弁護士コラム

この記事の
監修者
荻原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 削除請求
    個人
    2022年04月28日更新
    ネットに残る逮捕歴を削除する方法はある? 具体的な手続や進め方

    ネットに残る逮捕歴を削除する方法はある? 具体的な手続や進め方

    テレビニュースや新聞では、毎日のように「逮捕」に関する情報が流れています。逮捕に関する報道は、国民の「知る権利」に応える意味で非常に重要ですが、逮捕された本人やその家族、周囲の人々にとっては「知られたくない」と感じるセンシティブな情報であることは否定できません。

    ましてや、すでに終結した事件に関する「逮捕歴」が公表されることは、罪を償い終えた、あるいは罰を受けることなく社会に復帰した人にとって重い足かせになってしまいます。

    インターネットが発達した現代では、検索エンジン、ネットニュース、個人ブログ又はSNSなど、様々なシーンで逮捕歴が公表されてしまう危険があります。逮捕歴が公表されてしまうと、日常生活にも重大な不利益を招く事態になるでしょう。

    本コラムでは、ネット上に残った逮捕歴を削除する方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、逮捕歴の削除を求める法的な根拠

ネット上には、様々な形態で「逮捕歴」が残ることがあります。
事件の発生当時の情報が残存しているケースがあれば、過去の事件を蒸し返す方法で情報が再掲載されるケース、個人攻撃のために公表されるケースなどが考えられるでしょう。

「逮捕歴」を法的な角度から見ると、公表されてしまった本人が削除を求めるには十分な根拠が存在している場合があります。

  1. (1)「逮捕歴」とは? 紛らわしい「前科」や「前歴」との違い

    「逮捕歴」とは、犯罪の容疑をかけられて警察などの捜査機関によって「逮捕」された経歴を指す言葉です。多くの方が誤解していますが、逮捕歴は「罪を犯した経歴」を指すものではありません。

    そもそも「逮捕」とは、犯罪の容疑をかけられた人について、逃亡や証拠隠滅を防ぎ、刑事手続のレールに乗せるために身柄を拘束するという強制処分のひとつです。逮捕された人のなかには、無実であるのに疑いをかけられてしまった人も存在します。

    また、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがないと判断され、逮捕されないまま在宅捜査として処理された人の数は、実は逮捕された人に比べて多いです。つまり、「逮捕歴がある」=「犯罪者」という考え方は間違い、といえるのです。

    逮捕歴と紛らわしい言葉に「前科」や「前歴」があります。

    「前科」とは、犯罪の容疑で刑事裁判にかけられた上で、有罪判決を経て、刑罰を受けた経歴を指すものです。刑務所で服役する懲役又は禁錮を指すと誤解している方も多数ですが、罰金又は科料といった金銭徴収を受ける刑罰も前科に含まれます。

    前科と同じように使われやすいのが「前歴」です。前歴とは、逮捕の有無に関係なく、警察などによって捜査の対象になったことがあるという経歴を意味します。最終的に刑罰を受けたかどうかは問わないので、例えば無実の疑いをかけられたが捜査の末に容疑が晴れたといったケースでも「前歴あり」となります。

    「前科」や「前歴」は捜査機関が厳重に管理している情報であり、外部に流出することはありません。しかし、「逮捕歴」は、事件に関する報道がベースとなって広く社会に公表されたものであるため、ネット上に残存したり、個人が興味本位で蒸し返したりすることも可能な情報となっています

  2. (2)逮捕歴の存在が招く不利益

    逮捕歴が公表されてしまうと、社会生活を送る上で様々な不利益を招くおそれがあります

    • 会社の同僚や周囲の住人から後ろ指をさされてしまう
    • 家族までもが犯罪者扱いをされて、子どもたちは学校などでいじめに遭ってしまう
    • 就職面接で逮捕歴を指摘されて落選してしまう
    • 婚約者やその家族に知られてしまい、婚約が破談となってしまう
    • 賃貸アパート又はマンションなどの契約審査で拒否されてしまう


