開示請求・口コミ削除
誹謗中傷の削除請求から開示請求対応まで
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発信者情報開示請求とは、インターネット上で誹謗中傷や名誉毀損などの権利侵害を受けた被害者が、投稿者(発信者)の氏名や住所などの情報の開示を求める手続きです。
特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(通称:情報流通プラットフォーム対処法)は、匿名性の強いインターネット上の投稿による被害者に対して、損害賠償請求等のために加害者である発信者の身元の特定を可能とする手段を規定しています。
発信者の情報を得るための法的手段には、従来の、コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダに対して発信者情報の任意開示を求める方法、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダのそれぞれに訴訟または仮処分手続きを提起して発信者情報の開示を求める方法のほか、令和4年の法改正で創設された「発信者情報開示命令」を申し立てて、一回の手続きの中でコンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダのそれぞれに発信者情報の開示を求める方法があります。
発信者情報開示命令は従来よりも迅速に発信者を特定できる場合があり、どの方法によるべきかは事案によって異なります。
一般に、インターネット上の違法な書き込みにより名誉毀損や誹謗中傷を受けた場合、そのような記事やコメントを掲示板などのサイトに掲載した人(発信者)は、被害者に対して、民法上、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになります。誹謗中傷等の被害を受けた被害者は、加害者である発信者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。
書き込み内容によっては、発信者には名誉毀損(きそん)罪や威力業務妨害罪、偽計業務妨害罪等の犯罪が成立します。この場合、発信者は刑事上の責任を負うことにもなります。
以下でそれぞれの手続きについて説明します。
発信者情報開示請求訴訟または仮処分は、訴訟または仮処分を通じて発信者の情報を開示してもらうための手続きです。
裁判所での発信者情報開示請求の主な2つの方法のうち、旧来から利用されていた方法であり、サイト管理者への開示請求、ログ保存の手続き、接続プロバイダへの開示請求など、複数の裁判手続きを段階的に進めていく必要があります。
権利侵害投稿をした発信者の情報を開示するためには、以下の手続きをすることになります。
状況によっては、サイト管理者に対して裁判所を通じて発信者情報開示の仮処分申し立てをする
サイト管理者に対して開示を求める発信者情報のうち、接続プロバイダが保有するIPアドレスなどのアクセスログに関する情報は、時間の経過とともに次々と更新され、古いものは自動的に削除されていきます。
そのため、任意に開示されるのを待っていたり、訴訟を提起したりしていた場合、IPアドレスの開示を受けた時点で接続プロバイダ内のそのログの保存期間が過ぎていて、接続プロバイダが発信者情報を特定するために必要な情報がすでに存在しないという事態が起こり得ます。
このように、訴訟の判決を待っている間に時間切れとなり手遅れになるのを避けるため、裁判に勝訴したときと同様の措置を暫定的に行うよう、裁判所から命じてもらう手続きを、発信者情報開示仮処分といいます。
発信者を特定する手続きでは、発信者情報の開示を受けるための仮処分や、発信者特定に必要なログを保存するための仮処分が必要になることがあり、サイトによっては仮処分の申し立てが必須となる場合もあります。
仮処分の申し立てから決定までの一般的な流れは、記事削除の仮処分申し立てと共通する部分が多いため、詳しくは「削除の仮処分の流れ」をご覧ください。
情報流通プラットフォーム対処法5条の要件を整理すると、以下のようになります。
「特定電気通信」とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」と定義されており、インターネット上のウェブサイトで行う、誰もが閲覧可能な情報発信のことをいいます。
| 一対一のDM(ダイレクトメール)など 第三者が閲覧できない状況での誹謗中傷 |
発信者情報開示の対象にならない |
|---|---|
| SNSや口コミサイトなど不特定多数の 第三者が閲覧できる状況での誹謗中傷 |
発信者情報開示の対象になる |
発信者情報開示を請求する者のことで、自然人(個人)に限られず、法人、権利能力なき社団なども含まれるとされています。
一般に「権利侵害の明白性」と呼ばれる要件で、多くのケースで問題となります。この要件は、権利侵害の事実とそれに加えて違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことを意味します。
一般的な不法行為に基づく損害賠償請求では、違法性阻却事由について請求者側で主張立証する必要はありませんが、発信者情報開示請求では、情報を開示される発信者側のプライバシーや表現の自由が考慮されることによって、立証責任が転換される形で要件が加重されています。
この要件は、開示請求者が発信者情報を取得することの合理的な必要性があることを意味しており、情報を開示される発信者側が受ける不利益も考慮した上で開示請求を行うことが相当であるという意味も含んでいます。
正当な理由が認められるのは、以下のようなケースです。
つまり、損害賠償請求や刑事告訴などの正当な目的のために発信者を特定する必要がある場合には、「正当な理由」と認められることが多いといえます。
