弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 発信者情報開示請求
    法人
    2025年10月22日更新
    発信者情報開示請求ができない内容はある? 請求要件も弁護士が解説

    発信者情報開示請求ができない内容はある? 請求要件も弁護士が解説

    インターネット上で誹謗中傷を受けたら、サイト管理者やインターネット接続業者などのプロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、投稿者の個人情報の開示を求めることができます。

    ただし、プロバイダは発信者情報の開示を拒否することもあります。その際は裁判所へ手続きを行い、改めて開示請求をすることになりますが、内容によっては請求が棄却されるため注意が必要です。

    本記事では、インターネット上の投稿について発信者情報開示請求ができるかどうかの判断基準などについて、具体例を示しながらベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、発信者情報開示請求とは?

「発信者情報開示請求」とは、インターネット上の発信(投稿など)によって権利侵害を受けた被害者が、発信者(投稿者)の個人情報の開示を求める手続きです。

誹謗中傷などの権利侵害を受けた場合、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます。しかし、インターネットの投稿の大部分は匿名で行われているため、公開されている情報のみでは、加害者が誰であるのか分からないことも少なくありません。当然ながら、加害者が不明の状態では、損害賠償請求をすることもできません。

そこで、情報流通プラットフォーム対処法(旧:プロバイダ責任制限法)は、インターネット上における誹謗中傷について、被害者が発信者情報開示請求を行うことを認めています。

誹謗中傷などが投稿されたSNSや匿名掲示板のサイト管理者、投稿者が用いた端末のインターネット接続業者は、投稿者の個人情報を保有していることがあります。被害者は、「プロバイダ」と呼ばれるサイト管理者やインターネット接続業者に対して、発信者情報開示請求を行うことが可能です。
発信者情報開示請求が認められれば、プロバイダから投稿者の個人情報が開示されるので、投稿者に対する損害賠償請求ができるようになります。

インターネット上で誹謗中傷を受けたときは、まず、発信者情報開示請求によって投稿者を特定しましょう

2、誹謗中傷について発信者情報開示請求は可能? できる内容・できない内容を紹介

誹謗中傷をした投稿者の個人情報開示を受けるためには、発信者情報開示請求に関する法律上の要件を満たしていなければなりません。投稿の内容によっては、請求が認められないこともあるので注意が必要です

以下では、発信者情報開示請求の要件と、開示が認められる投稿・認められない投稿の具体例について解説します。

  1. (1)誹謗中傷に関する発信者情報開示請求の要件

    発信者情報開示請求が認められるためには、少なくとも以下の2つの要件を満たしている必要があります。


    発信者情報開示請求の要件
    • ① 対象となる投稿によって、開示請求者の権利が侵害されたことが明らかであること
    • ② 損害賠償請求を行うために必要であるなど、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること

    対象となる投稿について、上記①の権利侵害の要件により、不法行為が成立するかどうかが判断されます。インターネット上の投稿について不法行為が成立するのは、以下の要件をすべて満たす場合です。


    インターネット上の投稿について、不法行為が成立するための要件
    (a)投稿によって、被害者の権利が侵害され、損害が生じたこと
    ※名誉権を侵害されて社会的評価が低下した、プライバシー、肖像権、名誉感情などを侵害されたことにより精神的ショックを受けたなど

    (b)違法性阻却事由に該当しないこと
    ※以下の要件をすべて満たす場合は、「公共の利害に関する場合の特例」(刑法第230条の2)によって違法性が阻却されます。
    ・投稿の内容が公共の利害に関する事実に係ること
    ・投稿の目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
    ・投稿において摘示した事実が真実であることの証明があったこと

    (c)投稿者に故意または過失があること

    (d)同定可能性があること
    ※投稿内容から被害者が第三者によって特定できる(同定可能)必要があります。
  2. (2)発信者情報開示請求ができる投稿の例

    たとえば以下のような投稿については、発信者情報開示請求が認められる可能性が高いと考えられます。これらの投稿には、いずれも不法行為が成立するためです。

    • 過去の異性との交際関係を勝手に暴露され、精神的苦痛を受けた。
    • 住所を勝手に公開された結果、見ず知らずの人が自宅を訪問してくるようになり、精神的苦痛を受けた。
    • 容姿をひどい言葉で罵られ、精神的苦痛を受けた。
    • パワハラをしていると事実無根の批判を受け、社会的評価が低下した。
    など
  3. (3)発信者情報開示請求ができない投稿の例

    一方で、以下のような投稿については、発信者情報開示請求は認められないと考えられます。理由も解説しましょう。

    ・ケース① すでに公開されている自分の経歴が、他人によってインターネット上に投稿された。
    すでに公開されている経歴が改めて投稿されたとしても、その投稿によって対象者の社会的評価には影響を与えないのが通常です。ほかに誹謗中傷に相当する内容が含まれていない限り、不法行為が成立する可能性は低いでしょう。

