弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • SNSサイト
    法人
    2023年01月26日更新
    自社の写真や動画がSNSで著作権侵害された! 企業が取れる法的手段

    自社の写真や動画がSNSで著作権侵害された! 企業が取れる法的手段

    「自社のコンテンツがSNSで投稿されているが、著作権侵害ではないか」「削除するよう発信者に連絡したが、応じてもらえないので法的措置を取りたい」

    著作権を侵害された場合、適切な措置を講じなければ、拡散されて被害が大きくなるリスクがあります。また、ライセンス料を支払って、著作物を使用しているクライアントからのクレームにもつながりかねません。

    無断で自社の画像や動画などがSNSで使用されているとき、企業はどのような対応を取れるのでしょうか。著作権を侵害された場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
初回相談60分無料

通話無料/平日9:30〜18:00

1、著作権侵害が成立する要件とは?

自社コンテンツを無断で利用されたからといって、そのすべてに著作権侵害が成立するわけではありません。コンテンツの利用によって、著作者の権利が侵害されたといえるかは、関係法令に照らして慎重に判断する必要があります。
以下、著作権侵害の各要件について解説します。

● 著作物であること
著作権侵害といえるためには、無断で利用されたコンテンツが「著作物」である必要があります。著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法2条1項1号)
以下、この定義の具体的な意味をご説明します。

①「思想または感情」に関するものであること
人間の精神的な活動の成果でなければ、著作物には当たりません。

例えば、次のようなものは、この要件を満たさないものと考えられています。

  • 単なる事実(データや歴史的事実そのもの)
  • 事実の伝達にすぎない雑報および時事の報道(著作権法10条2項)
  • 人間が関与しないコンピューター(AI)による自動生成物
  • 自然(風や波など)が人間の関与なく造形したもの
  • 野生動物が人間の関与なく描いた絵


②「創作」性があること
著作物に当たるためには、創作性(個性・オリジナリティー)があることも必要です。そのため、次のようなものは、あるがままのものをそのまま伝えるだけですので、創作性がないと判断されることとなります。

  • 既存の絵画の忠実な模写
  • 証明写真などの自動的・機械的に撮影した写真
  • ごくありふれた表現(誰でもほぼ同じ表現になる場合)


他方、小さい子どもの絵、工作、作文、感想文などは、作者の個性が発揮されたものであり、創作性が認められます

③「表現」であること
著作物は、外部から認識可能な形になっていることが必要で、これを「表現」といいます。したがって、次のような例は、視覚的に認識することができないので、著作物として保護されることはありません。

  • アイデアそれ自体
  • 漫画や小説の登場人物の人物像やイメージ(キャラクター)
  • 理論、学問的知見それ自体
  • スポーツ・ゲーム等のルール


④「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属すること」
これは、著作権法の目的が、「文化の発展」(著作権法1条)にあることから求められる要件です。これとの関係で、実用品は、著作物には当たらないと判断される傾向にあります。

このように、対象となるコンテンツなどが著作物に当たるか否かは、個別事案の内容を踏まえて判断せざるを得ない場合が多いため、詳しくは弁護士など専門家へのご相談をおすすめいたします。


● 著作権の存在があること(保護期間内であること)
著作権は、無期限に保護されるのではなく、保護期間が定められています。
著作権が保護される期間は、著作者の死後または著作物の公表後70年間です。(著作権法51条から54条)
保護期限は、令和元年12月30日に、それまでの50年から70年に延長されました


● 依拠性・類似性が認められること
著作権を侵害しているかどうかは、創作性のある表現の部分が同じ(=コピー・依拠性)か、似ている(=類似性)か、どうかで判断されます。創作性がない表現の部分(ありふれている部分など)が同じ・類似していても、問題にはなりません。

したがって、全体の印象が似ているというだけでは、著作権侵害の有無を判断することはできず、両作品のどこがどのように似ているのか、個別具体的な判断が必要ということになります。また、似ている部分が「ありふれている(創作性がない)かどうか」も、同種の作品などにおいてどのように表現されているかなどを踏まえて個別具体的に判断されます。