他方で、認められないケースとしては、私的制裁など不当な目的のために開示を受けようとする、すでに賠償金が支払い済みである、など上記法的手段をとる必要性がなくなっている場合などが挙げられます。
開示請求の相手方にあたるかの要件で、たとえば、サーバーを提供している者、電子掲示板を管理している者、インターネットサービスプロバイダなどが該当します。
なお、営利性は要求されないため、通信事業を営む事業者以外の、企業、大学、地方公共団体、趣味的に掲示板を開設管理している個人などもこれにあたることがあります。
総務省令で定められる情報は以下のとおりです。
法律上または事実上、自己の支配下に置いている状態を指します。すなわち、開示関係役務提供者が開示する権限を有していなければなりません。開示を行う権限があれば情報管理を第三者に委託していたとしても「保有」にあたります。
他方で、開示する権限が実行可能であることも必要と考えられており、情報抽出のために多大なコストを要する場合、体系的に保管されておらず、該当する開示対象の情報の存在の確認ができない場合は、「保有」にはあたらないとされています。
発信者情報の開示を請求してから実際に開示されるまでの手続きに時間がかかるという従前の課題を解決するため、情報流通プラットフォーム対処法の前身である旧プロバイダ責任制限法が改正された際に、新たに発信者情報開示命令という非訟手続きが設けられました。
従来の発信者情報開示請求訴訟または仮処分では、サイト管理者への開示請求、ログ保存の手続き、接続プロバイダへの開示請求など、複数の裁判手続きを別途に申し立てて行う必要がありました。それに対し、発信者情報開示命令では、1回の裁判手続きによって、以下のようなサイト管理者とプロバイダの双方に対する請求をまとめて行うことができるようになっています。
(この審理を行っている間に、ログを保存するため、②を発令)
発信者情報開示命令は、従前の発信者情報開示請求と比較して、より少ないプロセスで発信者の特定が可能です。また、海外の事業者に対する発信者情報開示についても、手続きが簡易なものとなるとともに、これまで訴状の送達にかかっていた時間も短縮できるようになりました。
現在では、発信者情報開示命令が利用されるケースも増えていますが、事案によっては従来の発信者情報開示仮処分を選択した方が適切な場合もあります。
発信者情報開示請求は、必ずしも裁判手続きによらなくても可能です。
この請求は、裁判所の判決等によらずにサイト管理者等が任意で発信者情報を開示するよう求めるものであるため、一般に「任意開示」などと呼ばれます。そして、この任意開示の請求でも、裁判上の請求でも、発信者を特定するために必要な情報や請求の相手方は同じです。
しかしながら、任意開示の現状としては、サイト管理者や接続プロバイダ等が任意に開示に応じるケースは、残念ながら多くはないのが現状です。
プロバイダが任意の開示請求に消極的な理由としては、要件判断の難しさにあります。
たとえば、権利侵害の明白性の要件について、個別の投稿が請求者の権利を侵害するかの判断は微妙な場面もあり、仮に裁判所が権利侵害の明白性を充足しないと判断し得る投稿について、プロバイダが当該要件を充足すると判断して開示をしてしまった場合、法律上の要件を充足しないのに発信者情報を開示したということになり、通信の秘密侵害罪(電気通信事業法179条)に該当してしまう場合があるほか、発信者からの責任追及を受けることもあり得ます。
プロバイダが、本来は充足しない要件について充足すると判断したことにつき、その判断の誤りが起こるに至る正当な理由があったときは違法性が阻却される(プロバイダ側の罪にならない)との見解もありますが、プロバイダとしては、安全のため、裁判所の判断に基づく場合以外には開示には応じない、という考え方に基づいているものと考えられます。
また、大手の接続プロバイダなどは、任意開示の請求に対しては、「同種の請求がたくさん来ているので、まずは警察からの照会が先」、「調査に3か月くらいかかる」、「ログの調査ができたとしても、発信者が開示を拒否すれば任意の開示はできないと思う」などの返答をするケースも多くあります。
任意開示を求める方法として、弁護士法23条の2に基づく照会(いわゆる弁護士会照会)や証拠保全等による方法もありますが、これらには強制力はなく、接続プロバイダ等が開示に応じる例は多くはありません。そこで、裁判上の請求手続きを利用することが一般的となっているのが実情です。
法律は改正されましたが、これまでの発信者情報開示手続き(法的手続き・任意開示手続き)も従来どおり利用することができます。
従来の発信者情報開示請求訴訟または仮処分には、複数の裁判手続きが必要になるというデメリットがあり、その点では発信者情報開示命令の手続きの方が便利といえます。他方、裁判所の開示の判断に対し、サイト管理者がなかなか応じないということも増えてきており、そのような場合に、サイト管理者等に対して、「開示しないのであれば開示するまでの間、1日当たり●●円支払え」という形で強制的に開示を求める間接強制という方法をとることが可能です。
こちらは、仮処分決定に基づいてであればすぐ申し立てられるのに対し、開示命令の場合には決定の告知がサイト管理者等になされてから1か月を経過しなければ申し立てられないなど、仮処分による方が開示を早く受けられる場合もあります。
そのため、日々変わっていくサイト管理者や接続プロバイダの対応の動向を察知し、最新の動向を踏まえて適切な手続き選択をしなければなりません。また、そもそも、裁判手続きではなく任意開示手続きをとる方が望ましい場合や、削除請求を行うだけで足りる場合もあり得るといえるでしょう。
被害状況やご希望を踏まえて適切な手続きを選択することが、権利侵害投稿に対する適正な解決のために重要です。インターネットのトラブルに遭遇した場合には、経験・実績豊富な弁護士に相談することをおすすめします。