弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 発信者情報開示請求
    個人
    2021年08月26日更新
    5ちゃんねるで会社が誹謗中傷された! 投稿者情報の開示請求は可能?

    5ちゃんねるで会社が誹謗中傷された! 投稿者情報の開示請求は可能?

    もし5ちゃんねるに会社を誹謗中傷する内容の投稿が書き込まれてしまった場合、不特定多数の人に閲覧されることによって会社の信用にキズがついてしまいます。
    そのため、できるだけ速やかかつ適切に対処をすべきです。

    しかし、5ちゃんねるは匿名性が高いので誰が投稿したのかを容易に突き止めることはできません。

    本コラムでは、5ちゃんねる上での誹謗中傷にあたる投稿に対して、投稿者の情報を開示請求し、特定後にどのような対処方法をとることができるかなど、弁護士が解説します。
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1、5ちゃんねる(2ちゃんねる)に会社を誹謗中傷する内容の投稿をされたら?

5ちゃんねる(2ちゃんねる)に会社を誹謗中傷する内容の投稿をされてしまうと、会社の信用を傷つける情報がネット上にいつまでも残ることになってしまいます。
多額の損害が発生するおそれのあるケースや、投稿内容が犯罪にあたるケースでは、投稿者を特定して責任を追及するべきでしょう。

  1. (1)名誉毀損の書き込みを放置する危険性

    5ちゃんねるにおける誹謗中傷が単なる感想や批評のレベルを超えて名誉毀損や業務妨害にあたる内容である場合、放置するのは危険です。

    人のうわさ話は、時間がたてばいずれ忘れ去られます。
    ところが、ネット上の情報は削除されない限り半永久的に残ってしまうので、相当な時間がたった後でも社名で検索すれば誹謗中傷をしている投稿がヒットしてしまいます。

    また、会社にとって不名誉な情報や信用を害する内容の投稿があることによって、会社自体の評判のみならず、商品・サービスの品質までもが疑われてしまう事態にもつながりかねません。

  2. (2)投稿者を特定した方がよいケース

    たとえ手厳しい意見や批判であっても、それがユーザーの正しい論評だととらえられるものであれば、裁判をして投稿者の特定をすることは難しくなります。

    一方で、会社に対する名誉毀損・信用毀損・業務妨害といった犯罪にあたるケースでは、投稿者を特定して対策を講じるべきでしょう。

  3. (3)5ちゃんねると2ちゃんねる、まとめサイト・ブログサイトの違い

    誹謗中傷にあたる投稿を見ていると、まったく同じ内容がいろいろなサイトに掲載されていることがあります。

    5ちゃんねると2ちゃんねるは、名前は似ていますがまったく別のサイトです。
    ただし、詳しいシステムは明かされていませんが、5ちゃんねるへの投稿は2ちゃんねるにもコピーされているほか、ミラーサイトとよばれるまとめサイトやブログサイトにも自動的にコピーされている場合があります。

    これらは基本的に別々の運営者が存在する別個のサイトです。
    そのため、たとえば5ちゃんねるだけに誹謗中傷が投稿されたとしても2ちゃんねるやそのほかのブログサイトなどに拡散されてしまい、事態の収拾が困難になる場合があります。

  4. (4)削除請求、発信者情報開示請求の違い

    投稿者の特定には「発信者情報開示請求」の手続きが必要となります。
    発信者情報開示請求とは、最終的には投稿者につながる情報(氏名、住所等)を開示させるものです。

    一方で、別の手続きとして「削除請求」があります。
    削除請求は、各サイトの運営者等に対して「投稿記事を削除してほしい」と依頼する手続きです。
    投稿者個人につながる情報を得るのが目的ではなく、投稿の削除のみを目的としているので、速やかに名誉毀損や信用毀損の被害状況を解消することができます。

2、投稿者を特定する発信者情報開示請求とは?

