弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 発信者情報開示請求
    法人
    2025年11月13日更新
    配信の荒らし行為が止まらない! 威力業務妨害で訴えることは可能?

    配信の荒らし行為が止まらない! 威力業務妨害で訴えることは可能?

    動画配信が広く普及するなか、配信中の「荒らし行為」に悩まされている配信者や運営会社も少なくありません。視聴者に対する誹謗中傷コメント、配信妨害を目的としたスパム投稿などは、単なる迷惑行為にとどまらず、刑事罰の対象になることもあります。

    特に、配信者の活動を妨害する目的でしつこい荒らしが行われている場合、「威力業務妨害罪」や「偽計業務妨害罪」が成立する可能性もあります。

    今回は、荒らし行為に対して法的措置を検討している運営者向けに、法的措置を取るための準備や刑事・民事で訴える場合の流れなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
誹謗中傷風評被害 でお悩みの法人様
  • Googleマップのネガティブ投稿
    Google口コミの
    ネガティブ投稿
  • SNSでの誹謗中傷
    SNSでの
    誹謗中傷
  • 口コミサイトのネガティブ投稿
    口コミサイトの
    ネガティブ投稿
誹謗中傷対策は早めが肝心!
弁護士
にご相談ください

お問い合わせに費用は発生しません。
安心してご連絡ください。

法人様用のご案内ページはこちら

1、威力業務妨害とは何か

配信中に繰り返される悪質な荒らし行為があった場合、加害者を「威力業務妨害」または「偽計業務妨害」で訴えることができます。以下では、それぞれの罪の定義と問題となる荒らし行為の例を説明します。

  1. (1)威力業務妨害とは何か

    威力業務妨害罪とは、威力を用いて他人の業務を妨害したときに成立する犯罪です(刑法234条)。ここでいう「威力」には、暴行・脅迫だけではなく、言葉や行動によって相手に精神的な圧力を与える行為も含まれます。

    たとえば、配信に関連して以下のような荒らし行為があった場合、「威力業務妨害」に該当する可能性があります

    • 配信中のコメント欄に「お前の住所をさらすぞ」「家族を巻き込む」などの脅迫的な書き込みを繰り返す
    • ボイスチャット機能を用いて、大音量のノイズや怒鳴り声を流し続ける
    • 他の視聴者を扇動し、集団で悪意あるコメントを投稿させる
    • 「今から通報するから配信やめろ」などの威嚇をして配信者に恐怖を与える


    このような荒らし行為があり、配信を中断せざるを得ない状況に追い込まれた場合には、威力業務妨害罪として刑事告訴ができます。
    なお、威力業務妨害罪が成立すると、加害者は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます

  2. (2)偽計業務妨害とは何か

    偽計業務妨害罪とは、「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて」(刑法233条から抜粋)
    、人の業務を妨害したときに成立する犯罪です。ここでいう「偽計」とは、虚偽の情報を拡散したり、人をだましたりするなどの行為を指し、威力を使わずとも業務が妨害された場合に適用されるのが特徴です。

    たとえば、配信に関連して以下のような荒らし行為があった場合、偽計業務妨害と認定される可能性があります

    • 「著作権侵害がある」と虚偽の通報を大量に行い、配信を停止させる
    • 別人になりすまして配信者のSNSやメールに嫌がらせの通報を行う
    • 偽物の契約書や請求書を送りつけ、配信者やその運営を混乱させる
    • 特定の配信に対して大量の「通報」を扇動し、システム上の制限を引き起こす
    • イベント開催日に爆破予告をする


    荒らしが「威力」を用いるか「偽計」を用いるかにより、適用される罪名は異なりますが、いずれにしても業務に重大な支障を与えていれば、刑事事件として立件される可能性があるという点では共通しています。

    なお、偽計業務妨害罪が成立すると3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます

2、荒らし行為に対しての法的措置を取る準備

荒らし行為を発見した場合には、加害者に対する法的措置を検討しましょう。荒らし行為は匿名で行われる場合が多いため、まずは加害者の身元を調べる必要があります。以下では、荒らし行為に対して法的措置を取るための準備事項を説明します。

