弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • SNSサイト
    個人
    2021年09月28日更新
    SNSで誹謗中傷された! 法的に可能な対策と泣き寝入りせず訴える方法

    SNSで誹謗中傷された! 法的に可能な対策と泣き寝入りせず訴える方法

    「SNSにおける誹謗中傷」は社会問題化しています。著名人に限らず、一般の社会においても、誹謗中傷が原因で自殺を決意してしまうケースや、社会復帰が難しくなるほど心に深い傷を負うといったケースが、数多く存在していると言われています。

    「何としてでも投稿者を特定して責任を追及したい」と強く決意しながらも、どうすればよいのかわからず泣き寝入りをしてしまったという例は数え切れないでしょう。

    本コラムでは、SNSにおける誹謗中傷について、法律上の位置づけから法的に可能な対策、適切な相談先、さらには訴える方法について、SNSトラブルへの対応経験が豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、知っているようで知らない? SNSとは

総務省が公開している令和3年版の「情報通信白書」によると、全年代のSNS利用率は73.8%に達しました。年代によって利用率は異なりますが、日本ではSNSを使っていない方のほうが少ないと言えるでしょう。
中には、必要に迫られて使い始めたものの、SNSとは何かということをご存じない方もいるようです。ここでは、まず「SNSとは何か?」という基本について確認しておきましょう。

  1. (1)SNSとは?

    SNSとは「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service)」の頭文字をとった略語です。
    一定の利用者登録を経ることで利用可能となり、登録した会員同士が交流できるウェブサイトの会員制サービスと定義されています。

    代表的なものとしてはFacebook(フェイスブック)・Twitter(ツイッター)・Instagram(インスタグラム)などが挙げられるでしょう。
    また、「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によって利用率が90%を超えたことが明らかになったLINE(ライン)も、実はSNSのひとつと位置づけられています。
    豊富な動画が閲覧できるYouTube(ユーチューブ)も、動画共有型のSNSです。

    SNSの多くは、ユーザー個人のホームページとしてホーム・トップが存在し、ほかのユーザーの投稿が自動的に抽出表示されるタイムライン機能が備わっています。
    インターネット上の交流によって「人と人とのつながり」を深めていくのがSNSの特徴です。

    この点に注目すると、ユーザー登録がない匿名のインターネット掲示板や開設者のホームページを中心にアクセスする個人のブログサービスとは、全く別のものだと言えるでしょう。

  2. (2)SNSをやめられない事情

    SNSが全年代に広く浸透しているひとつの背景として、企業や団体がSNSを活用しているという面が挙げられます。
    たとえば「イベントの詳細はSNSで」、「フォロワー限定プレゼント」といった告知を受けてSNSを利用し始めたという方も多いはずです。
    また、講義の休講をSNSで知らせるといった利用法をとる大学なども存在しています。そのほか、SNSの連絡先しか知らないというケースも少なくないのではないでしょうか。

    SNSの利用には、誹謗中傷だけでなく、閲覧者を不快にさせる投稿や学校のクラスや会社などの組織内のいじめ・仲間はずれの誘発など多くの問題点がみられます。
    ところがSNSの利用を「やめたい」と感じても、すでにSNSが情報収集や連絡のツールとして広く浸透しているため、「やめたくてもやめられない」という事情を抱えているという現実があるのです。

2、SNSで誹謗中傷を受けたときの対処法

SNSで根拠のない悪口によって精神的に傷つけられている方は「誹謗中傷の被害に遭っている」と言える状態です。
心ない誹謗中傷には、どのように対処すればよいのでしょうか?

