弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 口コミ投稿
    法人
    2021年03月25日更新
    エステサロンの誹謗中傷クチコミを書き込まれた場合の対処法とは?

    エステサロンの誹謗中傷クチコミを書き込まれた場合の対処法とは?

    消費者が決して安くはない施術料を払い、「美しさ」という曖昧で個人間でもその基準が異なる商品を扱うエステや美容整形などの美容医療サービスは、消費者トラブルが起こりがちな業種でもあります。
    消費者から消費生活センターに寄せられる消費生活に関する苦情相談情報(消費生活相談情報)の収集を行っているシステムであるPIO-NETによれば、2019年度の美容医療サービスの相談件数は1833件となっています。
    昨今では、施術内容などに不満を持った客がエステサロンや美容整形クリニックの評判を下げるためにクレームめいたことをインターネットの掲示板などに書き込むケースも少なくありません。そこで、今回はエステや美容整形などのサロンに対して誹謗中傷が書き込まれたときの対処法について解説します。
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1、エステ・美容整形関連で投稿される誹謗中傷の種類

エステや美容整形については消費者とお店との間でトラブルになることが少なくありません。お店に対する誹謗中傷がインターネットに書き込まれているのを見かけた方も多いのではないでしょうか。ここではどのような誹謗中傷の内容が書き込まれることが多いのかを見ていきます。

  1. (1)施術に対する不満

    「やせると言われたのにやせなかった」「施術を受けたら適当で雑だった」など、実際に施術を受け、その結果について不満を持った客が口コミサイトなどにクレームを書き込むケースがあります。

  2. (2)勧誘方法に関するもの

    「何度も断ろうとしたが断りきれず契約した「モニターを募集していて施術を受けに行ったら高額サービスに長時間勧誘された」など、強引な勧誘を受けたことを書きこまれることもあります。

  3. (3)個人特定を含むスタッフに対するクレーム

    「〇〇というスタッフの態度が悪かった」「レーザー治療を受けたら顔が腫れた。そのことを担当医〇〇に伝えたが失敗を認めようとしない」など個人名をあげてクレームをつけるケースも少なくありません。

  4. (4)料金に関する不満

    「この内容でこの値段は高すぎる。サギだ」「あのエステサロンはぼったくりだ」など、料金に対する不満の書き込みもネット上には散見されます。

  5. (5)内部スタッフと見られる人物の待遇への不満

    「閉店後に強制的に施術の練習をさせられる。しかもその時間の給料は出ないからサービス残業だ」「朝から晩まで働いているのに手取りが〇万。安すぎる」など、従業員が勤務先に対する不満をSNSなどでつぶやいているケースもあります。

2、エステ・美容整形関連の書き込みで影響のあるサイトとは

昨今、消費者の行動に大きな影響をおよぼしているのが口コミサイトをはじめとしたインターネットの情報です。ここでは特に影響力が強いとされているサイトを紹介します。

  1. (1)口コミサイト

    ホットペッパービューティーや楽天ビューティーといったエステ・ヘアサロン専用の検索サイトは、予約ができる上に口コミを書き込めるようになっています。エステや美容整形などをこれから受けようとしている方は、これらの口コミサイトで利用者の口コミを読んでどこで受けるかを検討する方も少なくありません

  2. (2)会員制交流サイト(SNS)、ブログ

    エステ・美容整形関係の口コミサイトだけでなく、いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる方や人気ブロガーのSNSやブログの影響もあなどれません。非常に大きな影響力をもつ彼ら・彼女らの投稿が、エステや美容整形関連のサロンの人気を左右することもあります。

  3. (3)5ちゃんねる、爆サイなどの掲示板

    5ちゃんねるや爆サイといった有名なインターネット掲示板は、誰でも匿名で投稿できることから、誹謗中傷の温床になりやすい場所になっています。これらの掲示板の中には担当者を名指ししてクレームをつけるような投稿も見受けられます。投稿内容が拡散すれば、サロン等の評判が落ちてしまうこともありえるでしょう。

