弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 名誉毀損
    個人
    2021年02月05日更新
    YouTube動画で権利侵害や名誉毀損を受けた!削除依頼・投稿者特定の方法を解説

    YouTube動画で権利侵害や名誉毀損を受けた!削除依頼・投稿者特定の方法を解説

    総務省が公開している令和元年版の情報通信白書によると、インターネット利用の目的・用途について「動画投稿・共有サイトの利用」と回答した人の割合は60%に達しています。
    年代別にみると、13歳から19歳までで80%以上ともっとも高く、39歳までの年代でも70%以上を維持しており、比較的に若い年代が動画投稿・共有サイトを盛んに利用している状況は明らかです。

    動画投稿・共有サイトの代名詞として確固たる地位を確立しているサイトといえば「YouTube(ユーチューブ)」でしょう。
    平成17(2005)年に正式なサービスを開始して急速に成長してきたYouTubeは、多くのユーザーに楽しまれている反面で「動画による権利侵害」という新たな問題を生じさせています。

    このコラムでは、YouTube動画による権利侵害を受けた際に削除を依頼する方法について、弁護士が解説します。
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1、YouTubeという動画サイトが持つ特性とは

もはや説明不要とも思えるほどに普及している「YouTube」ですが、ここで改めてYouTubeの特性を確認しておきましょう。

  1. (1)動画投稿サイトの成り立ち

    インターネット上で動画を共有できるサービスは、日本では1990年代後半ころから存在していたといわれています。
    その後、世間をにぎわせたWinnyなどのファイル共有ソフトが流行しましたが、有料で販売されている映像・音楽ソフトのデータや個人情報が大量に流出している事態に加えて、ウイルス感染などの問題がありました。
    2000年代前半ころからは、インターネットブラウザだけで利用できる動画投稿・共有サイトが次々と登場しますが、2005年にサービスを開始したYouTubeが爆発的に流行しました。
    現在の日本の状況では、動画上に流れるコメントをつけられる「ニコニコ動画」が存続するものの、アプリなどを除けば、YouTubeの人気は衰えていません。

  2. (2)YouTubeのサイトの特性

    YouTubeの特徴的な点としてまず挙げられるのがコンテンツの豊富さです。
    映画やアニメなどの映像作品に関するコンテンツだけでなく、生活や趣味に役立つハウツー動画も目立っています。
    いわゆる「やってみた動画」やゲーム実況動画などで人気を博した投稿者が「ユーチューバー」としてもてはやされていますが、既存のコンテンツの枠組みでは見られなかったこのようなジャンルの動画がユーザーの裾野を広げる要因にもなっているでしょう。
    また、
    一部有料のサービスもありますが、投稿・閲覧・コメントという基本的な機能はすべて無料で利用できます。
    しかもブラウザのみで利用できるため、家庭内でも個人がそれぞれ別のコンテンツを視聴できるという利便性もあります。

2、YouTubeで発生しがちな権利侵害トラブルとは?

YouTubeはユーザーが気軽に動画を投稿できるという点に大きな利便性や楽しみがあるサイトですが、同時に権利侵害や誹謗中傷といった問題も生じています。

  1. (1)著作権侵害

    映画やテレビ番組、アニメや音楽などのように他者が創作した映像作品、著作物を無断で公開する行為は、著作権法違反となります。
    故意の違反には10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらが併科されることがあるという非常に重い刑事罰が規定されているうえに(著作権法119条1項)、多額の賠償請求を受けるおそれもあるにもかかわらず、著作権を侵害する動画の投稿はあとを絶ちません。

  2. (2)肖像権侵害、プライバシー権侵害

    撮影・投稿を許可していないのに顔や容姿を撮影・公開されてしまった場合は肖像権侵害が成立する可能性があります。
    一個人の容姿や行動を撮影して投稿する動画は、「みだりに顔・容姿を撮影及び公表されない」という権利を侵害しているのです。
    また、個人の私生活や住所などの個人情報を公開する動画は、プライバシー権の侵害にも当たります。

  3. (3)誹謗中傷、名誉毀損(きそん)

    特定の個人に対する嫌がらせを目的に、ありもしない情報や知られたくない情報の暴露をテーマにした動画を作成して投稿するなどの行為は、名誉毀損により損害賠償責任を負うことになったり、刑法の名誉毀損罪や信用毀損罪にあたる可能性があります。
    以前は個人のブログなどで文章コンテンツとして投稿されていた嫌がらせも、最近ではテロップが流れる動画形式でYouTubeに投稿されている例が増加しています。

    また、YouTubeには動画に対するコメントを投稿できる機能があります。
    コメント欄で投稿者や撮影対象者に対する暴言などの誹謗中傷を浴びせる行為も、同様の責任を負う可能性があります。

  4. (4)その他

    ここで挙げた事例のほかにも、特定の異性への恋愛感情が満たされないことに対する嫌がらせの動画を投稿するストーカー事案や、元交際相手との私的なわいせつ動画を投稿するリベンジポルノ事案も目立ちます。

3、削除の基準となるYouTube独自のガイドラインとは?

