弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 削除請求
    法人
    2022年02月21日更新
    ネットの書き込みで業務妨害された! 告訴可能なケースとできる対応

    ネットの書き込みで業務妨害された! 告訴可能なケースとできる対応

    総務省が公開している平成28年版 情報通信白書によると、インターネットショッピング利用時に口コミ・レビューを「参考にする」と答えた人の割合は、70%を超えています。

    口コミやレビューが活かされているのはネットショッピング業界だけではありません。飲食業、理美容業、医業、士業など、どの業界でも口コミ・レビューの良しあしが業績に大きな影響を与えています。

    もし、業務の妨害を目的とした悪質な口コミやレビューが書き込まれてしまった場合は、放置しておくわけにはいかないでしょう。悪影響が生じてしまう事態を防ぐためにも、直ちに正しい対策を講じる必要があります。

    本コラムでは、インターネット上の書き込みで業務妨害を受けた場合の対応策を、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。加害者の刑事責任を問うための手続きやどのような罪にあたるのかも詳しく紹介していきましょう。
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1、業務妨害を行う書き込みを見つけたら直ちにすべきこと

インターネット上の口コミ・レビューサイトや、自社のSNSアカウントといったオープンなサイトで業務妨害にあたる書き込みがあれば、放置しないほうがよいでしょう。

直ちにここで挙げる2つの行動を起こすことをおすすめします。

  1. (1)証拠を保存する

    ネット上の情報は、投稿者であれば簡単に削除・改変が可能です。業務妨害にあたる状態が存在したことの証拠を残すために、スクリーンショット・プリントスクリーンを保存しましょう

    問題のサイトにアクセスできるURLの保存も必要です。いつ、どのURLが割り当てられて問題のサイトが存在していたのかの証拠となります。

    URLがわからないと、プロバイダに対する削除請求や情報開示請求ができません。ブラウザの印刷機能を使えばURLと印刷日時もあわせて印刷可能なので、スクリーンショット・プリントスクリーンとともに保存しておきましょう。

  2. (2)書き込みの削除に向けてアクションを起こす

    業務妨害にあたる書き込みを放置していれば、多くのインターネットユーザーの目にとまってしまうおそれがあります。
    被害を拡大させないためには、素早い削除が欠かせません

    書き込みを削除するためには、次に挙げる方法があります。

    • 書き込みの投稿者に連絡して任意で削除してもらう
    • 書き込みが投稿されたサイトの管理者に削除を申請する
    • 裁判所に仮処分を申し立てて強制的に削除させる

    投稿者への連絡による任意の削除がもっとも素早く簡単な方法です。ただし、すでに悪意のある業務妨害を行った事実があるなら、こちらの要求を素直に聞いてくれるとは考えにくいでしょう。

    サイト管理者への削除申請も手軽な方法だといえますが、表現の自由などの兼ね合いから、削除に消極的な姿勢を示しているサイトも多数です。削除の可否を判断するために設けているルールが厳しく、現実的に削除申請が認められることはほとんどないサイトもめずらしくないので、確実な方法とはいえません。

    裁判所の仮処分による強制的な削除がもっとも確実な方法ですが、個人での対応は難しいうえに手間がかかります。どの方法を選択するべきなのかのアドバイスを含めて、弁護士に相談し、サポートを求めることをおすすめします。

2、依頼を受けた弁護士ができる法的対応

ネット上の業務妨害について弁護士に解決を依頼した場合、どのようなサポートが期待できるのでしょうか?

  1. (1)書き込みの削除依頼

    書き込みの加害者本人やサイト管理者に対する削除の要請は、一般個人としてではなく弁護士の名義で行ったほうが実現の可能性が高まります

    なぜ削除されるべきなのかを法的な根拠を織り交ぜながら具体的に説明できるだけでなく、こちらには法的措置も辞さないという姿勢があることを示せるためです。

  2. (2)加害者の特定|発信者情報開示請求

    インターネット上の情報だけをみても、書き込みを投稿した加害者がどこの誰なのかはわかりません。

    アカウント名・ユーザーネームなどを使用することで本名を隠すことが可能であり、たとえ本名を名乗っていてもそれが加害者の本名かどうかは一見では特定できないのです。

    加害者を特定するには、裁判所の手続きを利用した『発信者情報開示請求』が必要となります。

    サーバー管理者にIPアドレスなどの開示を請求したうえでアクセスプロバイダに契約者情報を開示させるという二段階の手続きが必要です。IPアドレスの保存期間は数か月と短いこともあり、スピーディーな対応が求められます。対応に慣れている弁護士に依頼したほうが安全といえるでしょう。