  1. (1)誹謗中傷の書き込み

    誹謗中傷の書き込み・投稿を受ければ「やめてほしい」、「事実と違う」と憤りを覚えるのが当然です。
    しかし、不用意に反応してしまうと、加害者に面白おかしく取り上げられてしまい被害がより深刻化するおそれがあります。
    タイムライン上で「やめてほしい」と返信すれば、無関係なユーザーまでもが入り乱れて攻撃を受けてしまうことがあるほか、ダイレクトメッセージ(DM)など第三者から見られない方法で応戦してもやり取りをスクリーンショットで撮影するなどして公開されてしまうリスクがあるのです。

    そのため、誹謗中傷の書き込みや投稿へ直接返信(リプライ)したり、投稿者と直接連絡をとったりすることは避けて、運営者に削除請求を申請しましょう。
    各SNSには利用規約が定められており、ほとんどのSNSで誹謗中傷や個人情報の公開などが禁止されています。規約違反を理由に削除請求を申請すれば、運営者の権限で削除される可能性があるので、ヘルプページなどを、まずは確認してみてください。

  2. (2)「捨て垢」からの誹謗中傷

    SNSにおける誹謗中傷では「捨て垢」が利用されることがあります。
    「捨て垢」とは「捨てアカウント」の通称で、アカウントの放棄・削除や運営者により凍結されることを前提に利用されるアカウントです。

    「捨て垢」の場合、アカウントを放棄することを前提としているので、ユーザー名などから個人が特定しにくい上に、都合が悪くなるとすぐに削除されるため足取りがつかみにくいという特徴があります。
    応戦しても、次から次に新しい「捨て垢」を作って誹謗中傷を繰り返すので、運営者に違反を報告して、投稿の削除とアカウントの停止・凍結を目指すのも有効ですが、根本的な解決にはつながらない場合も多いのが現実です。

3、誹謗中傷の被害はどこに相談すればいい?

SNSにおける誹謗中傷の被害を受けている方の多くが「誰にも言えない」と悩みをひとりで抱えてこんでしまいがちです。
被害からできるだけ早く抜け出すには、ITトラブルの対応経験が豊富な専門機関などに相談することをおすすめします。

  1. (1)警察への相談

    SNSにおける誹謗中傷は、法律に照らすと刑法の名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪にあたるケースが多くみられます。
    刑事事件として立件されれば、加害者の逮捕や刑罰が期待できます。

    ただし、警察はすべての誹謗中傷について事件化してくれるわけではないことを、あらかじめ理解しておく必要があります。
    事件化してもらえることを期待できるのは、「殺してやる」と脅されているなど、生命や身体への危険が及ぶ可能性が高いなどの緊急性が高いケースの場合です。もっとも、状況によっては警察に相談すれば動いてもらえることもありますので、一度相談してみるのもよいです。

  2. (2)対策(削除代行)業者への相談

    インターネットで「誹謗中傷 削除」といったキーワードを検索すると、誹謗中傷や風評被害の対策業者がヒットすることがあります。
    誹謗中傷にあたる投稿の削除や、その後の監視などを含めた総合的なサービスをうたっています。ただし、多くの業者が企業・法人が開設しているウェブサイトなどへの対策をメインにしており、付帯するサービスが豊富な分だけ費用も高額になってしまうというデメリットがあります。
    また、中には悪徳な業者や違法業者もいること、こういった業者の行為が非弁行為(弁護士でない者が、報酬を得る目的で、弁護士でなければ行えないことを行うこと)と判断されるおそれがあるため注意が必要です。

    > 詳しくはこちら「削除代行業者と弁護士の違い

  3. (3)弁護士への相談

    SNSにおける誹謗中傷の被害に遭っている場合は、弁護士への相談を検討してみてください。

    ネット上の誹謗中傷トラブルの解決実績がある弁護士に依頼すれば、誹謗中傷にあたる投稿の削除や、投稿者の特定、損害賠償の請求まですべてを任せることが可能です。
    削除代行業者では、法的な手続きまでは任せることができないため、法的手続きに移行する場合、再度依頼する弁護士を探し、相談をしなければなりませんが、裁判外の削除請求から弁護士に相談していれば、裁判外の削除請求から裁判上の削除請求まで一貫した対応をとることができます。

    解決実績に基づいてそれぞれの状況や要望に添って適切な対応が期待できるだけでなく、法的手段もとれるため、トラブル解決に向けて迅速かつ的確なアクションが起こせるでしょう。

