弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 誹謗中傷・風評被害
    法人
    2025年05月19日更新
    美容医療クリニックの口コミトラブル|誹謗中傷対策と信頼回復の秘訣

    美容医療クリニックの口コミトラブル|誹謗中傷対策と信頼回復の秘訣

    美容医療クリニックを経営するうえで、Googleマップ、SNS、ポータルサイトなどの口コミは集客をするうえで無視できない存在です。好意的な口コミが多数掲載されていれば、高い集客力が期待できますが、反対に誹謗中傷の口コミが記載されていると集客や売り上げの減少を招くおそれがあります。

    美容医療クリニックに対する悪意のある口コミが掲載されていた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

    本コラムでは、美容医療クリニックに対する誹謗中傷対策として、サイト別の口コミ削除依頼方法をベリーベスト法律事務所の誹謗中傷対策についての知見が豊富な弁護士が解説します。
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1、口コミ放置は厳禁|クリニック経営に与える影響

美容医療クリニックにとって、顧客・利用者からの口コミは非常に重要になります。以下では、口コミが美容医療クリニックの経営に与える影響について説明します。

  1. (1)美容医療クリニック経営において口コミが重要な理由

    美容医療クリニックを選ぶ際に参考にされるのが、Googleマップ、SNS、ポータルサイトなどの口コミです。美容医療クリニックを利用する主な動機は、「美しくなりたい」という点にありますので、医師の技術力は美容医療クリニック選びの重要なポイントといえます。

    美容医療クリニックでは、ポータルサイトはもちろんYouTube 、Instagram、X(旧Twitter)、TikTokなどのSNSを運用し、集患をしているケースが多いでしょう。しかし、これから美容医療クリニックを利用しようとしている方にとっては、美容医療クリニック側からの情報発信だけではなく、実際に利用した患者からの情報発信も重視しています。したがって、現状、クリニック経営においては良質な口コミを増やし誤解を招く投稿には適切な対処を行うことが重要な要素のひとつとなっているといえるでしょう

  2. (2)集客・売り上げへのインパクトが大きい

    美容医療クリニックに好意的な口コミが多数書き込まれていれば、そのクリニックを利用したいと思うきっかけになりえます。そして、口コミを見てやってきた新規の患者に対して、質の高いサービスを提供すれば、その患者からも好意的な口コミが期待できますので、さらなる集客効果のアップが期待できることは間違いありません。

    他方、美容医療クリニックを誹謗中傷する悪意ある口コミが書き込まれてしまうと、そのクリニックの利用を検討している人に対して、ネガティブな印象を与えてしまいます。美容医療クリニックは、複数存在しますので、誹謗中傷の口コミがあるクリニックは選択肢から外されてしまい、集客や売り上げの減少につながる可能性が高いといえます。悪意ある口コミをそのまま放置していると、ますます患者が減少し、悪循環に陥ってしまうでしょう

  3. (3)採用に影響することも

    美容医療クリニックの口コミは、利用者・患者だけではなく、美容医療クリニックへの就職希望者も見ています。

    美容医療クリニックに対する好意的な口コミが多ければ、「この職場で働いてみたい」という動機になりますので、優秀な人材を確保できるなどのメリットがあります。

    他方、美容医療クリニックに対する誹謗中傷の口コミが書き込まれてしまうと、「この職場で働くのは不安……」という思いを抱きかねません。人材の確保が困難になり、将来の採用にも影響を与えることがあります。

2、誹謗中傷といえる投稿とは

どのような投稿が誹謗中傷と評価されるのでしょうか。以下では、誹謗中傷の定義や対応、実際の裁判例などを説明します。

  1. (1)誹謗中傷の法的な定義

    誹謗中傷とは、法律上の明確な定義があるわけではありませんが、一般的に悪口や根拠のない嘘などにより他人の評価を傷つける行為を指します。

    悪質な誹謗中傷になると、刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪、業務妨害罪などの犯罪が成立する可能性が出てくるでしょう。なお、名誉毀損罪などにおいては書き込みが真実であっても罪に問えるケースがあります

  2. (2)誹謗中傷投稿に対して行える法的対応

    Googleマップ、SNS、ポータルサイトなどに誹謗中傷の投稿がされた場合、美容医療クリニック側としては、以下のような法的対応をとることができます。

    ① 口コミの削除請求
    誹謗中傷の投稿をそのまま放置していると、患者が受診をためらうことで売り上げの減少が生じ、離職や採用難につながるなどもリスクが生じてしまいます。そのため、誹謗中傷の投稿を見つけたときは、速やかに削除請求を行うことが重要です。