  3. (3)刑事告訴のサポート

    捜査機関に対して「加害者を刑事事件の犯人として厳しく処罰してほしい」と求める手続きが『告訴』です。民事の手続きに告訴は存在しませんが、民事と区別する意味で『刑事告訴』と呼ばれています。

    法律の定めによると、犯罪の被害者であれば個人でも刑事告訴できます。ところが、捜査機関に刑事告訴の受理をしてもらえない場合もあります。

    弁護士に相談すれば、犯罪が成立する根拠や加害者を処罰すべき理由などを漏れなく盛り込んだ告訴状の作成を依頼できます。告訴状の提出を含めた捜査機関への対応も任せることができるので、刑事告訴が受理される可能性が高まります。

  4. (4)損害賠償請求のサポート

    業務妨害が原因で売上が減少した、事態を解決するために多額の費用がかかったといった場合は、加害者に対する損害賠償請求が可能です。

    まずは加害者を特定したうえで本人との直接交渉によって請求することになりますが、加害者が素直に賠償金を支払うとは限りません。加害者が賠償金の支払いを拒んだ場合は、法的措置を取ることになります

    加害者との交渉や法的措置には多大な手間がかかるので、弁護士に対応を一任したほうがよいでしょう。

3、業務妨害にあたる書き込みに適用される罪と具体例

業務妨害にあたる書き込みを投稿した加害者は、どのような罪に問われるのでしょうか?
適用される罪や具体例を挙げていきます。

  1. (1)ウソのネガティブな情報を書き込まれた

    「ここで買ったパンに異物が入っていた」、「患者に対して暴力をふるった」、「壊れた商品が届いた」など、対象の社会的な信頼をおとしめる内容の虚偽情報を書き込む者に対しては、信用毀損(きそん)罪として罪を問える可能性があります

    信用毀損罪は、刑法第233条に定められている犯罪です。虚偽の風説を流布、または偽計を用いて人の信用を毀損した場合に成立します。

    ここでいう『信用』とは「経済的側面における人の評価」という意味ですが、商品やサービスの品質にかかる信用もこれに含まれるという考え方が有力です。
    法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

  2. (2)虚偽情報により正常な業務が妨害された

    前項の事例で挙げた「ここで買ったパンに異物が入っていた」などの書き込みが虚偽だった場合、偽計業務妨害罪が適用される可能性もあります

    信用毀損罪が定められている刑法第233条には、偽計業務妨害罪もあわせて規定されています。虚偽の風説を流布、または偽計を用いて、他人の業務を妨害した者を罰する犯罪です。
    「妨害した」といえるためには、現に業務妨害の結果が発生することを必要とせず、業務を妨害するおそれがある行為が行われれば足ります。
    法定刑は信用毀損罪と同じで3年以下の懲役または50万円以下の懲役です。

  3. (3)書き込まれた情報は真実だが評価が低下した

    「この店の経営者は不倫をしている」、「ここで買ったパンに異物が入っていた」というネットの書き込みが真実であった場合も、名誉毀損罪に問えることがあります
    名誉毀損罪は刑法第230条に定められています。公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者を罰する犯罪で、保護されるのは「社会的な評価」です。

    信用毀損罪や偽計業務妨害罪は、その情報が『虚偽』である場合に成立します。したがって、ネガティブな書き込みが提供する情報が真実であった場合、信用毀損罪や偽計業務妨害罪の成立は否定されても、名誉毀損罪が成立する余地があるということです。