YouTubeへの動画投稿によって権利侵害や誹謗中傷を受けてしまうと「直ちに動画を削除してほしい」と考えるのが当然です。
YouTubeにはいくつかの削除請求の方法が用意されていますが、問題を報告しても必ず削除されるわけではありません。
動画が削除されるには、YouTube側による独自のガイドラインが設定されています。
いくら当事者にとって不快な動画でも、YouTube独自のガイドラインに沿った請求でない限り自動的に削除されるわけではないのです。

  1. (1)YouTubeのポリシーとセキュリティ

    YouTubeは世界中のユーザーが自由に動画を投稿・閲覧できるサイトです。
    投稿・閲覧・コメントといった各機能についてユーザーの自由な利用を認めている背景には、ユーザーとYouTube側との信頼関係があります。
    そして、その信頼関係を維持するために、YouTubeはユーザーに対して一定のコミュニティガイドラインを示したうえで「報告機能」による違反の報告を提示しています。

  2. (2)YouTubeコミュニティガイドラインの内容

    YouTubeは公式ホームページでコミュニティガイドラインを明示しています。
    以下に引用するコミュニティガイドラインに抵触するコンテンツは、YouTube側が「該当する動画の投稿などを禁止する」というものであり、削除の対象です。

    ●スパムと欺瞞行為

    • 虚偽のエンゲージメント
    • なりすまし
    • コンテンツ内のリンク
    • スパム、欺瞞行為、詐欺


    ●デリケートなコンテンツ

    • 子どもの安全
    • カスタム サムネイル
    • ヌードや性的なコンテンツ
    • 自殺や自傷行為


    ●暴力的または危険なコンテンツ

    • 嫌がらせやネットいじめ
    • 有害で危険なコンテンツ
    • ヘイトスピーチ
    • 暴力犯罪組織
    • 暴力的で生々しいコンテンツ


    ●規制品

    • 銃器に関するコンテンツ
    • 違法または規制対象の商品の販売 など
  3. (3)削除されるコンテンツ内容の具体例

    たとえば、①嫌がらせやいじめを目的とした動画やコメントの投稿、②民族・国籍・人種・宗教・性別(ジェンダー)などを理由に個人や集団などを攻撃、あるいは、差別を助長する、いわゆるヘイトスピーチにあたる動画やコメントの投稿、③個人が特定できる形式で個人情報を公開することなどが挙げられます。

  4. (4)コンテンツがポリシーに違反した場合

    コンテンツがYouTubeのポリシーに違反している場合は、当該コンテンツが削除され、メールで通知されます。この警告が同一のアカウントで合計3回に達すると当該アカウントのチャンネルが停止されるという厳しいペナルティが用意されています。

4、YouTube動画を削除依頼する方法とは

具体的な権利侵害や誹謗中傷に当たる動画やコメントを放置することは、更なる損害・被害の発生につながります。
早急に削除依頼をしましょう。

YouTubeに投稿された動画などの削除については、①動画を投稿した者に直接、削除を依頼する方法、②YouTubeに削除を申し立てる方法、③弁護士に依頼する方法の3通りがあります。

① 動画を投稿した者に直接、削除を依頼する方法

各動画のユーザー名をクリックすることで開く、動画を投稿した者のページに用意されている「フリートーク」という機能を利用します。なお、表示されない場合もあるようです。
この機能を利用すると、動画を投稿した者にメッセージの送信ができますので、直接、削除の要請を行うことができます。

ただし、この場合、送信者のアカウントがメッセージを送信した相手に知られてしまう上、実際に削除されるかどうかは相手次第であり、無視されたり、削除されない可能性もあることには注意が必要です。

