弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 誹謗中傷・風評被害
    個人
    2023年05月02日更新
    好き嫌い.comで受けた誹謗中傷投稿に対する通報・削除・開示請求方法

    好き嫌い.comで受けた誹謗中傷投稿に対する通報・削除・開示請求方法

    「好き嫌い.com(ドットコム)」は、話題の人物や物語の登場人物に対して「好き!」「嫌い!」のどちらかを投票できるコミュニティーサイトです。しかし、なかには誹謗中傷やイメージダウンにつながる投稿も存在するため、なんとかして対策を講じたいと考えるシーンも少なくないでしょう。

    好き嫌い.comに書き込まれた誹謗中傷にあたる投稿を削除してもらう方法や投稿者に対して損害賠償を請求するために必要な手順などについて、弁護士が解説します。
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1、好き嫌い.comとは? サイトの概要

まずは「好き嫌い.com」がどんなサイトなのかを確認していきましょう。

  1. (1)好き嫌い.comはどのようなサイト?

    好き嫌い.comは、サイト上で「今話題の芸能人・有名人のみんなの好き嫌いを共有するサイト」をうたうコミュニティーサイトです。対象となるのは芸能人・スポーツ選手・政治家などの実在する有名人のほか、アニメなどの架空の人物・キャラクターも含まれます。

    ユーザーは1人の人物に対して1日1回だけ「好き!」「嫌い!」のいずれかの投票が可能です。得票数に応じて「好き派」「嫌い派」のパーセンテージが集計され、トップページでは好感度・不人気・トレンドといったランキングも公表されています

    投票後はコメントの投稿も可能で、応援などの好意的なコメントや批判的なコメントなど、世間のさまざまな意見を知ることができます。

  2. (2)好き嫌い.comの運営者情報と連絡先

    好き嫌い.comの運営者は、サイト上で「好き嫌い.com運営事務局」という名称が公開されているのみで、会社所在地などの情報は非公開となっています。また、連絡先としてもメールアドレスとTwitterのアカウントが掲示されているだけで、電話番号も非公開です。

  3. (3)好き嫌い.comの特徴

    好き嫌い.comでは、ほかのインターネット掲示板やSNSなどのように「利用規約」が定められていません。

    非公開のポリシーなどは存在するかも知れませんが、サイト側が利用における約束・ルールを守るように呼びかける体制は整っていません。それでも、投票後のコメント投稿の際には、誹謗中傷・脅迫・わいせつ・荒らしにあたるコメントへの警告文とともに「本当にこのまま投稿しますか?」というメッセージが表示されます。

    ただし、その後の投稿は任意であり、特定のキーワードを制限するなどの機能は装備されていないようです。利用規約がない、コメントも自由という点に照らすと、好き嫌い.comでのコメント投稿について、運営者は「すべてユーザーの自己責任」という姿勢を示しているといえます

2、誹謗中傷にあたる投稿とは

誹謗中傷にあたるコメントの投稿者に対しては刑事・民事の両面で、法的な責任の追及が可能です。

  1. (1)名誉毀損罪・侮辱罪にあたる投稿は刑罰を受ける

    コメントの内容が刑法の名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪にあたる場合、投稿者は刑事責任を負うことになります。

    名誉毀損罪とは、刑法第230条に規定されている犯罪です。公然と事実を摘示して人の名誉を毀損すると、その事実の有無にかかわらず3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科せられます

    好き嫌い.com上のコメントで「デビュー前に逮捕歴がある」「不倫をしていたのに清純派を気取るな」といった投稿があれば名誉毀損罪に該当する可能性が高いでしょう。

    侮辱罪は、刑法第231条に規定されています。事実を摘示しなくても公然と人を侮辱した場合に成立する犯罪で、法定刑は1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です(令和4年7月6日以前の書き込みで処罰された場合は、拘留または科料)。

    具体的な事実ではなくても「バカ」「ブス」といった主観的・抽象的な侮蔑表現は処罰されます

    なお、名誉毀損罪・侮辱罪はいずれも「親告罪」です。検察官が起訴する際は被害者の告訴を要するため、告訴状の作成など、弁護士のサポートを受けたほうがいいケースがあります。