誹謗中傷の投稿者を特定するには「発信者情報開示請求」という手段を経るということは上述したとおりです。発信者情報開示請求によって投稿者を特定できれば、損害賠償請求をすることなども可能となります。

  1. (1)投稿者を特定するメリット・デメリット

    誹謗中傷する内容を書き込んだ投稿者を特定すれば、当人との交渉によって迅速な解決が期待できます。たとえ相手が交渉に応じなくても、訴訟によって損害賠償を求めることが可能です。

    ただし、デメリットとして、投稿者の特定には相応の弁護士費用がかかる点が挙げられます。
    また、せっかく発信者情報開示請求の手続きをとっても、すでにログが消去されている、ネットカフェなどからの投稿で個人の特定が事実上不可能というケースもあり得ます。
    発信者情報開示請求をするのであれば、費用倒れに終わるリスクも想定しておくべきです。

  2. (2)匿名掲示板における投稿者特定について

    5ちゃんねるのような匿名掲示板においては、投稿を見ただけでは投稿者の識別ができません。
    しかも、サイトの運営者においてもどこの誰が投稿したのかまでの情報は持っていません。
    そこで、①まずはサイトの運営者に対して投稿の「IPアドレス」等を開示させます。
    IPアドレス等が判明すれば投稿者が契約しているプロバイダが原則として特定できるので、②さらにプロバイダに対して「契約者情報」の開示を求めます。

    この2段階のプロセスを経ることによって、素性がわからない匿名掲示板における投稿者の特定が可能になります。

  3. (3)プロバイダ責任制限法とは

    この2段階のプロセスによって発信者の情報開示を請求できる権利があることは、「プロバイダ責任制限法」の第4条1項によって定められています。

    プロバイダ責任制限法とは、正式には「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」のことをいいます。
    この法律は、インターネット上などで権利侵害があった場合におけるプロバイダやサーバーの責任者の損害賠償責任の制限と発信者情報の開示を請求する権利について規定しています。

    この法律により、各ユーザーとインターネット回線を接続する「プロバイダ」は、適切な開示請求を受けた場合、個々のユーザーに割り振られたIPアドレス等から、契約者の情報を開示すべきことになります。

  4. (4)5ちゃんねるの投稿者を特定する手続きの流れ

    5ちゃんねるで投稿者を特定する場合も、やはり前述のように2段階のプロセスを踏むことになります。

    • 5ちゃんねるの運営会社に対するIPアドレスの開示請求
    • IPアドレスから投稿者が利用したプロバイダを特定して契約者情報の開示請求


    これらの請求はそれぞれの運営会社等に対して個別に行う必要があります。
    たとえば、まったく同じ内容の投稿が5ちゃんねるとまとめサイトに掲載されている場合は、各運営会社にIPアドレス等の開示請求を行う必要があります。
    また、開示されたIPアドレス等の情報から、プロバイダがそれぞれ異なれば(例:ドコモとソフトバンクなど)、それぞれのプロバイダに対する契約者情報の開示請求が必要となります。

3、書き込み投稿者の特定と主な争点とは?

発信者情報開示請求の流れのなかでよく発生する問題や争点についてみていきましょう。

  1. (1)書き込み投稿者が特定できるまでの期間は?

    誹謗中傷の投稿を見つけてすぐに発信者情報開示請求の手続きを進めても、実際に加害者を特定できるまでには数月程度の時間がかかるといわれています。
    しかも、これは「すぐに」取りかかった場合です。
    プロバイダがIPアドレスのアクセスログを保管している期間は3か月程度といわれており、これを過ぎてしまうとアクセスログが削除され、発信者の特定ができなくなってしまいます。

    そのため、以下で紹介する仮処分という手続きが必要となってくるのです。

  2. (2)IPアドレス情報を特定するための「裁判(仮処分)」とは?

    発信者情報開示請求の流れのなかで「仮処分」という手続きが登場します。
    仮処分とは、裁判による結果を待っている間にも不利益が発生するおそれがある場合に、暫定的に権利を保全することをいいます。

    たとえば5ちゃんねるにおける誹謗中傷トラブルで発信者を特定する場合、仮処分が登場するのは次の2つの場面でしょう。

    • サイト運営者に対してIPアドレスを開示させる場合
    • プロバイダに対して発信者情報の消去の禁止を求める場合


    プロバイダがアクセスログを保存している期間は3か月程度であるのに対し、裁判で判決を得るまでにはスムーズにいっても半年以上かかるのが通常ですから、本案訴訟の結果を待っている余裕はありません。
    そこで、仮処分によって裁判所から「IPアドレスを開示しなさい」「アクセスログを削除してはいけない」といった命令を下してもらいます。
    これによってアクセスログ保存期間のタイムリミットが解消され、発信者の特定が可能となるわけです。

