弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 発信者情報開示請求
    法人
    2025年09月18日更新
    開示請求の期間はどのくらい? 会社を誹謗中傷された際の対応を解説

    開示請求の期間はどのくらい? 会社を誹謗中傷された際の対応を解説

    自社に対する誹謗中傷の投稿やコメントを見つけてしまったら、「すぐに投稿者を特定して対応したい」と思うのは当然のことです。しかし、SNSやネット掲示板での誹謗中傷は、匿名で投稿されますので、投稿者を特定するには、発信者情報開示請求または発信者情報開示命令の手続きを行わなければなりません。

    これらの手続きにより投稿者を特定するには一定の期間を要しますので、誹謗中傷の投稿を見つけたときは早めに行動することが大切です。

    今回は、誹謗中傷に悩む企業の担当者向けに、開示請求の流れや必要な期間、注意すべき時効や実務対応などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、開示請求にかかる期間はどのくらい?

開示請求とは、正式には発信者情報開示請求と言い、インターネット上で誹謗中傷や名誉毀損などの被害を受けた際に、サイト管理者やプロバイダに対して、投稿者の情報(IPアドレス、氏名・住所など)の開示を求める手続きです。

令和4年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行され、従来の方法とは少し違った開示請求もできるようになりました。現在、開示請求には、以下の2つの方法があり、事情に合わせてどちらの手続きを取るか選べるようになりました。

  • 従来型の発信者情報開示請求の手続き
  • 新しい発信者情報開示命令の手続き


フロー図

① 従来型の発信者情報開示請求
従来型の発信者情報開示請求は、以下の2段階の手続きにより投稿者を特定します。

  • サイト管理者に対する発信者情報開示の仮処分(IPアドレスやタイムスタンプなどの開示を求める手続き)
  • プロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟(発信者の住所や氏名などの開示を求める手続き)

仮処分によりIPアドレスなどの開示がされるまでには約1~2か月、訴訟により発信者の住所・氏名が開示されるまでには約3~6か月の期間がかかります
そのため、従来型の発信者情報開示請求を利用する場合は 、約4~8か月の期間がかかると考えておきましょう

② 新しい発信者情報開示命令
新しい発信者情報開示命令は、従来複数回に分けて行わなければならなかった発信者情報開示請求の手続きを、以下の3つの命令を通じて1回の手続きで完結することができるようになりました。

  • サイト運営者およびプロバイダに対する発信者情報の開示命令(開示命令)
  • サイト運営者に対して、プロバイダへログを提供するよう命じる命令(提供命令)
  • サイト運営者とプロバイダ双方に対して、ログの削除を禁じる命令(消去禁止命令)

これにより期間を大幅に短縮することができ、発信者の投稿をするまでにかかる期間は、約3~4か月が目安となります

このような開示請求の手続きが完了して、初めて投稿者の身元が判明します。この段階で、ようやく2章で説明するような損害賠償請求や刑事告訴といった法的責任を問うことが可能となります

2、時効に注意! 開示請求が成功した後は民事・刑事の責任を早めに問おう

開示請求により投稿者の身元が判明すれば、いよいよ法的責任を追及する段階に入ります。誹謗中傷の内容によっては、以下のような刑事告訴や損害賠償請求といった法的手段により責任追及ができるようになります。

  1. (1)企業が誹謗中傷を受けたときに生じる悪影響

    会社に対する誹謗中傷は、単なる会社の名誉の問題にとどまらず、経営や業務の根幹を揺るがす深刻な影響を与えかねません。

    具体的には、誹謗中傷によって以下のような事態が生じる可能性があります。

    • SNSで「ブラック企業」などと書かれ、採用応募が激減
    • 根拠のないうわさが広まり、売り上げが急激に落ち込む
    • 悪質な嫌がらせの電話やメールが相次ぎ、業務が中断
    • 社名や住所をさらされたことで、従業員が実際に危害を受けた

    このような被害は、企業の信用と経済的損失の双方に関わる重大な問題です。投稿者が特定できた場合は、その責任を刑事・民事の両面から厳しく追及することが、再発防止と企業イメージ回復の鍵となります。

  2. (2)刑事責任の追及|投稿者に対する刑事告訴とその期限

    誹謗中傷の内容が悪質であれば、刑事告訴することで投稿者を処罰してもらえる可能性があります。会社に対する誹謗中傷により成立する可能性のある犯罪としては、以下のようなものが挙げられます。


    該当する罪名 内容
    名誉毀損(きそん)罪 公然と事実を摘示して、人の社会的評価を低下させる行為
    侮辱罪 事実を摘示せずに、公然と人を侮辱する行為
    偽計業務妨害 虚偽の情報を流すまたは人をだますなどして他人の業務を妨害する行為
    威力業務妨害罪 暴行または脅迫を用いて人の業務を妨害する行為
    信用毀損(きそん)罪 虚偽の情報を流すまたは人をだますなどして他人の経済的な信用を傷つける行為