  2. (2)誹謗中傷には損害賠償請求も可能

    民法第709条は「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と明記しています。

    誹謗中傷にあたるコメントすることも民法上の「不法行為」になりますので、そのようなコメントをした人は被害者に対して損害を賠償する責任が生じます

    また、名誉毀損・侮辱にあたるコメントの投稿があった場合は、実際に発生した損害だけでなくコメントによって受けた精神的苦痛に対しても賠償を請求できます

3、好き嫌い.comの運営に対し投稿を削除してもらう方法

誹謗中傷にあたるコメントを投稿した加害者の責任を追及できても、それだけでは事態を解決できません。好き嫌い.com上で公開されているコメントそのものを削除しなければ、ユーザーの間で情報が拡散されてしまう危険があります。

好き嫌い.comに投稿されたコメントを、運営者に任意で削除してもらう方法は2つです。

  1. (1)「通報」の活用

    好き嫌い.comには「通報」が用意されています。投稿されたコメントの上部に表示された「通報」タブをクリックすると「本当に通報しますか?」というメッセージが表示されるので「はい」を選択すれば通報完了です。

    ただし、通報を受けた投稿がいつ削除されるのか、どのような基準で削除されるのかといった点は非公開です。したがって「通報すれば削除される」と安心できるわけではありません

    なお、コメント欄には「非表示」タブも表示されます。非表示は、1か月間に限って同一のユーザーによる投稿を表示しない機能で、投稿を削除するものではありません。たとえ自身のブラウザ上では確認できなくてもほかのユーザーには表示されています。単に「見たくない」という理由でない限り、解決策にはなりません。

  2. (2)運営者あてにメールを送信する

    好き嫌い.comの運営者情報には、運営者のメールアドレスが公開されています。

    誰に対するコメントなのか、投稿の番号、内容、なぜ削除を希望するのかといった情報を記載のうえで運営者あてに送信すれば、任意で削除される可能性があります。

    ただし、通報と同様で削除に関する基準は一切不明です。運営者あてのメールでも、過度の期待はできません

4、法的手続きを通じて削除してもらう方法

好き嫌い.comは、利用規約やポリシー、削除請求に対するフローなどが公開されていないため、運営者の判断による削除が実現する可能性は高くありません。

運営者が任意で削除してくれない場合は、法的手続きを通じて削除を求めることになります

  1. (1)プロバイダ責任制限法にもとづく送信防止措置請求

    インターネット上のサイトにおける名誉毀損などの権利侵害が発生した場合に、サイト運営者に対して削除などの措置を求める手続きが「送信防止措置請求」です

    プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)第3条にもとづく手続きで、請求を受けたサイト運営者は自主的な判断で削除するか、または発信者に対して「削除しても差し支えないか?」と照会したうえで反論がなければ削除することになります。

    通常、送信防止措置請求の手続きには「プロバイダ責任制限法 関連情報webサイト」からダウンロードした様式に必要事項を記入して内容証明などで郵送することになるでしょう。

    ところが、好き嫌い.comは運営者の所在地・住所を公開していないため、郵送による申請ができません。唯一の連絡手段であるメールによっての提出になり、対応状況もわからないので、確実性が高い方法とはいえないでしょう

  2. (2)弁護士照会を活用した運営者の特定

    法的手段による削除には、運営者の情報を特定する必要があります。好き嫌い.comの運営者情報を知るための方法として​考えられるのが「弁護士照会」です。

    好き嫌い.comでは「好き!」「嫌い!」の投票後に広告が表示されます。そこで、インターネット広告を扱う広告代理店に対して、弁護士会を通じて照会し、情報開示を受けることで、好き嫌い.com運営者の名称や氏名、住所・所在地などの情報が得られる可能性があるでしょう

  3. (3)削除仮処分による削除

    インターネット上のサイトやSNSなどで公開されている権利侵害にあたる投稿を削除するには、裁判所に「仮処分」を申し立てて対応するのが一般的です。

    仮処分とは、法律上、当然受けるべき権利や避けられるべき不利益について、裁判中などの理由で保留されているときに、暫定的にその権利などに対して仮に定められる措置を指します。

    基本的には、のちに裁判を起こすことを前提にまずは権利侵害の状態だけを解消しておくという、その名のとおり「仮」の手続きです。ただし、削除請求においては仮処分のみでサイト運営者が削除に応じる可能性が高く、運営者が削除に応じない場合も執行の手続きによって削除が実現できるため、裁判へと移行しなくても解決が期待できます。

