弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • 削除請求
    個人
    2022年11月17日更新
    ネットの削除依頼にかかる値段は? 弁護士相談前にすべき準備も解説

    ネットの削除依頼にかかる値段は? 弁護士相談前にすべき準備も解説

    ネット上で自分の個人情報が晒されていた、誹謗中傷がなされているなど、プライバシー侵害や名誉毀損にあたる書き込みを見つけたとき、削除を求めることになります。

    削除依頼は、ご自身で行うこともできなくはないですが、裁判手続きをとらなければならない場合もあり、弁護士に依頼することが望ましいといえます。

    とはいえ、弁護士に頼めばどれぐらいの値段がかかるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、削除依頼の方法、削除依頼にかかる可能性がある弁護士費用の相場、弁護士相談前に行っておいたほうがよいことについて、弁護士が解説します。
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1、ネットの削除依頼はどこにすべき?

違法な書き込みを発見したときは、すぐにでも書き込みを削除し、拡散を回避したいと考えるかと思います。
まずは、ネットの書き込みの削除はどこに依頼すべきかについて、お伝えします。

  1. (1)当該の書き込みがあるサイトの運営か書き込んだ本人への依頼

    ご自身で書き込みの削除を行う場合の依頼先としては、①サイト管理者・運営元、②書き込んだ本人が挙げられます。まずはそれぞれの依頼方法と削除されるかどうか、メリットとデメリットについて知っておきましょう。

    ① サイト管理者・運営元
    サイト管理者・運営元とは、たとえば、TwitterであればTwitter社、5ちゃんねるであれば5ちゃんねるの管理人、ブログや掲示板であればそのサイトの管理人を意味します。

    管理者・運営元へは、お問い合わせフォームや削除依頼掲示板を通して連絡をとり、削除してほしい書き込みを具体的に伝えるだけです。すぐに削除に対応されれば、ご自身で対応するメリットは大きいといえるでしょう。

    ただし、実際に削除されるかどうかは、依頼のあった書き込みが、管理者・運営元の利用規約などで定められている違反・禁止事項に該当するかどうかによって判断されます。したがって、必ずしも依頼したとおり削除してもらえるとは限らないという点はデメリットになります。また、そもそも依頼する際に記述すべきルールが詳細に決められていることがあるので、適切に依頼できていなかったケースは少なくありません。さらに、相手方にだれが削除依頼をしたのかなどの個人情報がわたってしまうケースもあるため、詳細に確認してからアクションを起こしたほうがよいでしょう。

    なお、個人が開設しているサイトの場合には、お問い合わせフォームなどが用意されておらず、そもそも管理者・運営元と連絡がとれないという可能性があることも知っておくべきです。

    ② 書き込んだ本人
    続いて、書き込み主に直接連絡をとることができる場合には、SNSからDMを送ることやメールを送るなどの方法で書き込んだ本人に削除を依頼することも考えられます。

    最も手っ取り早い方法であり、穏便に削除されればメリットは大きいでしょう。しかし、相手によっては、送ったDMが晒されて拡散するおそれがある点はデメリットです。当事者同士でやり取りをすることによって、被害が広がってしまうというリスクがあることは覚えておいたほうがよいでしょう。また、適切な削除請求でない場合には、書き込み主から脅迫であるといわれ、加害者になってしまうおそれもあります。メリットとデメリットを慎重に検討したうえで実行に移す必要があります。
  2. (2)弁護士に削除依頼した場合にできること

    書き込み削除の依頼を受けた弁護士は、次のような方法をとることができます。

    ① 相手方との交渉
    個人で削除依頼をするときと同様、弁護士名義で各サイトの管理人などへ削除依頼を行います。このとき、法的根拠を示して依頼することになるため、個人からの問い合わせであれば削除を拒んでいた相手方も、素直に応じるケースは少なくありません。また、削除を依頼した方の個人情報が相手方に知られてしまう可能性も低くなるでしょう。

    ② テレサ書式を用いた削除依頼
    交渉による削除が難しい場合は、管理者・運営元やプロバイダに対して、「テレコムサービス協会ガイドライン書式(侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書)」を郵送するという方法をとります。

    これは、プロバイダ責任制限法に基づく制度ですので、お問い合わせフォームから削除を依頼するよりも効果が見込めますし、書き込み主に通知(意見照会)がなされることもありますので、仮に削除が実現しなくても、牽制して再発を防止する効果が期待できます。