  3. (3)プロバイダ側の個人情報の守秘義務について

    プロバイダが保有している発信者の情報について開示を求める手続きは、裁判だけではありません。
    実は、弁護士法第23条の2に基づく「弁護士会照会」によって開示を求めることも可能です。
    ただし、ほとんどのプロバイダは守秘義務を理由に任意の開示請求には応じてくれません。
    また「発信者が開示に同意しない限り応じられない」という姿勢をとる場合もあるため、実際にこれで行うことは困難であり、裁判による開示請求を行うのが現実的でしょう。

  4. (4)発信者情報開示請求訴訟の主な争点

    発信者情報開示請求訴訟で最大の争点となるのは「権利侵害が明白であるか」という点です。
    プロバイダ責任制限法第4条1項において示されているとおり、開示請求は「侵害情報の流通によって開示請求者の権利が侵害されたことが明らかである」場合において認められます。
    単なる感想や批判にすぎない情報では上記侵害とはみなされず、開示請求が認められない場合が多いので注意が必要です。
    また、権利侵害が明白であること、侵害行為が正当ではないこと(違法性阻却事由がないこと)を、カキコミ主ではなく、開示を求める側が証明しないといけません。

4、発信者情報を開示、発信者が特定されたら?

発信者情報開示請求によって発信者を特定できたら、その後は誹謗中傷をしないと誓約させたり、民事・刑事の両面で責任を追及したりすることになるでしょう。

  1. (1)今後誹謗中傷をしないと誓約させる

    発信者を特定したら、今後は誹謗中傷をしない旨誓約させましょう。
    誹謗中傷の加害者は、個人の特定までされたうえで再び誹謗中傷をしようとは思わないものです。
    とはいえ、個人の特定にまで至ったことをあげつらい、さらに面白おかしく投稿するなど、まったく反省しない投稿者がいる可能性もあるので、違反した場合の条項を盛り込むなどして厳しく誓約させることが重要となってきます。

  2. (2)損害賠償を請求する(民事責任の追及)

    誹謗中傷は、名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害であるとして、民事上の不法行為にあたるため、損害賠償の請求をすることも考えられます。
    この際、弁護士費用や慰謝料、会社にもたらされた営業上の損失を含めた金額の請求をすることになります。

  3. (3)刑事告訴をする(刑事責任の追及)

    誹謗中傷が刑法の名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪・脅迫罪・信用毀損(きそん)罪・業務妨害罪などにあたる場合は、刑事告訴して投稿者の処罰を求めるのも選択肢のひとつです。
    特に法人が被害に遭った場合は、厳しく対処したことを対外的に示すことで、今後の誹謗中傷投稿への予防に強い効果を発揮します。

  4. (4)5ちゃんねるの削除・開示請求は専門家に依頼すべき理由

    5ちゃんねる(2ちゃんねる)での誹謗中傷にあたる投稿を削除したい、または投稿者を特定したいと考えるのであれば、ネット上の誹謗中傷について知見がある弁護士に依頼するのがベストです。

    5ちゃんねるには削除依頼に厳密なルールがあり、その運用はかなり特殊です。
    個人での対応は難しい面が多いため、法律の専門家である弁護士のサポートを得ないとなかなか手続きが進まないでしょう。

    また、発信者情報開示請求では、5ちゃんねる運営者側との交渉に加え、裁判所での訴訟・仮処分といった複雑な手続きが必要です。
    個人による対応では、プロバイダがアクセスログを保管している期間のうちに手続きが進まず、投稿者の特定につながる重要な情報が失われてしまうリスクがあります。

    削除・開示請求だけでなく、その後の民事・刑事の両面での責任追及や投稿者との交渉も含めて、弁護士に一任することを強くおすすめします。

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5、まとめ

5ちゃんねる(2ちゃんねる)での誹謗中傷トラブルでは、削除・開示請求の手続きが難しいうえにアクセスログの保管期間というタイムリミットの問題もあります。
さらに、投稿者を特定したとしても、その後の民事・刑事の両面での責任追及に関しては専門的な知識が必要とされ、企業の担当者の対応だけでは難しい局面が数多く出てくるでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、5ちゃんねる(2ちゃんねる)の仕組みや対応を熟知した弁護士が、御社への誹謗中傷にあたる投稿の削除や投稿者の特定をお手伝いします。
専門の削除請求チームによる対応で、不名誉な投稿の速やかな削除も実現できます。
5ちゃんねる(2ちゃんねる)での誹謗中傷トラブルでお悩みなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2021年08月26日)の法律をもとに執筆しています

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