5、損害賠償請求に必須! 発信者情報を開示する法的手続き

誹謗中傷にあたるコメントの投稿者に対して損害賠償を請求する際は、加害者の氏名や住所といった情報の特定が必須です。加害者の氏名・住所などの情報を特定するための手続きを「発信者情報開示請求」といいます。

  1. (1)発信者情報開示請求・発信者情報開示命令とは

    インターネットにおける情報流通は匿名で行われることが多く、仮に氏名を明かしていても実際にその氏名の人物が加害者だという保証はありません。偽名を使っていたり、なりすましによるものだったりするおそれがあるためです。

    そこで、プロバイダ責任制限法の規定にもとづき、加害者がどこの誰なのかを特定するため、裁判所への申し立てを利用する法的な手続きを行う必要があります

    具体的には、以前から使用されていた「発信者情報開示請求」と、令和4年10月より新設された「発信者情報開示命令」2種類の方法のいずれかを選択して、誹謗中傷投稿を行った人物を特定することになります。

    フロー図

    まず、以前より存在した手続きである「発信者情報開示請求」は、ひとつの申し立てによるものではなく、少なくとも2段階、好き嫌い.comにおいては3段階の手続きを必要とする可能性が高いでしょう。しかし、初手の段階で開示された情報によって相手方を特定できれば、すぐに次のステップへ進めることができます。

    他方で、新設された「発信者情報開示命令」は、一度の手続きで複数の手続きを行えるようになったものです。ただし、手続き自体は一度で済むものの必要書類などの手間はさほど変わりがない点に注意が必要です。

    どちらの方法が適切かどうかは、個別事案によって異なります。ネット上の誹謗中傷事件への対応について知見な豊富な弁護士に相談するとよいでしょう。

  2. (2)運営者を特定し投稿の証跡を開示させる

    発信者情報開示請求を進める場合も、やはり好き嫌い.comの運営者情報の特定が必要です。そこでまずは弁護士照会によって運営者情報の開示を受けます。

    運営者情報が判明したら、次は誹謗中傷にあたるコメント投稿の証跡についての開示を受ける手続きが必要です。裁判所に対して、好き嫌い.comの運営者にコメントのIPアドレスとタイムスタンプを開示するよう命令を下してもらいます
    IPアドレスとタイムスタンプが開示されることで、特定の日時に、特定のIPアドレスを割り当てられていたユーザーを特定できるという考えかたです。

  3. (3)インターネットの契約情報から投稿者を特定する

    IPアドレス・タイムスタンプの開示を受けただけでは「どこの誰なのか」という情報はわかりません。あるIPアドレスを割り当てられていたユーザーを特定するには、回線をインターネットにつなげる接続事業者である「インターネットプロバイダ」からも情報開示を受ける必要があります。

    もちろん、悪意のある投稿者であってもインターネットプロバイダにとっては大切な顧客なので、任意の方法では情報を開示してくれません。

    裁判を起こして「この時刻に、このIPアドレスを割り当てられていた契約者の情報を開示せよ」という命令を取り付けることで、投稿者の住所・氏名・連絡先といった情報が開示されます

    こうして、コメント投稿の証跡から投稿者の契約者情報を入手するまでの一連の手続きを「発信者情報開示請求」と呼びます。

    投稿者が特定できれば相手に対する損害賠償請求が可能です。任意の交渉でも支払いが得られなかった場合は裁判を起こして解決を図ることになるでしょう。

6、まとめ

好き嫌い.comはユーザーが「好き!」「嫌い!」を投票することで芸能人などの好感度や不人気度をランキングするサイトです。投票後はコメントの投稿も可能ですが、利用規約が整備されていないため、誹謗中傷にあたるコメント投稿も少なくありません

好き嫌い.com上で誹謗中傷を受けた場合は、送信防止措置請求や仮処分の申立て、発信者情報開示請求といった手続きによる解決が期待できます。ただし、これらの手続きを進めるには法律の正しい知識や裁判所の手続きに関する豊かな経験が欠かせません。個人で対応するのではなく弁護士への依頼することをおすすめします。

好き嫌い.comにおける誹謗中傷で加害者の刑事責任の追及や損害賠償請求を検討している方は、削除請求や発信者情報開示請求の経験が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2023年05月02日)の法律をもとに執筆しています

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