    ただし、ネット上で公表されているかされていないにかかわらず、逮捕歴や過去に犯罪の容疑で捜査の対象になった経歴があると、別の事件を起こしてしまったときの刑事手続で不利になります。

    一定期間は微罪処分などの簡易処理が受けられず負担が重くなる、刑事裁判で裁判官の心証が悪くなり重い刑罰が科せられるといった不利益が生じることになるでしょう。

  3. (3)逮捕歴を公表する行為はプライバシー権の侵害に当たる

    警察などに逮捕された経験がある方にとって、その事実は「隠したい」「知られたくない」ものであるのは当然です。

    このような情報は「プライバシー権」によって保護される対象であり、むやみに他人の逮捕歴を公表する行為は「プライバシー権の侵害」に当たる場合があります。裁判所は逮捕歴について「公表されない法的利益」があると判断したケースもあります。

  4. (4)「忘れられる権利」にも注目が集まっている

    逮捕歴は、事件当時にニュースなどで広く公表された情報です。そのため、他人の逮捕歴を公表した当事者が「すでに多くの人が知っている情報だから、プライバシー権によっても保護されない」と主張することも考えられます。

    ここで注目されるのが「忘れられる権利」です。インターネットの急激な普及は、過去の逮捕歴でも誰もが簡単に調べることができるという新たな問題を招きました。我が国の法律では、まだ「忘れられる権利」がフォローされていません。他方、海外に目を向けるとすでにヨーロッパを中心として法整備が進んでおり、実際にGoogleなどの検索エンジンを使っても検索結果から除外されるなどの保護対策が講じられています。

    残念ながら、まだ日本の裁判所の姿勢は「忘れられる権利」に対して消極的ですしかし、明らかに個人の権利が勝る状況があれば、我が国においても積極的な判断が下される可能性もあると期待されています

2、逮捕歴が削除できるかの判断基準について

逮捕歴の削除を求める上で知っておくべきことは、個人の「消して欲しい」という感情だけで削除されることはない、ということです。

ここで挙げる様々な基準をもとに、裁判所が慎重な判断を下しています。

  1. (1)事件の内容

    事件内容が持つ、社会的な関心の度合いの高さは重要な判断材料となります。例えば、殺人事件と傷害事件では、同じような暴力行為でも殺人事件の方が注目されやすいのは確実です。

    重大な結果が発生した、多数の被害者が存在する、幼い子どもが被害を受けた、長期の逃亡を経て逮捕されたなどの事情があれば、社会的な関心が高く削除は難しくなるでしょう

  2. (2)事件からの時間の経過

    犯罪事件において「時間の経過」は極めて重要な要素です。

    事件を起こしても一定期間が過ぎれば刑事責任を問われないという「公訴時効」の制度が存在することからも、時間経過が重視されるのは明らかだといえます。すでに社会の関心が離れて長い時間が経った事件であれば、削除の可能性が高まるでしょう

  3. (3)事件の処分結果

    逮捕事件の中には、刑事裁判で厳しい刑罰が科せられたケースがあれば、無罪判決が下されたケース、検察官が起訴を見送って刑事裁判に発展していないケースもあります。

    厳しい処分を受けた事件では社会の関心が長く続く一方で、処分結果が軽い事件では社会的な制裁が長く続くことは好ましくありません。処分結果が軽い事件なら、削除されるべきという判断に傾く可能性が高まります

  4. (4)本人の日常生活への支障

    逮捕歴が公表されることで本人が被る日常生活への支障も重要です。

    むやみに逮捕歴が公表されたことで、本人が仕事を失った、家族と離散してしまった、住まいを確保できなくなったといった結果が生じている、あるいはその危険が高いといったケースでは、削除が認められる可能性が高まるでしょう。

3、ケース別の具体的な削除依頼方法

ネット上で逮捕歴が公表されてしまったと一言でいっても、公表される方法は様々です。削除を求める方法は削除してほしいサイトなどによって異なるので、ケース別の依頼方法を確認しておきましょう。