    ・ケース② 自分が表明した政治的意見に対して、真実である事実に基づく批判を受けた。
    政治的意見に対する批判や論評については、真実である事実に基づいている場合は「公共の利害に関する場合の特例」によって違法性が阻却されるため、不法行為が成立しません。

    ・ケース③ 政治家が、自身の犯罪歴について批判を受けた。
    政治家は公職者であるため、政治家に犯罪歴があるかどうかは公共の利害に関する事実に該当し、その事実を指摘して批判することには公益目的が認められるのが通常です。
    したがって、指摘された過去の犯罪歴が真実であれば、「公共の利害に関する場合の特例」によって違法性が阻却されるため、不法行為が成立しません。


    ご自身の受けた投稿について、発信者情報開示請求ができる内容かどうかわからない場合は、弁護士に相談して判断してもらうようにしましょう。

3、発信者情報開示請求の流れと注意点

誹謗中傷について発信者情報開示請求を行う際の手続きの流れと、開示請求者が注意すべきことを解説します。

  1. (1)発信者情報開示請求の流れ

    以下では発信者情報開示請求を行うまでの簡単な流れを紹介します。

    ① サイト管理者に対する連絡、交渉
    誹謗中傷が投稿されたウェブサイトの管理者に対して、メールや問い合わせフォームなどから連絡し、発信者情報を任意に開示するよう交渉します。その際、該当の投稿をスクリーンショットなどして添付をすることで、スムーズにやり取りができるでしょう。

    ② 裁判所に対する申立て
    先述のとおり、発信者情報の任意の開示は拒否されることも少なくありません。その際は、裁判所に対して仮処分または発信者情報開示命令を申し立てます。
    サイト管理者が投稿者を特定し得る情報を保有していない可能性がある場合には、誹謗中傷の投稿に用いられた端末のインターネット接続業者に対しても発信者情報の開示を請求することを検討します。

    ③ 裁判所の決定、発信者情報の開示
    裁判所が発信者情報開示請求の要件を満たしていると判断した場合は、サイト管理者またはインターネット接続業者に対して、発信者情報の開示を命じる決定を行います。
    裁判所の決定をもって、改めてサイト管理者やインターネット接続業者に対して開示を請求すると、発信者情報を開示してもらえます。


    なお、発信者情報開示請求は自力で行うこともできますが、提出書類が多いなど、手続きが複雑なので迅速な解決、そして何よりも精神的な負担を軽減するためには、専門家である弁護士に依頼することが賢明な選択と言えるでしょう

  2. (2)発信者情報開示請求を行う際の注意点

    発信者情報開示請求を行う際には、先述の手続きの流れを知っておくだけではなく、なるべく早く請求を行うように気を付けましょう。

    サイト管理者は、誹謗中傷の投稿に関連するIPアドレスを保存していますが、IPアドレスの保存期間は3か月から半年程度とそれほど長くありません
    IPアドレスが削除されてしまうと、投稿に用いられた端末の契約者をたどることができなくなります。そのため、サイト管理者が投稿者の氏名や住所などを保有していない限り、投稿者を特定することは難しくなってしまいます。

    誹謗中傷の投稿を見つけたら、速やかに発信者情報開示請求を行うことが大切です

4、発信者情報開示請求をしたいときは、弁護士に相談を

発信者情報開示請求により誹謗中傷の投稿者を特定したい方は、弁護士に相談することをおすすめします。
発信者情報開示請求について弁護士に相談することには、主に以下のメリットがあります。

  • ご自身が受けた投稿について、発信者情報開示請求できる要件を満たしているかどうか法的な観点からアドバイスができる
  • 複雑な発信者情報開示請求の手続きを代行できる
  • サイト管理者などとの交渉を任せられるため、精神的な負担を軽減できる
  • 投稿者を特定したのち、損害賠償請求の手続きも引き続き代行できる
  • 適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まる
など


発信者情報開示請求が認められ、発信者情報を開示してもらったら、投稿者へ損害賠償請求ができるようになります。弁護士に依頼すれば、引き続き損害賠償請求の手続きを任せることが可能です。法的な観点から交渉を行うため、適切な損害賠償を受け取れる可能性が高まるでしょう。

IPアドレスの保存期間は、先述のとおり3か月から半年程度ですインターネット上で誹謗中傷を受けて悩んでいる方は、お早めに弁護士へご相談ください

5、まとめ

インターネット上の投稿について発信者情報開示請求を行う前に、その投稿が不法行為に当たるかどうか確認が必要です。
客観的に見て損害が生じていない場合や、公共性・公益性を有する真実が投稿された場合などには、発信者情報開示請求が認められないこともあり得るので注意しましょう。

誹謗中傷を受けていると感じていて、発信者情報開示請求ができるかどうかを知りたい方は、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。法律上の要件に照らして、開示請求が認められる見込みや、整えるべき準備などをアドバイス可能です。

正式にご依頼いただければ、発信者情報開示請求のほか、損害賠償請求の手続きを全面的に代行いたします。早期に対応を始めることが重要なので、できる限り早い段階でベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2025年10月22日)の法律をもとに執筆しています

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