● 著作物利用の権限がないこと
利用者にその著作物を利用する権限がないことが必要です。たとえ他人の著作物であっても、利用について許諾を得ていたり、使用料を支払うといったライセンス契約を締結して利用したりしている場合には、適法な利用となり、著作権侵害には当たりません。

2、著作権侵害だと認められるケース

著作権侵害の要件を踏まえて、著作権侵害に当たり得る具体的なケースを解説します。インターネット上などで以下に示すような行為を見つけたときには、対応が必要なことが多いといえます。

  • 録画された自社コンテンツ(テレビ、映画、音楽など)のSNSへの投稿
  • 自社の発刊する漫画や雑誌などのネット上へのアップロード
  • 自社コンテンツの著作権を侵害しているツイートのリツイート
  • SNSでの自社の投稿をコピペした投稿
  • 自社の管理する音楽を習い事で無断利用することや、歌詞のブログへの掲載


このほかにも、販促用の写真が著作権侵害として争われた事案や、チラシなどの広告が著作権侵害と主張された例もあります。

一見すると著作権侵害に当たりそうなものでも、侵害はないと判断される場合や、その逆の場合も少なくありません。著作権侵害が疑われる場合には、著作権をはじめとする知的財産分野の解決実績が豊富な弁護士への相談をおすすめします。

3、企業が相手(侵害者)に対して取れる具体的な手段

  1. (1)投稿者へ直接削除を求める

    著作権を侵害しているのが投稿者ひとりだけであったり、ネット上で拡散しているとは認められなかったりする場合には、投稿者自身に直接削除を求めてみるとよいでしょう。ただし、安易にDMなどを送ると、その内容がネット上でさらされるおそれがあるので、連絡を取る方法については、慎重に検討することが大切です。

    また、投稿者の身元を特定するまでに時間はかかってしまいますが、弁護士に依頼し、弁護士名の文書で削除を求めることも方法のひとつです。

  2. (2)発信情報開示請求

    法的な措置を講じる場合には、自社の著作権を侵害する加害者(発信者)の身元を明らかにしなければなりません。そのための手続きを「発信者情報開示」といい、プロバイダ責任制限法4条に「発信者情報開示請求権」が定められています。

    発信者情報を開示するための手続きは次のとおりで、2つの裁判手続きを取る必要があります。プロバイダに任意の開示を求めることもありますが、応じてくれることは多くありませんので、裁判手続きを取るのが通常です。

    ① SNSなどのサービスを提供・運営・管理する事業者(コンテンツプロバイダ)への開示仮処分の申し立て
    加害者のIPアドレス・タイムスタンプ(情報が送信された年月日および時刻)が開示されます。

    ② インターネット接続を提供する事業者(アクセスプロバイダ)への消去禁止仮処分の申し立て・開示請求の訴訟提起
    加害者の氏名・住所などが開示されます。


    なお、発信者情報開示請求は、令和4年10月1日に改正法が施行され、「新たな裁判手続の創設」と「開示請求の対象範囲の拡大」がなされます。これにより、これまでに比べて被害者の負担が軽減され、迅速な加害者の特定が期待されています。

  3. (3)差止請求

    加害者の身元が特定できれば、加害者による著作物の使用を差し止めることを請求する方法が考えられます(著作権法第112条)。削除請求には、すでに著作権侵害をした者に対するその侵害の停止請求と、著作権侵害のおそれのある者に対する侵害を予防する請求という2つの方法があります。

    すでに著作権が侵害されていて、これを放置しておくと著しい損害が生じる可能性があるケースなど、緊急性がある場合には、差止請求の前に、侵害行為の停止を求める仮処分を申し立てることもあります。

  4. (4)著作物使用料や損害賠償の請求

    ライセンス料を支払わなければ著作物を利用できないにもかかわらず、無断で勝手に自社の著作物が利用されているような場合には、著作物使用料相当額の損害賠償を請求することが可能です(民法709・710条)。