  1. (1)Googleなどの検索結果

    Googleなどの検索エンジンでは、個人の氏名や「○○市 逮捕」といったキーワードを入力するだけで関連する記事の候補が表示されます。このように、入力したキーワードに対して予測される文字が表示される「サジェスト」という機能があるため、逮捕歴を削除するためには検索エンジンへの対策が必須です。

    検索エンジンへの削除依頼は、個人情報の削除依頼やコンテンツの削除依頼といったフォームを利用します。検索事業者側が審査の上で「削除すべき」と判断した場合は、検索候補から除外されるように処理されます。

  2. (2)ニュースサイトの記事

    報道機関が運営しているニュースサイトは、逮捕事件を社会に発信する出発点です。逮捕歴の削除には、ニュースサイトへの対策が欠かせません。

    ニュースサイトに掲載された記事の削除を求める際は、運営者である各報道機関に問い合わせ用フォームや電話又はメールなどで申し入れることになります。

  3. (3)ニュースサイトの記事を転載したブログ

    大手のブログサイトでは、報道各社の記事を転載する方法で逮捕事件の記事が掲載されています。

    ブログサイトの管理者に対して問い合わせ用フォームやメールを通じて削除を依頼するのが基本ですが、サイトによってはプロバイダ責任制限法による「送信防止措置依頼」を求められることがあります。

    「送信防止措置依頼」とは、ネット上でプライバシー権侵害などの被害を受けた人が情報の削除を求める手続です。所定の依頼書を作成及び送付することで、受理したブログサイト側には削除の要否を検討する法的な義務が生じます。

  4. (4)5ちゃんねる(2ちゃんねる)などの掲示板サイト

    5ちゃんねるをはじめとした匿名掲示板サイトでは、逮捕歴が社会に公表されてしまう可能性があります。

    削除を申し入れる場合は、サイト内の専用フォームを利用するのが基本です。しかし、サイトによってはメールのみの受付という運用もあるので、各サイトのヘルプページなどから詳しく調べなければなりません。

    なお、5ちゃんねるについては、過去に受けた削除請求から、表現の自由に配慮したリーガルマインドを持つ弁護士からの請求については「原則対応する」と明示しています。このような運用が存在することから、個人での対応ではなく、5ちゃんねるの削除対応の経験がある弁護士に一任したほうがより確実に逮捕歴の削除を実現できるといえるでしょう。

  5. (5)TwitterなどのSNS

    TwitterなどのSNSは情報を拡散する力が極めて高いものです。そのため、ひとたび逮捕歴が公表されてしまうと多数のユーザーの間に広まってしまう危険があります。

    SNS上の逮捕歴を削除するには、まず投稿者に連絡を取って削除を依頼するのがもっとも素早い解決法となるでしょう。ただし、個人的な恨みや誤った正義感をもって逮捕歴を拡散しているユーザーであれば、素直に応じてくれる可能性は低い上に「本人が削除を求めてきた」と新たに投稿することで、収拾がつかない「炎上」を招くかもしれません。

    できるだけ安全な方法を考えるなら、各SNSで用意されている専用フォームや「通報」制度を活用し、管理者に対して削除を求めるべきです。SNS管理者の自主判断でも削除されない場合は「送信防止措置」が有効でしょう。

    逮捕歴を公表されてしまった本人がSNS管理者に対して送信防止措置を求めれば、SNS管理者が投稿者に対して「削除要請が出ている」旨を伝えます。7日以内に投稿者が反論しなければ投稿が削除される場合もあるため、任意の削除要請よりも格段に効果的です。

    ただし、一部のSNSでは、削除要請をした本人のアカウントや個人情報が逮捕歴を拡散している相手に明かされてしまうことがあります。不安がある場合は、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。

4、サイト管理者が削除に応じない場合は?

