弁護士コラム

この記事の
監修者
荻原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 誹謗中傷・風評被害
    法人
    2021年12月08日更新
    ネット上に病院へのクレーム・誹謗中傷を書かれた場合の対処方法は?
    ネット上に病院へのクレーム・誹謗中傷を書かれた場合の対処方法は?
    病院に所属している医師・看護師等は、日々多くのの患者及びその家族と向き合っているため、その患者や家族の中からネガティブな意見をネット上に投稿する方が出てきてしまうことは避けられません。

    ネット上に投稿される内容は、クレームから誹謗中傷までさまざまです。
    もしその中に、病院や医師・看護師等の権利を侵害するような悪質なクレームや誹謗中傷にあたる投稿を発見した場合には、弁護士に相談しながら毅然とした対応をとるべきでしょう。

    この記事では、ネット上に病院へのクレーム・誹謗中傷を書かれた場合の対処方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、よくあるネット上の病院に対するクレーム例

そもそも「クレーム」という言葉は、法律用語ではなく、英語のclaimを語源とし、「売買契約で違約があった場合、売手に損害賠償を請求すること。」を意味しますが、今日の日本では「異議。苦情。文句。」という意味で用いられることが多いようです。病院側からみると、クレームの内容から患者やその家族の率直な意見を知ることができ、サービスの質を向上させるために有益な情報となりますので、基本的には誠実な対応をすることが求められます。しかし、クレームの中には不当な内容を含む悪質なクレームも存在します
また、「誹謗中傷」という言葉も法律用語ではありませんが、今日では「根拠のない悪口を言って相手を傷つけること。」を意味して用いられることが多いようです。

インターネット利用が身近となり日常生活に欠かせないものとなった現在では、病院に対する悪質なクレームや誹謗中傷がネット上で投稿されることがあります。
よくあるクレーム・誹謗中傷は、以下のとおりです。

  1. (1)医師や看護師の対応に関するもの

    医師や看護師から実際に受けた対応が不満だったという内容の投稿は、病院に対するよくあるクレーム・誹謗中傷の一つです。

    (例)
    「ナースコールをしてから来るまでの時間が遅い」
    「医師の問診が雑すぎる」
    「看護師が目を合わせてくれない」など


    クレームの内容はさまざまですが、真摯に受け止めて対応するべきものもあれば、全く根拠のない誹謗中傷を内容とする場合もあります。

    このようなクレームを見かけた場合、院内のオペレーション等に照らして、クレームの内容が真実かどうかなどを当事者から事情聴取等して、適切な対処法を選択することが大切です

  2. (2)治療の効果に関するもの

    処方された薬や手術・リハビリの効果がなかった、またはかえって悪化したという内容のクレーム・誹謗中傷も、比較的よく見られます。

    (例)
    「あの病院の医師は腕が悪い、手術を受けるのは危険だ」
    「あの医師の処方は的外れで、薬が全く効かなかった」
    「リハビリを担当する理学療法士の力量に疑問がある」など


    薬や手術・リハビリは100%効果を発揮するものではなく、患者の素因や生活環境などによっては、満足な効果を得られないこともあり得ます。また、医師は患者に対して、患者が医療行為を受けるか否かの判断をするために適切かつ十分な説明をする義務がありますので、医師はそのような説明を事前にきちんと行っているのが通常です。

    しかし、患者の期待に反して薬や手術・リハビリの効果を十分に得られない場合もありますので、その場合には病院に対してクレーム・誹謗中傷を書き込む方が現れることもやむを得ないところです

    もっとも、あまりにも悪質なクレームや誹謗中傷に対しては、しかるべき法的措置を講ずべきでしょう。

  3. (3)治療などとは無関係のもの

    病院で受けた治療などとは無関係に、病院や医師・看護師等の名誉を傷つけたり、プライバシーを侵害したりするような誹謗中傷が投稿されるケースもあります。

    (例)
    「あの病院の院長はたくさんの愛人を抱えている」
    「○○医師は学歴を詐称している」など


    このような事実無根の誹謗中傷が投稿された場合には、法的手段を視野に入れて、迅速な対応を取るべきでしょう。

2、ネット上で病院に対するクレームを書かれた場合の対処法

ネット上に書き込まれた病院に対するクレーム・誹謗中傷への対処法は、いつ、どこのサイトに、どのような表現で書き込まれたか、それによってどのような被害あるかなどによっても異なりますが、基本的にはクレーム・誹謗中傷の内容をきちんと見極めたうえで対応方針を決めることが大切です