3、ネットで誹謗中傷を受けた場合の対処方法

エステサロンや美容医療のクリニックでは、クレームが生じないようにあらかじめホームページに「よくある質問とその回答」や「返金対応ポリシー」、「副作用などのリスク」などについて、目に付きやすいところに明示しておくことが必要です。しかし、それでもネットで誹謗中傷を受けた場合、どのような対処方法があるのでしょうか。

  1. (1)誹謗中傷に当たるか否かの判断基準とは?

    投稿内容が特定のエステや美容整形のサロンの評価を下げるものであっても、誹謗中傷にあたるケースと、公共性・公益性・真実性があり誹謗中傷にはあたらないケースがあります。
    たとえば、エステサロン〇〇についての口コミサイトで「他の店で買えば100円の化粧品を10万円で無理やり買わされました。」という書き込みがあったとします。このような書き込みは、その店の評価を下げるものであるといえるでしょうから名誉権を侵害する誹謗中傷といえそうです。
    しかし、この内容が真実である場合には、真実性の要件が満たされ(上記の場合には公共性・公益性も認められるでしょう)、誹謗中傷に当たらないと考えられるでしょう
    一方で、この内容が真実でない場合には、真実性の要件が満たされず、誹謗中傷に当たると考えられるでしょう
    削除請求や発信者情報開示請求を行うにあたっては、お店の側でこの書き込みの内容が真実でないこと(及び公共性・公益性がないこと)を一定程度証明しないといけません。

  2. (2)利用規約違反を理由に専用フォームから削除依頼する

    口コミサイトやSNS、ブログ、インターネット掲示板にはそれぞれ利用規約(または口コミガイドライン)があります。プライバシー侵害など権利侵害にあたるものや誹謗中傷、差別表現、脅迫、犯罪を助長する表現にあたるものは、これらの利用規約に反するものです。

    ホットペッパービューティーなどは口コミを投稿する前に運営側で審査が行われるので、利用規約に違反した書き込みは比較的少ない傾向があります。しかし、利用規約に違反している書き込みを発見したら、お問い合わせフォームなどの専用フォームから削除依頼をします。運営側にわかりやすいように、削除してほしい書き込み内容について詳しく記載しましょう。

  3. (3)違法性を理由にプロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置依頼をする

    名誉毀損やプライバシー侵害など、権利侵害にあたる書き込みはプロバイダ責任制限法ガイドラインに基づき送信防止措置依頼(削除依頼)をすることができます
    プロバイダ責任制限法関連情報Webサイトに送信防止措置の書式があるので、それに必要事項を記入し、権利侵害されていることを示す証拠資料や登記事項証明書(資格証明書)、印鑑登録証明書などを添付して運営元に郵送します。

  4. (4)弁護士に削除依頼してもらう

    自分で削除依頼してもうまくいかないとき、また迅速に削除してもらいたいときは弁護士に相談し、削除依頼してもらう方法があります

    弁護士が、フォーム等を用いた削除請求やプロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置依頼を行う場合には、問題となっている投稿がどの様に権利侵害を生じさせているのかを論理的に組み立て、法律上の主張として請求します。自分で請求しても削除されなかった投稿が、弁護士が請求したら消えたという事例もあります

    弁護士がこれらの請求をしても削除されない場合には、裁判所に仮処分を申し立てます
    仮処分とは、訴訟にする時間のないときに、確定判決を下す前に暫定的に決定を求めるものです。仮処分を申し立て、数週間~1か月程度の間での主張のやりとりの後、これが認められると、サイト運営会社に対し、裁判所が削除命令を発します。裁判所による削除命令が出されると、たいていの場合削除に応じてもらえます。

4、誹謗中傷の書き込みをした発信者を特定するには?