    また、著作権侵害によって、海賊版が横行して本来得られるはずのライセンス料を失ったり、著作物への社会的評価が下がり経済的な損失が生じたりしたような場合には、これらの相当額の損害賠償を請求する方法も考えられます(民法709・710条)。

    通常の損害賠償請求訴訟では、被害者側で具体的な損害額を立証する必要がありますが、著作権法には損害額の算定規定が設けられており(著作権法第114条)、被害者(著作権者)の負担軽減が図られています。

    たとえば、著作権侵害によって加害者が利益を受けている場合には、加害者の得た利益の額が損害の額と推定されます(著作権法114条2項)。また、本来はライセンス料を支払う必要があるにもかかわらず、無断で著作物を利用している場合には、ライセンス料相当額を損害額として、請求することができます(著作権法114条3項)。

    これらの規定は、損害額の最低限を定めたものですので、加害者が「実際の損害額はこれより少額である」と主張したとしても、損害額を減額させることはありません。

  5. (5)名誉回復等の措置

    著作権侵害によって著作者人格権が侵害された場合、名誉を回復するための措置などを相手に請求することができます(著作権法第115条)。たとえば、新聞への謝罪広告の掲載などがあります。

  6. (6)刑事告訴の検討

    これまでお伝えした内容は民事上のものですが、著作権侵害は、刑事上の罰則を受ける可能性もある行為です。個人の場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方の罰則が設けられています。法人の場合には、3億円以下の罰金です。

  7. (7)法的措置には時効があるので注意を

    時効についても、民事と刑事で内容が異なります。民事の時効は、著作権者が著作権侵害の事実を知ったときから3年、または著作権侵害のあったときから20年(民法724条)です。
    刑事の時効は、行為のときから7年(刑事訴訟法250条2項4号)です。

    時効を過ぎると、損害賠償などを請求することができなくなり、また刑事責任を問うこともできなくなります。そのため、時効が成立する前に、早めに対応する必要があるので注意しましょう。

4、SNSで著作権侵害された場合に企業がやるべきこと

  1. (1)著作権侵害を証明する証拠を残しておく

    著作権侵害は、ネットなどで簡単に行われてしまうのが実情です。その一方で、証拠は、加害者側に偏在していることが多く、被害者側の立証に困難を伴うことが少なくありません。

    そのため、著作権侵害を見つけたときには、スクリーンショットなどを保存して直ちに証拠を保全しておく必要があります。また、裁判所に証拠提出命令の申し立てを行うなど、強制的に証拠を提出させる手続きも活用しなければなりません。

  2. (2)弁護士に相談する

    著作権侵害に当たるかどうかには専門的な判断が求められ、法的な措置を講じるためには、複数の裁判手続きを取る必要もあります。また、裁判手続きでは、東京・大阪にしか管轄がないケースもあり、通常の民事訴訟とは異なる対応を取らなければならないこともあります。

    著作権侵害への対応にお困りの方は、著作権侵害をはじめ、知的財産事件の経験豊富な弁護士にご依頼ください。

5、まとめ

著作権侵害が成立するかは、創作性のある部分の表現について依拠性・類似性が認められるかなど、事案に応じた専門的な判断が必要です。また、著作権侵害への対応方法は、発信情報開示請求・差止請求・著作物使用料や損害賠償の請求・名誉回復等の措置など、複数の裁判手続きを取らなければならないことや、通常の民事訴訟とは異なる対応が必要なことがあります。

著作権侵害でお困りなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。著作権侵害の対応について経験豊富な弁護士がサポートいたします。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2023年01月26日)の法律をもとに執筆しています

同じジャンルのコラム【法人】SNSサイト

弁護士Youtuber × 削除請求チーム 誹謗中傷の削除請求について動画で解説! どっちに頼めばいいの 削除代行業者と弁護士の違い 用語集 削除請求の知識を学ぼう