    この書式は、弁護士でなければ作成できないものではありませんが、作成にあたっては困難な点もあり、正確に作成しなければ正しい効果を得られません。したがって、弁護士に依頼した方が望ましいといえます。

    弁護士であれば、書き込み主に削除を依頼する場合でも、弁護士名で内容証明郵便を作成し、違法な書き込みであることを警告したうえで削除を依頼するといった方法をとることもでき、当事者間でDMをやり取りするよりも実効性が高まるといえます。

    ③ 裁判手続きを通じた削除依頼
    テレサを用いて削除請求をしても対応されなかったときや、損害賠償請求を視野に入れているときは、法的手続きによって、強制的に削除する方法があります。

    具体的には、管理者・運営元を相手方とする書き込み削除の仮処分を申し立てて、削除を強制します。仮処分を申し立てれば、1か月程度で命令が出て、削除を実現できます。また、仮処分命令が出れば、これに従って削除されるケースがほとんどで、削除された記事が再び復活するということもほぼありません。

    違法な書き込みは、名誉毀損罪・侮辱罪・脅迫罪などに該当する可能性が、被害者が会社や企業などの場合には、威力業務妨害罪・偽計業務妨害罪・信用毀損罪などが成立する余地があります。これらの犯罪にあたる可能性のある書き込みについては、被害届の提出や告訴などの刑事上の手続きをとることを検討してください。
  3. (3)SEO業者への依頼は違法行為になる可能性がある

    SEO業者に依頼し、逆SEOなどの技術的な対応をとることを検討されている方も少なくないでしょう。

    逆SEOとは、意図的に、特定のウェブサイトの検索結果を下げることをいいます。ただし、逆SEOは、確実に実現できるものではありません。お金を払っても検索の上位表示から逃れられないケースや、一時は実際に上位に表示されなくなったように見えても、後日実名や企業名で検索すると上位に挙がってきてしまうこともあります。

    また、削除依頼対応、逆SEO対応、風評被害対策、誹謗中傷対策など名称はさまざまですが、いずれにしても「削除依頼を行う」と称する業者には注意してください。なぜなら、削除依頼は法的な行為にあたるため、正式に仕事として受任をして代行できるのは、弁護士に限られるためです。弁護士が所属していない業者が削除依頼を行うことは、弁護士法違反にあたる可能性がございます。

    弁護士に依頼するよりも安いからという理由で違法行為で営業する事業者に個人情報を渡してしまうと、後々思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性があることは否定できません。

2、状況別削除依頼にかかるお値段

削除依頼をほかの人に対応してもらいたいときは、弁護士に依頼する必要があります。理由は先に述べたとおりです。

では、具体的にいくらぐらい費用がかかるのかが気になることでしょう。あくまでも目安となりますが、本章で解説します。

  1. (1)1件の書き込みだけ削除したいとき

    削除の対象が1件だけの場合、法的手続きを伴わない任意の交渉によって削除が可能となるのであれば、「5.5万円(税込)~」という料金設定となっているケースが多いでしょう。

    もちろん、法律事務所によって料金体系は異なります。さらに、どの方法(管理者・運営元への連絡、本人への連絡、テレサ書式の送付)をとるのか、内容、難易度によっても金額は増減します。たとえば、相手が海外の人で日本語以外の交渉が必要な場合も、別途料金が発生するものです。正確な金額は担当の弁護士にお問い合わせください。

    他方、任意の交渉が難しいときは、削除仮処分を申し立てるなどの法的手続きをとる必要があります。この場合には、「22万円(税込)~」の着手金とほぼ同等の報酬金が必要となるケースが多いでしょう。このほかに、弁護士が裁判所に出廷するための日当や実費などがかかります。状況によってトータル5~100万円(税込)程度かかると考えておくとよいかもしれません。

    なお、1件とは削除したい書き込みひとつあたりの単位ですニュース記事やブログであれば大元となる記事1ページ分となりますし、5ちゃんねるはひとつの投稿、Twitterであれば1件のツイートを指します

  2. (2)5ちゃんねるなどでスレッドごと削除したいとき

    5ちゃんねるなどでスレッドごと削除したい場合には、URLの数はひとつですが、1件の書き込みを削除するよりも数が多くなります。したがって、スレッド内のすべての書き込みが違法であることを示す必要もありますので、費用は高くなる傾向にあります。

