弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 発信者情報開示請求
    個人
    2026年04月06日更新
    発信者情報開示請求されたら? 訴えられるリスクと対応のポイント

    発信者情報開示請求されたら? 訴えられるリスクと対応のポイント

    インターネット上での書き込みやSNSの投稿がきっかけで、突然「発信者情報開示請求」に関する通知が届いたら、驚きや不安を感じる方も多いでしょう。見慣れない法律用語や裁判所からの書面に動揺し、「このまま放置してもいいのか」「訴えられるのではないか」と迷ってしまう人も少なくありません。

    発信者情報開示請求は、匿名で行われた投稿によって名誉毀損やプライバシー侵害などの被害を受けた人が、加害者を特定するために行う法的な手続きです。通知を受けた時点で、すでに被害者側は、次なる法的措置を検討しているケースもあり、対応を誤れば損害賠償請求や刑事事件に発展するリスクもあります。

    一方で、開示請求を受けたからといって直ちに賠償や処罰が確定するわけではなく、適切な対応を取ればトラブルを最小限に抑えられる可能性があります。重要なのは、通知内容を冷静に確認し、期限を守ったうえで正しい行動を選択することです。

    今回は、発信者情報開示請求の基本的な仕組みや通知が届く典型的なケース、開示請求を受けた場合に取るべき対応や注意点をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、発信者情報開示請求とは? 通知が届いたときに知っておくべきこと

突然「発信者情報開示に係る意見照会書」が届くと驚きや不安を感じる方も多いと思いますが、まずは制度の仕組みや流れを理解することが大切です。以下では、発信者情報開示請求がどのような手続きなのか、通知が届く典型的なケースや放置した場合のリスク、そして最初に確認すべきポイントを説明します。

  1. (1)発信者情報開示請求の仕組み

    発信者情報開示請求とは、インターネット上で行われた匿名の投稿により被害を受けたと考える人が「誰が書いたのか」を特定するために行う法的手続きです。

    たとえば、SNSや掲示板に名誉を傷つける投稿やプライバシーを侵害する書き込みがなされた場合、被害者はまずサイト運営者などのコンテンツプロバイダに対して「発信者の情報を開示してください」と請求します。このとき対象となるのは、投稿者の氏名・住所・電話番号・IPアドレス・タイムスタンプなど、加害者を特定するためのデータです。

    開示請求を受けたプロバイダは、契約者に対して、「意見照会書」を送付し、開示に応じるかどうかを確認します。つまり、「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたということは、被害者が投稿内容を問題視し、投稿者を特定しようとしている段階ということになります

  2. (2)意見照会書や裁判所からの通知が届く典型的なケース

    通知が届く典型的な例としては、以下のようなケースが挙げられます。

    • 匿名掲示板での誹謗中傷やデマの投稿
    • SNSでの悪質な書き込みやプライバシー侵害の投稿
    • YouTubeやブログなどでの名誉毀損的な発言や画像の公開


    このような場合、被害者は「誰が投稿したのか」を突き止めるために開示請求を行います。意見照会書が届くのは、まさにそのプロセスの一環です。

  3. (3)放置した場合にどうなるか

    発信者情報開示に係る意見照会書が届いても「無視すれば大丈夫」と考えるのは非常に危険です
    意見照会書に回答しなかった場合でも、最終的には裁判所の判断で発信者情報が開示されることがあります。真摯に対応すれば、被害者との示談により慰謝料の減額や刑事告訴の回避も可能ですが、無視するなど不誠実な態度をとると任意の交渉での解決は困難となり、損害賠償請求訴訟や刑事告訴に発展するリスクが高まります。

  4. (4)届いたらまず落ち着いて、内容と期限を確認する

    発信者情報開示請求に関する通知を受け取ったとき、もっとも大切なのは「まず落ち着くこと」です。書面には、対象となる投稿や回答期限、提出先といった情報が必ず記載されています。
    これを確認しないまま慌てて行動したり、逆に放置したりすると、取り返しのつかない事態に発展しかねません。
    したがって、通知が届いたときには「どの投稿が問題とされているのか」「自分はどのように応答できるのか」を整理することが、第一の対応になります。そのうえで、専門家である弁護士に相談すれば、どのような対応がもっとも適切かをアドバイスしてもらえるでしょう。

