリットがあります。
それでは、風評被害に対する損害賠償請求を行うための方法を、流れに沿って解説します。
損害賠償請求をする前提になりますが、風評被害でこれ以上に損害が拡大することを防ぐため、風評被害の原因となっている投稿の削除をすることが望ましいといえます。他方で、損害賠償請求をする場合、風評被害の原因となったカキコミについて、証拠を保存しておく必要があります。
そこでまずは、風評被害の原因となっている掲示板やSNS上のカキコミを特定します。
そのうえで、相手が問題の投稿を削除する前に、該当するカキコミをスクリーンショットするなどして、実際のカキコミを証拠として保存します。
その後、削除依頼をする場合は、ウェブサイトの管理者等に対して問題となっている投稿の削除を請求します。ウェブサイトによっては、削除依頼を受け付けるためのフォームを用意しているところもあります。ただし、ウェブサイトの管理者や連絡方法がわからないケースがあるかもしれません。そのようなときは、ウェブサイトのプロバイダへ削除依頼する方法をとることがあります。
なお、削除請求をした場合、この請求が公開されるウェブサイトもあります。風評被害の元となったカキコミが真実であると誤信している人たちが、このような削除請求の内容を見た場合、再炎上する危険があるため、削除請求をする場合、慎重かつ冷静に方法を検討する必要があります。
風評被害の原因となったカキコミを特定しても、このカキコミをした投稿者が、どこの誰だかわからない状態では、損害賠償請求をすることができません。
カキコミをした投稿者を特定させるために行うのが、発信者情報開示請求です。発信者情報開示請求とは、ウェブサイトやプロバイダなどに対して、投稿者のIPアドレス、氏名、住所などの情報を開示するよう求めることをいいます。
発信者情報の開示請求は、企業の担当者が裁判外で行うこともできますが、実際に開示されるケースはほとんどありません。また、発信者情報は、カキコミが行われて3か月から6か月ほどで消去されてしまうので、早急な対処が必要です。
そのため、弁護士に依頼するなどして、発信者情報の開示に関する訴訟手続(仮処分・訴訟)を行うことが一般的です。
発信者情報開示請求により、カキコミをした投稿者の氏名や住所がわかれば、損害賠償を請求します。
大きな問題にしたくないときや因果関係を裁判で立証することが難しいケースなどでは、弁護士を通じて、裁判外で損害賠償請求の任意交渉を行うことも可能です。
他方で、風評被害に対する損害賠償請求のために訴訟することは、企業イメージの回復やインターネット上のカキコミによるリスクを未然に防ぐ手段として、大きなメリットがあります。ただし、判決が出るまでは長期戦となるケースが一般的です。
どのように対応すべきかについて決めかねているときは、発信者情報開示請求とあわせて、損害賠償請求についても弁護士に相談することで、適切なアドバイスを得られるでしょう。
悪質なカキコミによる風評被害によって多大な損害が発生した場合は、刑事告訴をすることも可能です。業務に支障をきたし、損害が発生するような行為をされたわけですから、厳しい態度で対応しなくてはならないケースもあるでしょう。
成立する可能性のある犯罪としては、名誉毀損(きそん)罪、業務妨害罪、信用毀損罪などがあります。
実際に企業が風評被害を受けて損害賠償請求を行い、認められたケースを紹介します。
1つ目の裁判例として、被告の工場からダイオキシン類を含む排水が7年以上にわたって河川に排出され続け、この事実がテレビ等によって報道されたことにより、同河川の河口付近で漁業を営む原告ら4名が風評被害による営業損害を被ったとして、原告4名が被告に対して損害賠償請求を行った事例があります(横浜地方裁判所平成18年7月27日判決、事件番号平成15年(ワ)第1564号)。
この裁判において原告4名は、被告に対してそれぞれ約2848万円から約277万円の損害賠償請求を行ったところ、横浜地裁は、原告らの請求を一部認め、被告に対して、原告らに対し、それぞれ約361万円から約18万円を支払うよう命じました。
2つ目の裁判例として、元従業員の被告がインターネット上のウェブサイトに掲載した原告に関する記事が、原告の名誉を毀損するとともに、原告の著作権を侵害するとして、原告名が被告に対して損害賠償請求を行った事例があります(東京地方裁判所平成28年12月26日判決、事件番号平成26年(ワ)第22016号)。
この裁判において原告は、被告に対してそれぞれ約1340万円の損害賠償請求等を行いました。この請求について東京地裁は、被告の記事は、原告が退職勧奨に従わない従業員に対して見せしめのための人事異動をする会社であるという悪印象を与えるものであって、原告の社会的評価を低下させ名誉を毀損したとして、原告の請求を一部認め、33万円の支払いとインターネット上に掲載していた記事の削除を命じています。
企業が風評被害を受けた場合は、次のようなところへ相談することができます。
都道府県庁や市役所などには、無料法律相談の窓口があり、弁護士などが無料で相談に応じてくれます。詳細は、都道府県や市町村のホームページなどで確認してみてください。
お近くの警察署で対応してくれる場合はありますが、被害届を受け取る程度にとどまることも多くあります。また、都道府県の警察本部には、サイバー犯罪対策室などが設置されていますが、インターネット上の薬物犯罪や性犯罪などと異なり、風評被害に関する事件について早急に対応してくれる場合は多くないかもしれません。
インターネット上で起こる紛争についての経験が豊富な弁護士であれば、風評被害の問題全般に対応することができます。
まず、損害賠償請求を検討するのであれば、相手を特定しなければなりません。もし相手が定かでなければ、裁判所を通じてプロバイダへの発信者情報開示請求を行うことになります。該当記事の削除を、書き込みをした本人や、該当掲示板やSNSなどの管理者に依頼しなければならないでしょう。当事者同士で交渉すると、再炎上することにもなりかねず、さらなる損害を被ってしまう可能性があります。
しかし、弁護士であれば、裁判を通じた発信者情報開示請求をスムーズに行えるだけでなく、加害者を特定したあとの損害賠償請求や刑事告訴する場合の手続き、削除要請や慰謝料請求の交渉を代理人として実行できます。企業の担当者が直接矢面に立つ必要は一切ありません。これ以上不測の損害を被らないよう最善を尽くします。
SNSやスマートフォンの普及により、風評が拡散するスピードが格段に速くなりました。企業が風評被害を受けているにもかかわらず、対策を怠ってしまうと、企業イメージや実際の売り上げなどの損害が回復し難いほど甚大になることがあります。
風評被害について、より迅速に、かつ問題を大きくしないようにするためには、弁護士へ相談することをおすすめします。風評被害に対する損害賠償請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください。風評被害対策についての知見が豊富な弁護士がお手伝いさせていただきます。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。
※記事は公開日時点(2021年08月17日)の法律をもとに執筆しています