削除依頼・投稿者の特定
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削除依頼・投稿者の特定に関する
用語集
読み方 かりしょぶん
仮処分とは、権利を保護するため、権利を主張する側に暫定的に一定の権能や地位を認めるために行われる民事保全手続きの一種です。ネット上の誹謗中傷を受けたときだけでなく、民事訴訟を行うときにも用いられています。
多くの民事訴訟では、訴訟の提起から勝訴判決を得て強制執行ができるようになるまでには相当な期間を要することになります。しかし、その間に財産を処分されてしまったり、発信者情報の開示手続きであれば情報の保存期間の経過などによって目的が達成することができなくなってしまったりすると、勝訴判決が無意味になってしまう可能性があることは否定できません。
そこで、相手の財産を一時的に処分できないようにしたり、権利を主張する側が求める権利関係を暫定的に定めておく必要があります。その手続きが民事保全手続きです。
民事保全手続きは、大きく分けて「仮差押え」と「仮処分」の2つの手続きがあります。さらに、仮処分は、「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」に分けられます。
<仮差押え>
貸金のような金銭債権を保全することを目的として債務者の財産を処分することを禁止する手続き
<仮処分>
●係争物に関する仮処分
不動産の登記請求権や明け渡し請求権などのように、特定物に関する給付請求権の保全を目的とした手続き
●仮の地位を定める仮処分
権利関係の確定の遅延により生ずる著しい損害または急迫の危険を避けるために暫定的な措置を定めるための手続き
インターネット上の掲示板、SNS、ブログに誹謗中傷の投稿によって権利を侵害された被害者の方は、当該投稿の削除や当該投稿をした人物を特定して損害賠償請求を行えます。
サイト管理者やプロバイダなどに対して投稿の削除を求めたり、投稿者の個人を特定したりするために発信者情報開示の手続きを行うのですが、任意で応じてくれない場合があるのです。その場合には、裁判手続きを通じて、削除や情報開示を求めることになります。
しかし、裁判手続きでは勝訴判決を得るまでに一定の時間を要するケースが一般的です。その間、問題となった投稿が削除できないとなると権利侵害継続することになりますし、ログの保存期間が経過してしまうことによって発信者の特定に至ることができない可能性があります。
そのため、削除請求および発信者情報開示請求の場面では、「仮の地位を定める仮処分」が利用されます。具体的には、仮処分によって、暫定的に投稿を削除してもらってから双方の主張を争ったり、ログを保存して発信者情報が削除されないようにしてから、改めてプロバイダに発信者情報を求めたりします。
Web上で起きた誹謗中傷などのトラブル解決のため、仮処分の手続きを利用する方法は以下の通りです。
仮処分の申立てをするには、仮処分の申立書を裁判所に提出する方法で行います。仮処分の申立書には、被保全権利と保全の必要性を主張し、疎明する必要があります。
具体的には、削除請求であれば、インターネット上の情報は世界中のどこからでも容易に投稿記事を閲覧することができ、その状態が継続すれば申立人の名誉権などの権利が侵害され続けることを主張します。他方、発信者情報開示請求では、アクセスプロバイダに対する発信者開示請求を予定しており、一定期間が経過するとログが削除されてしまうため、コンテンツプロバイダから早急に情報を開示してもらう必要がある、あるいは、アクセスプロバイダにログを保存してもらう必要があるということを主張することになるでしょう。
仮処分の申し立てをすると、裁判所において裁判官と面談が行われます。これを「審尋(しんじん)」といいます。
仮処分命令が出されると債務者の権利が制約されることになりますので、一方的な主張は認められません。相手方の手続き保障のために債権者だけでなく債務者も同席した上で審尋が行われます。
仮処分手続きは、本案前の仮の処分ですので、民事裁判で争うときのように時間をかけて審理が行われるわけではありません。そのため、仮処分で認められた権利が本案で存在しないとなった場合には、仮処分によって権利を制約された債務者は、一定の損害を被ることになります。
そのため、仮処分命令を出すにあたっては、将来の債務者の損害を担保するために、債権者に対して担保金の納付が求められることになります。具体的には、削除請求であれば、削除を求める記事の数など事案によって異なりますが、30万円程度、発信者情報開示請求であれば1件10万円程度の担保金が必要となるケースが多いでしょう。
裁判官が仮処分の申立てに関して被保全権利と保全の必要性を満たすと判断した場合には、仮処分命令が発令されます。
申し立てから発令されるまでには1か月から2か月程度かかるケースが一般的です。
仮処分の申立てを認容または却下する決定については、債権者および債務者に対して送達がなされます。
仮処分命令が発令された場合には、その決定に従って、任意に削除請求や発信者情報開示請求に応じてくれるでしょう。もし、仮処分命令発令後も任意に応じてくれない場合には、仮処分命令を債務名義として間接強制を行うことになります。したがって、削除を希望していた場合は、実際の裁判を行わなくても該当の記事を削除してもらうという目的を果たせるというメリットがあります。