検索事業者やニュースサイト、ブログサイト、SNSなどのサイト管理者が逮捕歴を含む情報の削除に応じてくれなかったとしても、諦める必要はありません。

直ちにネットトラブルの解決に力を入れている弁護士に相談してサポートを求めましょう。

  1. (1)法的手段による解決を検討する

    逮捕歴の公表は重大なプライバシー権侵害に当たる行為です。しかし、多くの事業者は「表現の自由」を理由に不法状態の解消に消極的な姿勢を取っているのが現状であり、任意の削除が実現できる可能性は決して高くありません。

    任意の削除に応じてもらえない場合は、裁判所の「仮処分申立て」による削除に期待することになるでしょう

    仮処分とは、正式な裁判の判決確定を待っていると権利の実現が不可能になってしまうおそれがあるときに、暫定的に不法状態を解消する手続です。正式な裁判よりも迅速な処理が期待できるので、逮捕歴が公表されている状態を素早く解消できます。

    ただし、裁判所に仮処分を認めてもらうには、なぜ権利が守られるべきなのかを具体的に示す必要があります。個人での対応は難しいので、弁護士のサポートは欠かせません。

  2. (2)逮捕歴を拡散している加害者を特定する

    ネット上に逮捕歴が広まってしまう理由のひとつが「拡散」です。ニュース記事の引用、投稿の共有といった方法で、つながりを持つユーザー同士が交流することで逮捕歴が広く拡散してしまうのです。拡散を行った加害者には、損害賠償を求めることができるケースがあります。

    しかし、掲示板サイトやSNSでは、投稿者がハンドルネームやアカウントネームを名乗っているケースが多いため匿名性が高く、拡散の加害者を特定するのは容易ではありません。

    逮捕歴を拡散している匿名の加害者を特定するためには、裁判所の手続を利用した「発信者情報開示請求」が有効です。この手続を利用すれば、加害者の住所、氏名及び電話番号などが判明します

    発信者情報開示請求は、サイト管理者に対して投稿のIPアドレスなどの開示を求める手続き、加害者が契約しているインターネットプロバイダに対して契約者情報の開示を求める手続の二段構えです。

    しかも、サイト管理者がIPアドレスなどの情報を保管している期間は数か月と限りがあるため、素早い対応を要します。個人で対応していると裁判所の手続を待たずに重要な証拠が失われてしまう危険があります。損害賠償請求などを検討している場合は、削除対応の知見が豊富な弁護士に一任したほうが安全です。

  3. (3)加害者に対して損害賠償を請求する

    逮捕歴の公表は様々な不利益を招きます。失職、離婚、婚約の破談、引っ越し、家族に対するいじめなど、平穏な日常生活が破壊されてしまうケースも珍しくありません。

    逮捕歴の公表という重大なプライバシー権侵害によって生じた損害は、加害者に対して賠償を求めることが可能です。実際に生じた損害のほか、プライバシー権侵害を受けたという精神的苦痛を金銭に換えて賠償するよう求めることもできます。

    ただし、損害額の算定や加害者への請求、交渉、裁判による解決を図るためには、法律に関する深い知識や経験が必須です。プライバシー権侵害トラブルの解決実績が豊富な弁護士に相談して対応を任せましょう。

5、まとめ

「逮捕歴」とは、過去に犯罪の容疑をかけられて逮捕された経歴を指す言葉です。ネット上に逮捕歴が公表されてしまうと、すでに解決している事件でもまたたく間に拡散されてしまい、日常生活における様々な不利益を被ってしまう危険があります。

逮捕歴は極めて重要なプライバシー情報であり、むやみに公表することが許されるものではありません。ところが、Googleなどの検索事業者や各報道機関が運営するニュースサイト、ニュース記事を転載するブログサイトやSNS管理者は、国民の「知る権利」や「表現の自由」を理由に、任意の削除には応じてくれないのが実情です。

ネット上で逮捕歴が公表されてしまった場合は、法的手続による削除を図る必要があります。個人の対応だけでは解決が難しいので、直ちにネットトラブルの解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。弁護士、スタッフが一丸となってサポートします。

この記事の監修者
荻原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2022年04月28日)の法律をもとに執筆しています

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