誹謗中傷の書き込みによって、苦情の電話が殺到している、売り上げが落ち込んだなどの実害が出ている場合は、削除のみならず投稿者を相手取って訴訟を検討しましょう。その際に必要になるのが、発信者の特定です。

  1. (1)発信者情報開示請求とは

    発信者情報開示請求とは、SNSやインターネット掲示板などに投稿をした者の氏名や住所の情報を開示するように請求することです
    しかし、サイト管理者に会員情報の開示を求めても、個人情報保護の観点からなかなか開示には応じてくれません。そこで、まずサイトの運営会社にIPアドレス開示請求をして、投稿者の利用するプロバイダを割り出し、そこで初めて投稿者の情報開示を求めてプロバイダに発信者情報開示請求ができるのです。

    ただし、プロバイダが持つアクセスログの保存期間は3~6か月程度なので、裁判所の審理の期間を考えれば、発信者情報開示請求手続きはスピーディーに行うことが必要です。もし、発信者情報開示請求をすることを考えているのであれば、問題の投稿を見つけたらすぐに弁護士に相談し、依頼した方が良いでしょう

  2. (2)発信者情報開示請求の流れ

    発信者情報開示請求は以下のような流れで進みます。

    ①運営会社にIPアドレス開示請求を行う
    まず、投稿の行われたサイトの運営会社に対してIPアドレス開示請求を行います。これは投稿者の利用するプロバイダをIPアドレスから特定するためです。
    任意では開示してもらえない可能性が高いので、たいていの場合は裁判所にIPアドレス開示請求の仮処分を申し立てることになります。

    ②IPアドレスからプロバイダを特定
    裁判所から仮処分命令が出され、運営会社からからIPアドレス開示を受けたら、whois検索(IPアドレスやドメイン名の利用者の検索)等で検索をして、投稿者の利用するプロバイダを特定します。

    ③プロバイダに対してアクセスログ保存を要請
    プロバイダに対して発信者情報開示請求を行うと同時に、プロバイダに対してアクセスログ保存要請をします。手続きをしている間に、投稿者のタイムスタンプ(データに残存する日時情報)やIPアドレスが消去されないようにするためです。アクセスログの保存要請は任意で書面を使って行いますが、プロバイダが応じない場合は、裁判所への発信者情報消去禁止仮処分を申し立てて保存してもらいます。

    ④プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起する
    プロバイダへの発信者情報開示請求は任意では行わず、原則として訴訟で行います。たいていの場合、第1回期日前にプロバイダから投稿者に対して情報を相手方に伝えても良いかどうか意見照会をします。投稿者側は開示を拒否することも少なくありませんが、判決への影響はあまりないと思ってよいでしょう。

    ⑤投稿者の特定
    確定判決が出て訴えた側が勝訴すると、プロバイダが投稿者の氏名や住所などの情報を開示します。

  3. (3)発信者を特定した後の対処法

    発信者を特定した後は、名誉毀損罪や偽計業務妨害罪などの刑事責任が問えるようであれば刑事告訴ができます。また、誹謗中傷の投稿によって損害が生じた場合は損害賠償の請求も可能です。
    投稿者が自社の従業員だった場合は、「もう二度と誹謗中傷するような書き込み行為をしない」旨の誓約書を書かせるのもひとつの方法です。

5、まとめ

エステや美容整形は、副作用が直接顔や体の表面上にあらわれるリスクを伴うものです。そのため、「こんなはずではなかった」との思いから、利用者が口コミサイトやSNSなどに感情的な書き込みをすることが少なくありません。
しかし、書き込みが事実無根であれば、客足が遠のいて経営にダイレクトに影響することもありえます。一方、事実であれば安易に反論せず真摯に向き合わなければなりません。
いずれにせよ、書き込み内容が権利侵害や誹謗中傷にあたるかどうかは判断が難しいため、できるだけ早くIT問題の経験豊富な弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2021年03月25日)の法律をもとに執筆しています

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