  1. (1)直営サイトなどへのクレームの場合|原則としてきちんと返信する

    病院が直営するサイト上の掲示板や、病院が公式に登録している口コミサイトの病院ページに投稿されたクレームの場合、それが真摯に受け止めるべき内容であれば、一つの意見として受け止め、病院としての考えを明らかにしたり、改善策をとる旨を宣言したりして、誠実に返信すべきでしょう

    しかし、クレームの中には悪質なものや誹謗中傷にあたるものも存在するので、その場合は法的措置を視野に入れた対応も検討してください。

  2. (2)匿名掲示板などへのクレームの場合|法的措置の要否を検討する

    匿名掲示板などにクレーム・誹謗中傷が書き込まれた場合には、病院がその匿名掲示板上で返答を試みて書き込みを行うことは必ずしも適切ではありません
    匿名掲示板でのやり取りをコントロールするのは事実上不可能であり、病院から書き込んだ内容を更なる攻撃材料として新たな書き込みが行われ、「炎上」につながってしまうリスクが高いからです。

    匿名掲示板などへ書き込まれた内容が、病院や医師・看護師等の権利を侵害するような悪質なクレームや誹謗中傷にあたる場合には、後述する法的措置を用いた被害回復の要否を検討しましょう

3、誹謗中傷や名誉毀損への対抗手段

病院や医師・看護師等に対する悪質なクレームや誹謗中傷にあたる投稿が行われた場合には、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求・刑事告訴などの対抗手段が考えられます。

  1. (1)投稿の削除を依頼する

    投稿が行われたサイトの管理者に対して、問い合わせフォームから削除依頼をしたり、そのサイトのコンテンツプロバイダに対して、一般社団法人テレコムサービス協会の作成したガイドラインに従った送信防止措置依頼をしたりすると、審査を経て投稿が削除される場合があります。
    送信防止措置依頼書には、侵害されたとする権利、権利が侵害されたとする理由を記入する欄があります。そのため、適切な権利の設定、権利に対応する理由の記載が不可欠であり、必要であれば主張を支える資料を添付することもあります。

    もしサイト管理者又はコンテンツプロバイダが投稿の削除に応じてくれない場合には、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てることも考えられます(民事保全法第23条第2項)。
    悪質なクレームや誹謗中傷にあたる投稿によって、病院の社会的評価が低下するおそれがあると判断された場合、裁判所によって投稿削除の仮処分命令が行われます。

    このように、仮処分命令を得るには裁判手続きによる審査を経る必要がありますので、事前に弁護士へ相談されることをおすすめします。

  2. (2)発信者情報開示請求後、損害賠償を請求する

    悪質なクレームや誹謗中傷にあたる投稿によって、病院や医師・看護師等に損害が発生している場合には、不法行為(民法第709条)に基づき損害賠償を請求することもできます

    損害賠償請求を行うには、まず投稿者を特定しなければなりません。
    「発信者情報開示請求」(プロバイダ責任制限法第4条第1項)を行えば、プロバイダから投稿者の特定に資する情報を取得できる可能性があるので、弁護士にご相談ください。

    また、実際に損害賠償請求を行う場合、投稿が病院の名誉などを侵害した結果、患者数の減少などの損害が発生していることを、証拠によって立証する必要があります。
    損害賠償請求を成功させるためには、入念な準備が必要となりますので、弁護士への相談がおすすめです。

  3. (3)刑事告訴する

    病院や医師・看護師等が悪質なクレームや誹謗中傷の被害に遭った場合、投稿者を名誉毀損罪(刑法第230条第1項)や侮辱罪(刑法第231条)で刑事告訴することも考えられます。

    悪質なクレームや誹謗中傷に対する病院の姿勢を強く発信して、同様の被害が発生するのを防止するためにも、民事上の法的措置と併せて刑事告訴を行うとよいでしょう。

4、ネット書き込みの削除依頼は弁護士への依頼がおすすめ

病院に対するネット上の悪質なクレームや誹謗中傷にあたる投稿は、たとえその内容が事実無根であったとしても、そのままにしておくと風評被害を招いてしまうおそれがあります。
そのため、悪質なクレームや誹謗中傷に対しては、早期に削除依頼を行うことが大切です