    一般的にはサイト管理者に対して削除請求を行い、それに応じてもらえない場合には裁判所に削除請求の仮処分申立てを行います。削除請求の詳しい方法については、「3、サイト別口コミ削除依頼方法」をご確認ください。

    ② 投稿者に対する損害賠償請求
    悪質な誹謗中傷の投稿により売り上げの減少などの損害が発生した場合、投稿者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。

    ただし、インターネット上の投稿のほとんどが匿名でなされますので、損害賠償請求の前提として、投稿者を特定しなければなりません。個人でサイト管理者に直接請求しても情報の開示には応じてもらえないことが多いため、弁護士に依頼して、投稿者の特定を求めるため「発信者情報開示請求」を行います

    ③ 刑事告訴
    誹謗中傷の投稿が名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪、業務妨害罪などの犯罪に該当する場合は、刑事告訴を行うことができます。

    美容医療クリニックが誹謗中傷の投稿に対して厳格な対応をするという姿勢を示すことで、今後同様の誹謗中傷の投稿がなされるのを抑止する効果も期待できます。

    なお、名誉毀損や侮辱罪は、親告罪とされています。したがって、被害者による告訴がなければ加害者に刑罰を科すことができませんそのため、投稿者への刑事処罰を希望するなら刑事告訴が必要です

  3. (3)口コミが名誉毀損にあたると判断された裁判例|東京地裁令和元年12月3日判決

    【事案の概要】
    口コミを投稿・閲覧できるサイトに、以下のような誹謗中傷の投稿がなされたため、被害を受けた医療法人が投稿者の特定を求めて、発信者情報開示請求をした事案です

    • タオルの交換は週1度
    • vio使用した機械は市販の除菌シートで拭くだけです
    • トラブル時は対応してもらえません
    • あと1回残ってますが、恐らくほぼ効果なしかと思われます


    【裁判所の判断】
    裁判所は、各投稿の内容及びタイトルにより医療法人が不衛生な対応をしている、トラブルが生じた際に対応しない、脱毛の施術にまったく効果がないとの印象を与えるものであることから、名誉が毀損されたと認められるとして、発信者情報開示請求を認容しました。

  4. (4)名誉毀損にあたらないと判断された裁判例|東京地裁令和5年11月9日判決

    【事案の概要】
    口コミを投稿・閲覧できるサイトに、以下のような誹謗中傷の投稿がなされたため、被害を受けた医療法人が投稿者の特定を求めて、発信者情報開示命令を申立てました

    • 患者に対して15気圧くらいの高圧的な態度しか取れない時代錯誤の昭和な医院
    • こんな医院なもんだから長年染まったスタッフまでもが横柄でしかも手際が悪い
    • そうそう、ここは眼科。公正なまなこで評価しよう。点眼薬選択のセンスは並。
    • これから何も知らずに来院された患者さんが不幸。
    • さて蓼食う虫も好き好き。それでもここを選びますか。おらヤダ


    裁判所は、発信者情報開示命令の申立てを却下したため、原告が異議の訴えを提起したのが本件事案です。

    【裁判所の判断】
    裁判所は、口コミサイトの性質上、肯定的な意見・感想だけではなく、否定的な意見・感想が書き込まれることも当然想定されていることから、書き込みが社会通念上許容される範囲内にとどまる限りは、意見論評として受忍すべきであるとの判断枠組みを示しました。
    そのうえで、本件各投稿は、表現は過剰であるもののその前提となる具体的な事実には触れられていないこと、本件投稿が誇張されており、本件投稿を見た一般の閲覧者が投稿内容をそのまま受け取るとはいいがたいことから、意見論評の域を逸脱しているとはいえず、原告の名誉を毀損するものと認められないと判断しました。

3、サイト別口コミ削除依頼方法

美容医療クリニックに対する口コミは、さまざまな媒体に掲載されます。以下では、サイト別に誹謗中傷の口コミの削除依頼方法を説明します。

  1. (1)Googleマップ(ビジネスプロフィール)

    Googleマップの口コミは、Googleビジネスプロフィールの管理画面から口コミの削除申請を行い、Googleが不適切な投稿であると判断した場合に削除してもらうことができます。

    削除の対象となるのは、Googleの削除ポリシーに違反する以下のような口コミです。

    • スパム、虚偽の口コミ
    • お店との関連性がない口コミ
    • いじめ、嫌がらせの口コミ
    • 個人情報を含む口コミ
    • 冒涜的な表現のある口コミ
    • 差別的表現のある口コミ
    • 役に立たない口コミ
    • 利害に関する口コミ