2、発信者情報開示請求を受けた場合に考えられる責任

発信者情報開示請求により、匿名の投稿者が特定されると、民事および刑事上の責任を追及される可能性があります。以下では、発信者情報開示請求を受けた場合に考えられる責任を民事責任と刑事責任の両面から説明します。

  1. (1)民事責任:名誉権・プライバシー侵害による損害賠償請求のリスク

    インターネット上の書き込みでもっとも多いトラブルは、名誉権やプライバシー権を侵害するケースです。

    たとえば、「○○は不倫している」との書き込みやSNSに個人情報(住所・氏名・連絡先など)を投稿することは、本人の社会的評価を下げ、またはプライバシーを侵害する行為にあたり、不法行為(民法709条)に該当する可能性があります。
    被害者は、このような権利侵害を理由に、発信者に対して慰謝料などの損害賠償請求を行うことができます。請求額は、事案によって異なりますが、数十万円から100万円程度の慰謝料が認められるケースが多く、被害が拡散して社会的影響が大きい場合には100万円を超えるケースもあります。

  2. (2)刑事責任:名誉毀損罪、侮辱罪、脅迫罪、業務妨害罪などに発展する場合もある

    発信者情報が開示されると、被害者は、民事上の損害賠償請求だけでなく刑事告訴を検討することもあります。インターネット上の投稿や書き込みにより成立し得る犯罪としては、以下のとおりです。

    ① 名誉毀損罪
    公然と事実を摘示して人の社会的評価を下げた場合に成立。法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。

    ② 侮辱罪
    具体的事実を示さなくても、公然と人を侮辱する表現をした場合に成立。2022年の法改正により、法定刑が1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に。

    ③ 脅迫罪
    相手やその親族に危害を加える旨などを告げて脅した場合に成立。法定刑は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。

    ④ 偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪
    虚偽の情報発信や迷惑投稿により事業活動を妨害した場合に成立。法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。


    これらの罪で告訴されると、刑事事件化し、逮捕・起訴される可能性もあります。

  3. (3)被害者から請求され得る内容

    被害者は、発信者に対してさまざまな請求を行うことがあります。代表的なものは以下のとおりです。

    • 投稿削除請求:問題となった書き込みや動画の削除を求められる。
    • 謝罪要求:被害者や社会に向けて謝罪するよう求められる。
    • 賠償金の請求:慰謝料や営業損害などの損害賠償金の支払いを求められる。


    これらの請求は、民事訴訟を通じて行われる場合もあれば、示談交渉の中で求められることもあります。特に、賠償金の請求については金額の妥当性が争点になりやすいため、専門的な知識が必要になる場面が少なくありません。

3、開示請求を受けた場合、とるべき対応・注意点

プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたとき、慌てて自己判断で動いてしまうと、かえって不利な状況を招くことがあります。以下では、開示請求を受けた加害者側が取るべき具体的な対応と注意すべきポイントを説明します。

  1. (1)通知内容の確認(請求内容、回答期限、提出先)

    最初にすべきことは、届いた書面の内容をよく確認することです。書面には、どの投稿が対象とされているのか、誰から請求が出されているのか、いつまでにどう対応するかという期限や提出先が記載されています。

    この期限を無視すると、反論の機会を失い、裁判所が情報開示を認めると判断する可能性があります。まずは冷静に内容を読み取り、行動の優先順位を立てることが重要です。

  2. (2)自身の投稿の確認と記録(証拠保全)

    問題とされている投稿について、自身でも内容を確認し、証拠として記録しておきましょう。
    スクリーンショットや投稿履歴の保存はもちろん、もし削除を検討する場合でも、削除前に必ず証拠を残すことが大切です。

    証拠を残さずに削除してしまうと、後にどのような投稿をしたのかが争点になった際、自分に有利な反論ができなくなるリスクがあります。まずは証拠として確実に保存し、削除する場合も、後に証拠隠滅と誤解されないよう、慎重に対応することが大切です。

  3. (3)応答の仕方

    発信者情報開示請求に対する応答方法は一つではありません。

    ① 開示に同意しない場合
    開示に納得できないときは、理由を明確にして期限までに回答します。ただし、同意しない旨の回答をしても裁判所の判断で開示が認められる可能性もあります。

    ② 開示に同意する場合
    争うつもりがなく、事実を認める場合は、開示に同意する選択もあります。同意をすればのちに被害者に対してあなたの住所や氏名が開示されますので、被害者から連絡がきたら示談交渉を進めていきます。