しかし、病院から削除依頼をしても、サイト管理者やコンテンツプロバイダが削除に応じるとは限りません。
また、たとえ虚偽の内容の書き込みであったとしても、削除を請求する文面が高圧的・恫喝的であると受け取られる可能性のある内容の場合には、請求内容や請求方法が不当であるとの誤解を受けて、不必要な炎上を招いたり、第三者から新たな非難を受けたり、さらなる情報拡散につながったりすることもあるので、慎重な対応が求められます。

そのため、削除依頼は、弁護士へのご依頼がおすすめです。

弁護士を通じて削除依頼を行うことで、サイト管理者やコンテンツプロバイダが投稿の削除に応じるケースもあります
また、法的措置が必要となった場合でも、必要な作業や手続きを一任できるため、病院は医療活動に専念することが可能となります。

ネット上の悪質なクレームや誹謗中傷にあたる投稿の削除については、ぜひ弁護士にご相談ください。

5、病院に対するクレームに有効な事前対策は?

病院に対するクレーム・誹謗中傷を全て無くすことはできませんので、病院内で、クレーム・誹謗中傷の対策を行う体制をきちんと整えておくことが重要です
具体的には、以下の対策を講じておくことで、実際にクレーム・誹謗中傷に関するネット上のトラブルが発生したときにスムーズに対応できるでしょう。

  1. (1)クレーム対応の担当部署を設置する

    病院の規模がある程度大きくなった場合には、クレーム・誹謗中傷に関する対応を行う担当部署を設置するのが有効な対策です。

    クレーム・誹謗中傷に関するネット上のトラブルは、真偽を問わず一見信用されるような内容であればあるほど、拡散される可能性が高くなり、重大な風評被害をもたらすという特徴があります。そのため、迅速な初動が極めて重要です。病院内に担当部署を設置することにより、ネット上の投稿内容がどのようなものか、それは真実かどうか、どのような被害が生じたか等の事実関係を調査することが可能となるため、迅速にクレーム・誹謗中傷を処理することができるようになります。
    さらに、担当部署が中心となって対応することとなるため、医師・看護師は、患者の治療や看護に専念することが可能となります。

  2. (2)クレーム対応のマニュアルを整備する

    クレーム・誹謗中傷への対処法についてマニュアルを整備することも、有効な事前対策の一つです。

    ネット上にクレーム・誹謗中傷に関する投稿を発見した場合、どのような内容等であれば削除請求又は発信者情報開示請求等を行うかといった基準を設けたり、病院内におけるクレーム・誹謗中傷に関する対応方法の意思決定についてフローを定めたりすることで、的確かつ迅速に対応できるようになります。

  3. (3)顧問弁護士と契約する

    顧問弁護士と契約しておくと、実際にクレーム・誹謗中傷に関するネット上のトラブルが発生した際に、随時アドバイスを受けることができます。特に迅速な対応が求められることから、病院としてどのような法的手段を選択して進めていくか等について、早期の段階で決断をしなければならないことが多いでしょう。そのようなときに弁護士から適切なアドバイスを受けることができれば安心です。

    また、クレーム・誹謗中傷に関する対応の体制整備についても、顧問弁護士のアドバイスを受けながら、万全の体制を整えることが可能となります。

    クレーム・誹謗中傷といったネット上のトラブルへの対処法にお悩みの病院経営者・担当者の方は、一度弁護士までご相談ください。

6、まとめ

ネット上で病院に対する悪質なクレームや誹謗中傷にあたる投稿を発見した場合には、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求・刑事告訴などの法的手段をとることができます。
弁護士のアドバイスを受けながら、適切な法的手段を選択し、被害が拡大しないよう迅速な対応を心掛けましょう。

ベリーベスト法律事務所では、ネット上の悪質なクレームや誹謗中傷に関する削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求などについて、専門チームが全面的にサポートいたします。
ネット上のトラブルにお悩みの病院経営者・担当者の方は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修者
荻原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2021年12月08日)の法律をもとに執筆しています

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