    相場としては20万円(税込)からとなることが一般的ですが、スレッド内の投稿(レス)の数・内容によっても大きく変動する可能性があるとお考えください。あらかじめ弁護士に確認しましょう。

    法的手続きをとる場合、着手金・報酬金・日当・実費などがかかり、金額が増加する可能性があるのは、先ほどと同じです。

  3. (3)異なるサイトに転載された書き込みが複数ある場合

    この場合は、書き込まれた投稿の数が複数あります。したがって、必要な費用は「5~20万円×削除したい投稿の数」となります。

    これまでと同じく、どの方法(管理者・運営元への連絡、本人への連絡、テレサ書式の送付)をとるのか、内容、難易度によって金額は増減します。さらに、法的手続きをとる場合には、着手金・報酬金・日当・実費などがかかり、金額が増加する可能性があります。

3、加害者を特定して損害賠償請求をする場合の相場

削除するだけでもそれなりのお金がかかります。そのうえ、事業の妨害を受けて仕事が減ったなどの実害が発生したのだから、損害賠償を請求して問題の原因を作った相手に支払わせたいとお考えになる方は少なくないでしょう。

削除依頼だけでなく、損害賠償請求を検討するときすべきことや弁護士に依頼した場合の相場について解説します。

  1. (1)加害者を特定する発信者情報開示請求が必要

    削除依頼や書き込み削除の仮処分によって、違法な書き込みを削除することはできます。しかし、書き込みの削除依頼をしただけでは、発生した損害の賠償が支払われるわけではありません。

    個人情報の晒しや誹謗中傷によってプライバシー権・人格権侵害や名誉毀損を受けているときや、事業にダメージを与えられたときには、削除依頼とは別に、損害賠償を請求する必要があります。

    相手の目星がついている、と思う方もいるでしょう。しかし、本当にその方が書き込んだとは限りません。そのため、実際の書き込みをベースに、書き込んだ方の身元を特定するというプロセスが発生するのです。

    具体的には、「発信者情報開示請求」や「発信者情報開示命令」の手続きを行い、書き込み主の身元を特定することができてはじめて、損害賠償を請求することが可能になります。もちろん、削除だけができればよいという場合であれば、これらの手続きは必要ありません。

    発信者情報開示請求とは、書き込み主が契約して利用しているプロバイダから、書き込み主の氏名・住所などの開示を受けることなどによって、書き込み主の身元を特定することをいいます。一般的には開示を受けるまでに、ログを消さないように申し立てる仮処分、書き込み主のIP開示を求める手続き、開示されたIPをもとにプロバイダに個人情報を開示するよう求める裁判の3回、裁判所で手続きを行う必要が出てくるでしょう。

    なぜ、ログを消さないように求める必要があるかといえば、一般的に書き込んだ方の情報は3か月程度で削除されてしまうためです。調査に必要な情報が消えてしまわないよう、表示された投稿は削除しても必要な情報は残しておくよう、サイト運営者やプロバイダに求める必要が出てきます。

    なお、令和4年10月1日以降であれば、プロバイダ責任制限法改正により新設された「発信者情報開示命令」という裁判手続きが利用可能となります。新設された方法は、裁判所での手続き自体は1回でよいのですが、必要書類などは従来の発信者情報開示請求の手続きとさほど変わりありません。弁護士に依頼したほうがスムーズに対応してもらえるはずです。

    なお、発信者情報開示請求から損害賠償請求までの流れは、次のとおりです。

    • ① 発信者情報開示請求か、発信者情報開示命令を用いて書き込んだ方の身元を特定し、問題の書き込みのログが削除されないように求める
    • ② 相手が特定できたら、まずは内容証明郵便などを用いて損害賠償請求を行う
    • ③ 任意の交渉で和解できないときは訴訟を起こす


    なお、損害賠償請求では、慰謝料のほかに、削除仮処分・発信者情報開示請求・損害賠償請求のためにかかった弁護士費用も請求することができます。

  2. (2)特定できてから行う損害賠償請求にかかる費用

    書き込み主が特定できた後、相手との交渉で損害賠償を請求する場合でも、法的手続きをとる場合でも、弁護士への依頼が有効です。

    まず、発信者情報を開示するためには、22万円(税込)からの着手金がかかります。ログを残しておいてもらうための仮処分の申し立てにも、別途同程度の着手金がかかるとお考えください。その後、ログの保存や発信者情報の開示に成功した場合は、別途成功報酬が請求されます。こちらについても弁護士に確認をしておきましょう。

