削除依頼・投稿者の特定
5ちゃんねるや2ちゃんねるなどへの
悪質な書き込み削除のご相談は弁護士へ
弁護士コラム
従来、ネット上の加害者の身元を特定するためには、開示請求という手続きをとる必要がありました。
開示請求では、サイト管理者とプロバイダそれぞれに対して、最低でも合計2回の裁判手続きをとらなければなりませんでした。
また、相手の身元が特定できるまでに1年前後かかるケースが多く、その間に、割り当てられたIPアドレスなど必要な通信記録が消去されてしまい、加害者を特定することが物理的に不可能になってしまうということもありました。
このように、開示請求では、手間や時間の点で被害者の負担が大きかったため、この負担を軽減して迅速さを実現すべく、新たに開示命令という制度が創設されるに至りました。
開示命令の手続きは、非訟事件という通常の訴訟(訴訟事件)とは異なる手続きによって進められます。
非訟事件は、訴訟事件のように当事者対立構造(対審構造)のもとで公開の口頭弁論を行うのではなく、非公開で進められ、必ずしも口頭弁論(審問)を開かなければならないわけでもありません。
また、これまで別々に裁判手続きをとる必要のあった
などの各手続きを、ひとつの裁判手続きの中でまとめて審理することができるようになりました。
これらのことにより、開示命令手続きでは、数週間から数か月で審理を終えることができると見込まれています。
開示命令が出れば、被害者は、加害者が違法な投稿を行った際に割り当てられたIPアドレス、タイムスタンプ(通信の行われた日時)、加害者の氏名・名称・住所などのほか、ログイン型サービスの場合には、ログイン・ログアウト時や、アカウント作成・削除時の接続情報、個々の投稿時の接続情報などを知ることができます。
違法な投稿が掲載されたウェブページのURLすべてを表示したうえでスクリーンショットを撮り証拠を確保しておくなど、開示命令を申し立てる前の事前準備が重要であることは、従来の開示請求と同じです。
開示命令が出た後は、弁護士と相談し、加害者に何を請求するのかを決定することとなります。
相手に資力がなければ、損害賠償請求訴訟を提起して勝訴しても賠償金を回収できないこともありますので、事案に応じた適切な方法を選択する必要があります。
この章では、開示命令が出た後の方法についてお伝えします。
損害賠償を請求する場合、加害者を被告として、名誉毀損・人格権(プライバシー権)侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を提起することが考えられます。
請求する損害には、違法な投稿による精神的苦痛等に対する慰謝料、加害者を特定するための調査にかかった費用、弁護士費用などを含めることが可能です。
訴訟以外にも、交渉や和解(示談)による解決を目指す方法も考えられます。
交渉や和解の場合には、訴訟よりも短期間での解決を期待することができますし、判決のように金銭の支払いを命じるだけでなく、示談書の中で謝罪の意思を表明させたり、今後は違法な投稿を行わないことを誓約させたりするなど、柔軟な解決も可能となります。
相手方(加害者)の態度や事案の内容によって、どの方法を選択すべきかが異なりますので、ネットトラブルの経験が豊富な弁護士にご相談なさることをおすすめします。
違法な投稿をした加害者は、民事上で損害賠償の責任を負うだけでなく、刑事上の罰則を受ける可能性もあります。
警察も、サイバーパトロールを行って取り締まりを進めていますが、検挙に至ることはまれであり、刑事事件としての立件を希望するのであれば、被害届の提出や告訴を行うべきです。
被害届の提出や告訴によって刑事事件として立件されれば、加害者は、刑事手続き上の被疑者として取り調べなどを受け、最終的には、検察官による起訴不起訴の判断を受けます。
起訴されて有罪判決を受ければ前科が付くこととなりますし、不起訴となった場合でも、前歴が残ることになります。
違法な投稿が該当する可能性がある犯罪と罰則は、次の表のとおりです。
罪名 | 罰則 |
---|---|
名誉毀損罪(刑法230条1項) | 3年以下の懲役・禁錮 50万円以下の罰金 |
侮辱罪(刑法231条) | 1年以下の懲役・禁錮 30万円以下の罰金 拘留 科料 |
威力業務妨害罪(刑法234条、233条) | 3年以下の懲役、50万円以下の罰金 |
すでにお伝えしましたが、開示請求では、少なくとも2つの裁判手続きをとる必要があります。
開示請求で必要となる2つの裁判手続きについて、それぞれ概要をご紹介します。
開示命令が創設された令和4年10月以降も、従来の開示請求が残されることとなり、被害者は、開示命令と開示請求どちらの手続きをとるのかを選択することができるようになりました。
そこで、それぞれの手続きが役立つ場面や使い分けについて、ご紹介します。
開示命令と開示請求のいずれであっても、それぞれの手続きによって必要な書類が異なりますし、どの裁判所に書類を提出するべきかという管轄などについては、専門的な知識が要求されます。
発信者情報の開示と併せて、違法な投稿の削除請求やログなどの消去禁止請求も求める場合には、それへの対応も別途必要です。
弁護士に相談すれば、過不足なく書類を準備し、スムーズに裁判手続きを利用することができ、適正な審理を期待することができます。
加害者を特定できた後には、事案に応じた適切な請求内容を定め、交渉・示談、訴訟、告訴などの中から、実現したい請求内容に応じた方法を選択しなければなりません。
この点についても、削除請求や発信者情報開示の経験が豊富な弁護士であれば、事案に応じた適切な解決方法を提案し、依頼者をより良い解決へと導くことができます。
弁護士であれば、依頼者の代理人となり、複雑で難解な裁判手続きをすべて代わりに行うだけでなく、加害者との交渉・示談などもすべて、依頼者に代わって行うことができます。
誹謗中傷や名誉毀損に当たる投稿がネット上で炎上・拡散するだけでも精神的な負担がある中で、さらに裁判手続きの負担まで生じることとなれば、被害者の負担はかなりのものとなります。
紛争の解決はすべて弁護士に任せれば、早期に日常生活を取り戻すことが可能です。
開示命令が創設されたことにより、違法な投稿の被害者は、これまでよりも簡易迅速に加害者を特定できるようになりました。
加害者を特定できれば、事案に応じて、損害賠償、交渉・示談、告訴などの対応をとることができます。
従来の開示請求手続きも残されていますので、事案の内容や状況に応じて、開示命令と開示請求を使い分け、適正な解決を目指すこととなります。
名誉毀損や誹謗中傷などにネット上のトラブルにお悩みの場合には、ベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。
※記事は公開日時点(2023年01月12日)の法律をもとに執筆しています