    法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。

4、書き込み加害者を刑事告訴したい! 手続きの手順

虚偽の情報や社会的評価の失墜につながる書き込みは犯罪です。単なる嫌がらせなどのように看過できるものではありません。会社・店舗などの業績に悪影響が及んでしまうケースは多々あり、「賠償金を支払っただけでは許せない」と憤る事業主や経営者の方も多いでしょう。

書き込み加害者を刑事告訴するときの手続きの流れを、手順に沿ってみていきます。

  1. (1)告訴状を作成する

    告訴状には定まった記載方法が存在しません。
    刑事訴訟法の定めによると、刑事告訴は「口頭でも可能」とされています。誰が、誰を相手に、どのような罪を理由として処罰を求めるのかという情報が盛り込まれていれば一応の要件は足りるとされているのです。しかし、現実的には、事件の背景や被害の経緯、証拠となる情報を明確にするために、捜査機関から告訴状の提出を求められるのが一般的です

    したがって、被害の全容が詳しく記載する必要があるでしょう。たとえば、加害者を『不詳』としてどこの誰なのかわからない状態で刑事告訴することも可能です。しかし、IPアドレスの保存期間などの問題もあるので、刑事告訴に踏み切るよりも先に加害者の特定をしておいたほうがよいケースは少なくありません。

    インターネットの情報には告訴状を自作する方法なども紹介されていますが、何度自作しても受理されず、弁護士が作成を代行したことで問題なく受理されるケースはあります。刑事告訴の受理・不受理に大きく影響するので、告訴状の作成は弁護士に一任しましょう。

  2. (2)管轄警察署に告訴の相談をする

    刑事告訴は事件を担当する管轄警察署に申し入れることをおすすめします。事件を担当するのは、原則として事件の発生地を管轄する警察署だからです。

    業務妨害に関する犯罪では、被害を受けた会社や店舗の所在地が事件の発生地になります。

  3. (3)告訴の受理

    刑事告訴の相談をしておおむね数週間から1か月以内に、警察から受理・不受理の連絡が届きます

    事前の捜査で告訴状に記載されている犯罪事実の存在が確認されれば、告訴状の原本を提出して正式な受理となります。

  4. (4)加害者の取り調べ

    刑事告訴が受理されると、正式に警察の捜査がはじまります。捜査が進展すると、加害者に任意出頭を求めるか、あるいは逮捕して取り調べが行われます。

    加害者の取り調べなど所定の捜査を終えた警察は、検察官へと事件を引き継ぎます。この手続きを『送致』といいますが、ニュースなどでは、『書類送検』と呼ぶのが一般的です。

    送致を受けた検察官は、自らも加害者を取り調べたうえで処罰するべきか否かを判断します。

  5. (5)刑事裁判

    「加害者を処罰するべき」と判断した検察官は、裁判所に刑事裁判を提起します。これが『起訴』と呼ばれる手続きです。

    原則として、起訴された加害者は『被告人』として法廷で審理され、数回の審理を経て有罪・無罪が言い渡されます。一方で、検察官が「処分は見送る」と判断すれば『不起訴』です。不起訴となった場合は刑事裁判が開かれないので、加害者の罪を問うことはできません。

    不起訴の中には、犯罪を行った疑いは十分にあるものの、検察官の裁量で不起訴とする「起訴猶予」という処分があります。加害者が起訴猶予で不起訴となる代表的な理由が『示談成立』です。加害者やその代理人が被害者との間で話し合いをして、加害者が示談金を支払ったことで被害者が「許す」という意思を示した場合は、検察官が不起訴とする可能性が高まります。

5、まとめ

インターネット上に会社・店舗の信用を失墜させる情報が書き込まれた場合は、犯罪として刑事告訴することが可能です。ただし、刑事告訴するには、犯罪が成立するのかの高度な判断や加害者の特定、説得力の高い告訴状の作成が必要となるケースがあります。個人での対応は難しいので、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。

ネットの書き込みで業務妨害の被害を受けてお困りなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。インターネット関連の刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、全力でサポートします。書き込みの削除や加害者への損害賠償請求もあわせて対応可能なので、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所へご一報ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2022年02月21日)の法律をもとに執筆しています

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