  1. (1)証拠を押さえる

    荒らし行為に対する法的措置を検討するうえで、もっとも重要なのが証拠の確保です。以下のような証拠をスクリーンショットや録画などで保存しておきましょう

    • 問題となるコメントの全文と投稿時間、投稿者ID
    • コメントが原因で配信を中断・停止した記録(動画の切断ログなど)
    • 他の視聴者からの「怖かった」「見るのをやめた」などの反応
    • コメント欄全体の雰囲気(連投や暴言が多発している様子など)


    証拠は、後に発信者情報開示請求や損害賠償請求をする際に必要になります。荒らし行為のスクショだけでなく、その前後の状況も記録しておくと説得力が増します。

  2. (2)弁護士に相談する

    証拠を集めたら、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、荒らし行為に対してどのような法規措置を取ることができるのかについて、専門的な見地から判断できます。

    特に、発信者情報開示請求や損害賠償請求を検討している場合は、迅速な対応が必要になるため、初期段階から弁護士に相談するのがおすすめです。

  3. (3)投稿の削除を求める

    荒らしコメントや誹謗中傷が発生した場合、配信プラットフォームに対して該当する投稿の削除を申請しましょう。YouTubeやTwitchなど、多くの配信サービスには利用規約に反する投稿を報告・削除できる機能が備わっています。

    たとえば、YouTubeの場合、「報告」ボタンから「嫌がらせやいじめ」を選択すれば、運営側が審査を行い、基準に反すると判断された場合はコメント削除やアカウント停止などの措置が取られます。

    削除依頼は一次的な対処ですが、被害の拡大を防ぐ効果があり、法的措置を取る前の対応としては有効です。

    ただし、刑事告訴したい場合には、証拠を残しておかないと警察の捜査の支障になる場合があります。その点は頭に置いておき、いつ削除を求めるべきか弁護士に相談するのがおすすめです。

  4. (4)荒らし行為をした者を特定する

    荒らし行為をした人物を特定するためには、「発信者情報開示請求」という手続きが必要になります。これは、匿名で荒らし行為をした人の住所や氏名を明らかにできる手続きです。

    ただし、プロバイダが有するアクセスログの保存期間は、3~6か月程度ですので、発信者情報開示請求を検討しているのなら、早めに行動することが大切です

  5. (5)荒らし行為に対する法的措置を検討する際の注意点

    荒らし行為は、配信者や運営にとってストレスがかかるものではありますが、すべての荒らし行為に対して、開示請求や損害賠償請求が認められる、というわけではありません。

    荒らし行為があったとしても以下のようなケースでは、開示請求が認められない可能性があります。

    • 単なる批判的意見やネガティブな感想の投稿
    • 軽微な投稿(1回の悪口など)で違法性が低いケース
    • 投稿がすでに削除されていてデータがないケース

3、特定後は刑事でも民事でも訴えることができる

発信者情報開示請求により荒らし行為をした人物を特定できた場合、刑事告訴による刑事責任の追及や損害賠償請求による民事責任の追及といったことが可能です
以下では、それぞれの手続きの流れや特徴などを説明します。

  1. (1)刑事事件として訴えたいときの手続きの流れ

    荒らし行為が犯罪にあたる場合、刑事告訴をすることで荒らし行為をした人物を処罰してもらえる可能性があります。その場合の手続きの基本的な流れは、以下のとおりです。

    • ① 弁護士と相談のうえ、証拠や被害状況を整理
    • ② 最寄りの警察署に「被害届」や「告訴状」を提出
    • ③ 警察が捜査を開始する
    • ④ 加害者への任意の事情聴取または逮捕がなされる
    • ⑤ 起訴されれば裁判が行われ、有罪となれば刑罰が科される


    刑事事件として扱われるには、荒らし行為が、刑法上の「威力業務妨害罪」「偽計業務妨害罪」「名誉毀損(きそん)罪」「脅迫罪」であると認められる条件を満たす必要があります。

    また、実際に被害届を受理してもらえるかどうかは、警察の判断に左右される部分もあるため、事前に弁護士に相談しておくことが非常に重要です。

    なお、動画配信に対する荒らし行為に対して刑事告訴をするという厳しい姿勢を示すことができれば、荒らし行為を抑止する効果も期待できます。

  2. (2)民事事件として訴えたいときの手続きの流れ

    荒らし行為により配信者や運営会社に損害が生じたときは、荒らし行為をした人物に対して損害賠償請求を行うことができます。その場合の手続きの基本的な流れは、以下のとおりです。