    刑事告訴を行うには、公訴時効の期間内に手続きを行う必要があります。刑法改正により、現在はこれらの罪の公訴時効は、いずれも3年となっております。

    また、上記の内、名誉毀損罪と侮辱罪は、「親告罪」といって、犯人を知ってから6か月以内に警察に告訴をしないと、刑法では裁けません(刑事訴訟法235条)。さらに、4章で解説しますが、投稿者の特定するのにも期限があるため、投稿者の処罰を望むなら、なるべく早めの対応が必要です

  3. (3)民事責任の追及|投稿者に対する損害賠償請求とその期限

    誹謗中傷の投稿により企業に損害が生じたときは、開示請求により特定した投稿者に対して損害賠償請求をすることができます。

    企業に対する誹謗中傷により生じる可能性のある損害には、以下のようなものが挙げられます。

    • 信用毀損による売上損失
    • 採用難による損失
    • 社内対応にかかったコスト
    • 弁護士費用
    • 慰謝料

    これらの請求を行うには、誹謗中傷の事実・損害の発生・因果関係の立証が必要になりますので、専門家である弁護士と協力しながら進めていきましょう。

    なお、民事上の損害賠償請求にも損害と加害者を知ってから3年という消滅時効がありますので、誹謗中傷の投稿に気づいたときは、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、開示請求の手続きを始めることが重要です。

3、開示請求できる期間は短い! 期間制限に注意

SNSやネット掲示板での誹謗中傷があった場合、開示請求の手続きにより投稿者を特定できますが、投稿から時間がたちすぎていると開示請求ができないおそれがあります。

なぜなら、プロバイダがIPアドレスに対応する契約者情報(アクセスログ)を保存している期間は、おおむね3か月程度とされているからです。この期間を過ぎると、開示請求をしても「保存期間経過につき開示不可」と回答されてしまい、投稿者の特定が事実上不可能になっていします。

つまり、誹謗中傷を発見したら、「内容を確認してから対応しよう」などと悠長に構えている時間はありません。できるだけ早く証拠を保全し、弁護士に相談することが重要です。

4、開示請求をご希望なら弁護士に相談を!

インターネット上での誹謗中傷に対応するには、迅速かつ的確な法的対応が不可欠です。しかし、開示請求や損害賠償請求といった手続きは、一般の企業担当者が独力で行うには非常にハードルが高く、時間を無駄にしてしまうリスクもあります。
弁護士であれば以下のような対応が可能ですので、開示請求をご希望であれば、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)投稿内容が法的に違法かどうか、適切に判断できる

    インターネット上の投稿がすべて違法とは限りません。名誉毀損や業務妨害に該当するかどうかは、法律に照らして確認することが必要です。

    弁護士であれば、投稿内容の違法性や開示請求が認められる見込みを専門的な視点から的確に判断し、不要な手続きを回避することができます

  2. (2)削除請求と開示請求を並行して進められる

    誹謗中傷の投稿が見つかった場合、投稿の削除だけではなく、投稿者の特定も行わなければなりません。

    弁護士に依頼すれば、削除請求と発信者情報開示請求を並行して進めることができます。
    これにより、「削除はされたが投稿者は不明のまま」などの中途半端な対応に終わらず、投稿者の責任追及まで見据えた対応が可能となります

  3. (3)開示後の交渉・訴訟までトータルで対応可能

    投稿者が特定された後は、損害賠償請求や謝罪要求などさらに具体的な交渉や訴訟手続きをしなければなりません。

    弁護士であれば、相手方との示談交渉や裁判対応まで一貫してサポート可能です。企業の代理人として、法的根拠に基づいた強い立場で対応できるため、相手方が応じる可能性が高くなります。

  4. (4)記者会見やマスコミ対応の助言も可能

    誹謗中傷の内容が深刻で、ネット上だけでなく報道機関にも取り上げられた場合、企業の信頼を回復するためには記者会見やメディア対応が必要になるケースもあります。
    このような場合でも、弁護士が企業の立場を守る適切なコメント内容の検討や対応方針のアドバイスを行うことができます
    不要な炎上リスクを避け、企業の信頼回復を実現するためにも、専門家である弁護士のアドバイスやサポートが不可欠です。

  5. (5)再発防止のための予防法務にも対応

    一度誹謗中傷の被害を受けた企業では、「次に備える」対策も必要です。
    弁護士であれば、以下のような予防的な法務支援も行うことができます。

    • 従業員向けのSNS利用研修
    • 誹謗中傷発生時の社内対応マニュアルの整備
    • 社内における風評被害対応体制の構築支援

    企業の危機管理体制を強化することで、二次被害・再発の防止にもつながりますので、将来の被害防止のためにも弁護士への相談を検討しましょう。

5、まとめ

開示請求にかかる期間は、従来型の発信者情報開示請求で約4~8か月、新たな発信者情報開示命令で3~4か月程度が目安です。一方、プロバイダから情報が削除されてしまう期間がおおよそ3か月であるため、誹謗中傷に気が付いたらすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

ベリーベスト法律事務所では、初回相談60分無料ですので、企業の信用を守るためにも、お早めにお問い合わせください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2025年09月18日)の法律をもとに執筆しています

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