  4. (4)法務省が提供する相談窓口

    法務省では、「上手にネットと付き合おう!」と題した、インターネット利用ガイドサイトでは、SNSに限らず、インターネット上で誹謗中傷を受けたときに相談できる窓口を紹介しています。

    具体的には以下の通りです。
    ●悩みや不安があるとき
    「まもろうよ こころ」(厚生労働省が運営する相談窓口)
    ●削除の方法について助言を受けたいとき
    「違法・有害情報相談センター」(総務省が運営する相談窓口)
    「人権相談(みんなの人権110番)」(総務省が運営する相談窓口)
    ●プロバイダへ連絡をしてほしいとき
    「誹謗中傷ホットライン」(セーファーインターネット協会が運営する相談窓口)

    ただし、いずれも基本は相談を聞き、アドバイスを行う窓口です。あなたの代わりに速やかに削除を依頼したり、損害賠償請求を行ったりするわけではありません。また、相談数が多いため、違法性があると判断されるまでに時間がかかるケースは多々あります。返答を待っても、最終的には何も対応はしてもらえなかったというケースが起こりえることは知っておきましょう。

    できるだけ早期に、誹謗中傷投稿の削除依頼や、加害者の特定、損害賠償請求などの対応を行いたいときは、弁護士に相談することをおすすめします。

4、誹謗中傷をした加害者を訴えることはできる?

SNSの中には、原則として実名での利用が求められるものがある一方で、自由にアカウントネームを設定できるものもあり、一見するだけでは誹謗中傷の加害者が特定できないケースも少なくありません。
特に「捨て垢」を利用した誹謗中傷であれば、相手のトップ・ホームなどを確認してもまず特定はできないでしょう。

このような状態では「相手を訴えるのは難しいのか……」と諦めてしまいがちですが、実は法的手段を用いることで加害者の特定は可能な場合があります。

裁判所に「発信者情報開示請求」を申し立て、名誉毀損などの権利侵害にあたること等の要件を満たすことが認められれば、SNSの運営者やインターネットサービスプロバイダに対する発信者情報の開示を認める決定や判決が得られます。
この手続きは、対象のアカウントがメインで使用している「本垢(ほんアカ)」(本アカウントの通称です。)であるか、それとも「捨て垢」であるのかを問いません。
「捨て垢」だとしても、SNSの運営者サイドには特定のIPアドレスからのアクセスの記録が残っており、インターネットサービスプロバイダにはIPアドレスに基づいた契約者情報が保管されています。
つまり、「本垢」でも「捨て垢」でも、法的手段を用いれば、加害者を特定するプロセスに差はありません。

加害者を特定できれば、慰謝料の支払いを含めた損害賠償請求訴訟を起こすことも可能です。
精神的苦痛に対する慰謝料を支払ってほしい、ビジネスにつながるアカウントで多額の損害が発生したので賠償してほしいと考えるなら、加害者の特定は必須のプロセスとなります。
また、刑事事件として警察に申し出る際も加害者の特定は重要です。


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5、まとめ

SNSにおける誹謗中傷を取り巻く環境は、大きく変化しようとしています。
しかし、加害者の特定までに多くのハードルを抱えている現状では、裁判所を通じた発信者情報開示請求が必須なので、誹謗中傷の被害にお悩みであれば直ちに弁護士に相談するべきでしょう。
加害者を特定するために必要となるIPアドレスなどの情報は、インターネットサービスプロバイダによって差がありますが、早いところではおおむね3か月程度しか保管されていません。悩んでいる間にもタイムリミットが迫っているので、早急に弁護士に依頼して対策を講じることが大切です。

SNSにおける誹謗中傷トラブルにお悩みで、加害者の特定、慰謝料・損害賠償の請求、刑事責任の追及をお考えであれば、ベリーベスト法律事務所にお任せください。
誹謗中傷トラブルの解決実績を持つ弁護士がチーム一丸となってサポートし、あなたのお悩みを解決に向けてお手伝いします。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2021年09月28日)の法律をもとに執筆しています

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