    ③ 削除や謝罪を検討する場合
    トラブルを長引かせたくない場合、問題となった投稿を削除したり、謝罪文を作成することで事態を収束させる方向に進むこともあります。


    ただし、いずれの判断も軽率に行うべきではなく、法的な見通しを踏まえて慎重に選択する必要があります。

  4. (4)被害者との直接交渉を避けるべき理由

    通知を受けた人の中には、「直接謝罪すれば済むのでは」と考える方もいます。しかし、被害者と直接やり取りをすると、感情的な対立が激化したり、法的に不利な発言をしてしまうリスクがあります。場合によっては、逆にその交渉内容が不利な証拠として使われてしまうこともあります。

    そのため、被害者とのやり取りは避け、専門家である弁護士を通じて行うのが安全です。弁護士が代理人となれば、法的な観点から不利にならない形で対応を進めることができます。

4、発信者情報開示請求を受けたら弁護士に相談すべき理由

発信者情報開示請求の対応は、弁護士に早い段階で相談することが極めて重要です。以下では、弁護士の相談すべき理由を説明します。

  1. (1)弁護士ができること(通知への対応代理、示談交渉、訴訟対応、刑事事件化への対応)

    弁護士に依頼すると、発信者情報開示請求に関する一連の対応を法的に適切な形で進めてもらえます

    たとえば、意見照会書や裁判所からの通知に対しては、依頼者に代わって正確かつ有利な回答を作成・提出してくれるため、自己判断による不備や不利な回答を防ぐことができます。また、被害者とのやり取りについても代理人として交渉を行うため、感情的な衝突を避けつつ、示談や和解を有利に進めることが可能です。

    さらに、万が一損害賠償請求訴訟に発展した場合には、証拠の整理や主張の立て方を含め、裁判での対応を一貫して任せられる点も大きな安心材料となります。加えて、被害者から刑事告訴がなされ警察が介入するような事態になった場合でも、事情説明や取り調べへの対応方針を弁護士がサポートするため、刑事事件化のリスクにも適切に備えることが可能です。
    このように、通知対応から示談交渉、民事裁判や刑事事件への対処まで幅広く任せられるのは弁護士ならではの強みであり、個人の力で取り組むには限界がある部分を補ってくれる存在といえるでしょう。

  2. (2)初動で弁護士に相談することで損害額を抑えたり、早期解決を図れること

    弁護士に早めに相談すれば、事態の悪化を防ぎやすくなります。

    たとえば、被害者が高額な賠償金を請求してきた場合でも、弁護士が間に入ることで適正額に減額できる可能性があります。また、投稿削除や謝罪といった形で解決を図れば、裁判まで至らずに示談で収束するケースもあります。

    「問題が大きくなる前」に相談することで、不要なコストや時間を節約し、さまざまな負担を軽減できるのも大きなメリットです

  3. (3)放置や自己判断が取り返しのつかない結果を招く可能性があること

    通知を受けても「取りあえず無視して様子を見よう」と考える人もいますが、これは非常に危険です。回答期限を過ぎれば、裁判所が一方的に開示を認めてしまうこともあり、その後の対応は格段に不利になります。また、問題を軽く見て自己流で対応した結果、被害者側から「誠意がない」「悪質だ」と評価され、逆に高額な損害賠償を請求されるケースもあります。

    さらに、被害者と直接交渉してしまうと、不利な発言をしてしまったり、感情的なやり取りがエスカレートしてしまうこともあります。場合によっては、そのやり取り自体が証拠として利用されてしまい、立場を悪化させる危険すらあるのです。

    このようなリスクを避けるためにも、通知が届いた時点で弁護士に相談し、正しい手順を踏むことが欠かせません。

5、まとめ

発信者情報開示請求の通知が届いた場合、放置や自己判断は大きなリスクを伴います。開示によって身元が特定されれば、損害賠償請求や刑事事件に発展する可能性もあり、対応を誤れば経済的・社会的な負担は甚大です。大切なのは、冷静に通知内容を確認し、証拠を保全したうえで適切な対応を取ることです特に、被害者との直接交渉は避け、弁護士の助力を得ることが不可欠といえます

ベリーベスト法律事務所では、発信者情報開示請求に関する豊富な経験を持ち、示談交渉や訴訟対応を含めて依頼者の不安に寄り添った解決策を提案しています。突然の通知にお悩みの方は、早めにご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2026年04月06日)の法律をもとに執筆しています

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