    なお、美容医療クリニックにとって都合の悪い口コミであっても、Googleの削除ポリシーに違反していない限りは、削除に応じてもらうのは難しいでしょう

  2. (2)XやInstagramなどのSNS

    XやInstagram(以下インスタ)などのSNSで誹謗中傷の口コミが投稿された場合、コンテンツ提供事業者に対して削除請求を行うことができます。

    たとえば、Xの投稿であれば、違反の報告をしたいポストの上部にあるメニューアイコンを選択します。そして[報告]を選択し、問題の種類を選んで削除依頼を行います。
    また、インスタであれば、削除依頼をしたい投稿を開き、投稿の右上にある[・・・]をタップします。そして、「不適切である」を選択し、報告する理由を選んで削除依頼を行います。

  3. (3)5ちゃんねる(2ちゃんねる)などの匿名掲示板

    5ちゃんねるで誹謗中傷の投稿があった場合には、公開スレッドの専用フォームを利用する方法と運営側にメールを送る方法の2つの削除依頼の方法があります。

    メールによる削除依頼の方法では、法的問題点の指摘が必要になり、本人確認のための身分証明書類の提出が求められます。また、専用フォームを利用する方法だと、削除依頼の内容が公開されてしまいますので、それによる二次被害のリスクがあることに注意が必要です。そのため、経営者やスタッフ個人が自ら行うのではなく弁護士に対応を依頼するケースは少なくありません。

  4. (4)美容医療の口コミ広場などのポータルサイト

    美容医療の口コミ広場に誹謗中傷の口コミが書き込まれた場合、サイト運営会社に対して削除依頼をすることができます。

    美容医療の口コミ広場では、専用の削除申請フォームが用意されていますので、そこに必要事項を記入し、送信すれば削除依頼は完了です。美容医療の口コミ広場の利用規約では、誹謗中傷が禁止事項として定められていますので、誹謗中傷の口コミであれば削除に応じてもらえる可能性があります。

4、誹謗中傷対策を弁護士に依頼するメリット

誹謗中傷対策を弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。

  1. (1)法的対応の可否が判断できる

    美容医療クリニックに不都合な口コミがあったとしても、そのすべてが削除の対象になるわけではありません。削除の対象になるのは、法的な権利侵害が認められるものに限られます。したがって、削除の可否を判断するには専門家である弁護士のアドバイスが不可欠です

    また、誹謗中傷の投稿に対しては、削除請求以外にも発信者情報開示請求、損害賠償請求、刑事告訴などの対応が必要になるケースがあります。誹謗中傷の被害を受けた美容医療クリニックとして適切な対応をするためにも、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

  2. (2)削除依頼から裁判まで対応を任せられる

    誹謗中傷の投稿がなされた場合、そのまま放置していると集客や売り上げの減少といったリスクが生じます。したがって、迅速に削除請求を行う必要があることは間違いありません。また、損害賠償請求を行うこととした場合は投稿者を特定するために発信者情報開示請求を行うことになりますが、これもログの保存期間がありますので、迅速な対応が必須です。

    インターネット上のトラブルに詳しい弁護士であれば、サイトごとの削除請求の方法や発信者情報開示請求の手続きを熟知していますので、迅速に対応することが可能です。

    弁護士に依頼することで削除依頼から裁判まですべての対応を任せられますので、手続き的な負担はほとんどありません。

  3. (3)信頼回復に向けた対策をアドバイスできる

    悪質な誹謗中傷の口コミがあった場合、新規利用者の減少を招くおそれがありますので、信頼回復に向けた対策が重要になります。

    弁護士に相談をすれば、プレスリリースなど信頼回復に向けた対策をアドバイスすることができますので、誹謗中傷の口コミにより失われた信頼を速やかに回復することができるでしょう。

5、まとめ

美容医療クリニックでは、Googleマップ、SNS、ポータルサイトなどの口コミが集客にとって重要な要素となります。そのため、誹謗中傷の口コミが投稿されてしまうと、顧客の減少などのリスクが生じてしまいます。迅速に削除請求などに対応していかなければなりません。

このような場合、一般の方では迅速な対応が困難ですので、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。誹謗中傷の口コミでお困りの美容医療クリニック、美容外科クリニック、医療機関の関係者の方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。削除依頼や投稿者の特定についての知見が豊富な弁護士が対応します。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。
誹謗中傷や風評被害などのインターネットトラブルでお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

※記事は公開日時点(2025年05月19日)の法律をもとに執筆しています

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