    • ① 弁護士が、内容証明郵便で損害賠償の支払いを求める通知書を送付
    • ② 相手が応じない場合、裁判所に損害賠償請求をする訴訟を提起
    • ③ 証拠資料をもとに裁判期日に主張・立証を行う
    • ④ 荒らし行為の違法性が認められれば、支払いを命じる判決が言い渡される
    • ⑤ 任意の支払いに応じないときは、強制執行を申し立てて財産を差し押さえる


    民事事件では、弁護士が介入することで訴訟まですることなく、交渉で解決できる可能性が高くなります。早期解決を希望するなら、自分で交渉するのではなく弁護士に示談交渉を任せるのがおすすめです

4、配信者を守るための法的措置は弁護士におまかせを

荒らし行為がエスカレートし、業務や精神面にまで深刻な影響が出ている場合、自社での対応には限界があるでしょう。以下では、弁護士に依頼するメリットや顧問契約によって得られる継続的なサポートについて説明します。

  1. (1)複雑な発信者情報開示請求の手続きも迅速かつ適切に対応できる

    荒らし行為の加害者を特定するには、発信者情報開示請求という法的手続きを行う必要があります。この手続きには複数のステップと法的要件があり、専門知識なしに進めるのは非常に困難です

    また、開示請求は、アクセスログの保存期間(3~6か月)という期間制限があるため、迅速な対応が求められます。

    弁護士に任せることで、迅速な対応が可能となり、証拠の整理や申立書の作成、裁判所とのやりとりも一括して対応してもらえるため、依頼者の負担を大きく軽減できます。

  2. (2)弁護士に任せれば相手方との交渉負担も軽減される

    荒らし行為をした加害者との交渉を自ら行うのは、精神的にも時間的にも非常に負担が大きいものです。相手が逆上してさらなる嫌がらせを仕掛けてくる危険もあります。

    弁護士が代理人として交渉することで、依頼者は直接のやりとりを回避できます。内容証明郵便の送付や示談交渉、損害賠償の請求まで代理してもらえるため、配信者や運営会社は本来の業務に集中することが可能です。

    また、弁護士が介入することで、加害者に対してプレッシャーを与えることができ、早期に示談がまとまるケースも少なくありません

  3. (3)顧問契約で配信に必要な法務体制を整えられる

    動画配信者事業を継続するなら、荒らし行為はいつ起きても不思議ではありません。また、事業継続や拡大にあたっては法律や契約の知識が必要になる場面が増えてくるでしょう。未来を見据えて、法律事務所との顧問契約を結んでおけば、配信に関する法務体制を整えることができます

    顧問契約のメリットには、以下のような点があります。

    • 荒らし行為への即時対応(削除請求・発信者開示請求など)
    • 配信者との業務委託契約や出演契約書のチェック
    • コラボ企画・イベント出演に関する契約書の作成・審査
    • グッズ制作・販売における著作権・商標の管理


    配信ビジネスが成長するほど、外部との契約や法的リスクは複雑化していきます。顧問弁護士がいれば、法的な相談を気軽に行うことができ、万が一トラブルが発生した場合もスムーズな対応が可能となります。

5、まとめ

荒らし行為が度を超えた場合、それは「威力業務妨害」や「偽計業務妨害」として刑事・民事上の責任を問うことが可能です。しかし、そのためには投稿者を特定しなければなりません。特定のためには、発信者情報開示請求という手続きを取ることが必要ですが、ログの保存期間である3~6か月以内に行わなければなりません。また、証拠の保存や手続きには専門的な知識が求められるため、早めに弁護士へ相談することが重要です

ベリーベスト法律事務所では、初回60分の無料相談を実施しています。荒らし行為でお悩みの企業さまは、ぜひお早めにご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。
誹謗中傷や風評被害などのインターネットトラブルでお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

※記事は公開日時点(2025年11月13日)の法律をもとに執筆しています

同じジャンルのコラム【法人】発信者情報開示請求

弁護士Youtuber × 削除請求チーム 誹謗中傷の削除請求について動画で解説! どっちに頼めばいいの 削除代行業者と弁護士の違い 用語集 削除請求の知識を学ぼう
初回相談料 60分無料
通話無料/平日9:30〜18:00
0120-830-036