② YouTubeに削除を申し立てる方法

YouTubeのサイト内に用意されている機能を使えば、自分でも削除依頼が可能です。
「報告」機能がそれです。
動画画面の下部に、視聴回数等が記載されたタブがあります。
そのタブの右にある「…」から「報告」を選ぶと、コミュニティガイドラインに沿ったチェックリストが表示されるので、該当する内容をチェックして違反報告を送信します。

例えば、著作権侵害については、上記チェックリストで「権利の侵害」、「著作権侵害の問題」を選択し、「著作権侵害に関する申し立ての送信」にアクセスした上で、専用フォームに削除対象の動画URLや申立人の情報などを入力して送信します。

また、プライバシー権侵害でも同様に、「権利の侵害」、「プライバシーの問題」を選択し、「プライバシー侵害の申し立て手続き」にアクセスした上で、専用フォームに必要事項を入力して送信します。

誹謗中傷にあたる動画やコメントの削除も、同じく「権利の侵害」、「名誉毀損」を選択し、「異議申し立てを行う国」の選択で日本を選択すると、専用のフォームが表示されるので必要事項を入力のうえで送信しましょう。

ただし、YouTubeに削除を依頼しても、削除をしない決定をする可能性も充分にあります。

③ 弁護⼠に依頼してYouTube動画を削除する

報告機能や専用フォームからの申し立てでも動画やコメントが削除されない場合は、弁護士に依頼してYouTubeに対する削除請求を行うことが考えられます。
仮処分や、訴訟の手続によって削除を求めていく方法をとることになります。

5、YouTube動画の投稿者を特定して訴えるには

YouTube動画で権利侵害や誹謗中傷などの明確な権利侵害があった場合は、YouTubeに対して削除を依頼できるだけでなく、被害が重大であったり繰り返されたりする場合は投稿者のアカウント停止措置も行われる場合があります。
さらに、その投稿者を特定することによって、精神的苦痛に対する慰謝料や発生した損害に対する賠償請求も可能です。

  1. (1)動画投稿者を特定して訴えるには

    YouTube動画の投稿者を訴えるためには、投稿者の氏名や住所などを特定する作業が必要です。
    この作業を「発信者情報開示請求」といいます。

    発信者情報開示請求は二段階にわかれており、まずYouTubeに対して裁判を起こして投稿のIPアドレスとタイムスタンプの開示を受けます。
    この情報からさらにプロバイダを特定し、プロバイダに対する裁判を起こして契約者の情報を得ることで、投稿者が誰なのかを明らかにするわけです。

    発信者情報開示請求によって投稿者を最終的に特定するには、半年から1年程度の時間がかかります。
    しかも、投稿者の特定に必要なIPアドレスなどの情報は、スマートフォンからの投稿の場合は、投稿から概ね3か月しか保管されていないため、情報が消えてしまわないように保存手続が必要になります。
    スピーディーな対応が求められるうえに個人では手続きが難しいので、YouTube動画の投稿者特定について実績がある弁護士に依頼しましょう。

  2. (2)法的措置を検討する場合

    金銭の支払いだけでなく法的措置によって刑事責任を追及したいのであれば、警察への被害の届出が必要になります。
    YouTube動画の投稿が刑事事件になるケースとしては、著作権法違反や名誉毀損罪に該当する場合が考えられますが、これらは検察官が起訴するためには被害者の告訴を要する「親告罪」です。
    被害の状況などを詳しく説明する告訴状の作成・提出を求められるので、刑事事件の解決実績がある弁護士のサポートが必要となることが多いでしょう。

6、まとめ

YouTubeに自分の容姿や個人情報に関する動画を投稿された、著作物が無断で投稿された、コメント欄で誹謗中傷を受けたなどの被害がある場合は、YouTubeへの申し立てによって動画やコメントの削除が可能な場合があります。
また、投稿者を特定することで、慰謝料や損害賠償の請求も可能となります。

YouTubeへの削除請求や発信者情報開示請求、投稿者に対する慰謝料や損害賠償の請求を進めていくには、YouTubeが明示しているコミュニティガイドラインの理解だけでなく幅広い法律の知識が必要です。
YouTubeへの削除依頼や情報開示の実績が高い弁護士に相談してサポートを受けましょう。

権利侵害や名誉毀損などにあたるYouTube動画の削除や投稿者の特定、慰謝料や損害賠償の請求なら、ベリーベスト法律事務所にお任せください。
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関連リンク

弁護士でありYoutuberでもある久保田先生と、削除請求チームの弁護士 井川先生による解説動画です。

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この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2021年02月05日)の法律をもとに執筆しています

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