    さらに、交渉で損害賠償を請求する場合の弁護士費用は、着手金11万円(税込)~で、報酬金は、回収できた金額に応じて決まります。任意による交渉に応じてもらえず、法的手続きをとる場合には、着手金22万円(税込)~が相場です。報酬金の決め方は実際に得られた利益から割合で算出されます。さらに別途、日当・実費などが必要になるでしょう。

4、弁護士相談をする前に行うべき準備と心構え

ネットの書き込みについて削除依頼する場合や、損害賠償請求を行うために弁護士に相談するとき、一般的には1時間あたり5000円~程度の相談料がかかります。しかし、最近は、ベリーベスト法律事務所のように初回相談料は60分まで無料の法律事務所も増えてきているため、まずは無料相談から検討するとよいでしょう。

ただし、相談する時間が延びれば伸びるほど料金がかかります。事前に必要な情報を準備しておくことで、効率よく相談してスムーズに対応を依頼することができるでしょう。本項では、弁護士相談を行う際に準備しておくとよいことについて解説します。

  1. (1)削除したい投稿を特定しておく

    まず、書き込みの削除を依頼する場合おいても、当該の書き込みがどこにあるのかがわからなければだれにも対処ができません。さらに、問題の書き込みが削除され、自分の手元にも何も証拠が残っていなければ、その後の裁判手続きで証拠を提出することができなくなってしまいます。

    そのため、まずは誹謗中傷などを行う書き込みの証拠を、収集・保全しておかなければなりません。裁判で提出するだけでなく、弁護士にご相談になる際にも、証拠があれば相談や対応がスムーズに進みます。弁護士相談の段階から、証拠をご持参いただければと思います。

    具体的には、以下の方法で証拠の保全を行います。

    • ① 問題のある書き込みのウェブページをプリントアウトする(URLすべてを表示させて保存)
    • ② アドレスバーにURLを表示させたうえで、プリントスクリーン・スマホでスクリーンショット(スクショ)を撮る


    この際、書き込みとURLとの対応関係がわかるように、両方を同じ画面内に保存しておくことがポイントです。

  2. (2)早期に依頼する

    まず大前提として、早期に問題の発言を削除してもらわなければ、場合によってはどんどん拡散されてしまいかねません。こうなってしまうと、たとえ削除依頼をしたところでモグラたたきのような状態になってしまい、いわゆるデジタルタトゥとしてネット上に常に情報が残ってしまう状態が起こりえます。

    また、損害賠償請求を検討しているのであれば、これまでお伝えしたように、相手を特定するためだけに複数の裁判手続きをとる必要があります。しかも、これら発信者情報の開示は、サイト運営者やプロバイダ側に通信のログが必要不可欠です。しかし、多くの場合、通信ログは3か月程度で削除されます。したがって、まずはログが残っていなければ行うことすら不可能になってしまうのです。

    そのため、追跡が不可能になってしまう前に、まずはログを保存するための仮処分を申し立てるケースがほとんどです。それでも、申し立てが遅くなれば保存してほしいログがすでに失われてしまっているという事態に陥ってしまいます。

5、まとめ

削除依頼の方法には、

  • ① サイト管理者・運営元への削除依頼
  • ② 書き込み主への直接の連絡
  • ③ テレサ書式の郵送
  • ④ 削除の仮処分


などがあります。書き込みによって損害が発生している場合には、損害賠償請求も可能ですが、そのためには、書き込み主の身元を特定するために、回の裁判手続きで発信者情報開示請求を行わなければなりません。

削除依頼はもちろん、損害賠償請求を行う場合には、専門的な知識はもちろんのこと、スピード、証拠保全など事前の適切な準備が必要となります。まずは弁護士への相談、そして早期のご依頼をおすすめします。ネット上で問題のある書き込みがなされたときには、速やかにベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
インターネット上の誹謗中傷や風評被害などのトラブル対応への知見が豊富な削除請求専門チームの弁護士が対応します。削除してもらえなかった投稿でも削除できる可能性が高まります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※記事は公開日時点(2022年11月17日)の法律をもとに執筆しています

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